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愛知県企業庁

広域送水監視制御システムの再構築により、水道用水供給にかかわる安全性と安定性を強化。

愛知県全54市町村、約740万人のうち、名古屋市や三河山間部などを除く49市町村、およそ500万人へ水道用水を供給する愛知県水道用水供給事業。水道用水供給事業とは、市町村などが行っている各家庭に給水する水道事業へ水道用水を供給する、いわば水道用水の卸売りを行う事業です。本事業を運営する愛知県企業庁では、県内に点在する水道施設の情報を収集し、その一元管理と遠隔操作を行うための広域送水監視制御システムのリプレースを実施。広域光ネットワークの活用による通信高速化の実現などをベースに、水道用水供給のさらなる安全性、安定性の向上といった成果を上げています。

工場・プラント分野 上・下水道 安全・安心 運転監視・制御システム&ソフトウェア

導入製品・サービス

広域送水監視制御システム

老朽化により部品調達が困難に。システムのリプレースを決断

「日本一のものづくり県」として知られる愛知県。その産業活動や人々の暮らしを支える愛知県水道用水供給事業は、1962年に愛知用水沿いの13市町で水道用水の供給が始まりました。50周年を迎えた今日では、県内38市町4企業団など計42団体の水道事業者を介して、およそ500万人を対象に1日平均で約120万トンを供給しています。

愛知県企業庁では、2005年10月ごろから、1992年以来運用されてきた送水管理システムの更新に向けた検討を始めました。今回リプレースした新システムは、県内に点在する浄水場やポンプ場、調整池※1、供給点※2などの水道施設、計107カ所の情報を収集し、その一元管理をセンター局となる尾張東部浄水場にて行い、送水管理情報の監視、閲覧、映像監視、水道料金に関する検針業務や調整池・ポンプ場などの遠方操作を各拠点から行えるようにするものです。新システムへの更新を目指した要因はシステムの老朽化です。既存システムは運用開始後13年を経ていたことから、保守や修理に必要な部品の調達が困難になってきていました。

重要データを扱うシステムの移行には細心の注意を払う

愛知県企業庁では、新システムへの更新に向けた検討会を設置。尾張、愛知用水、西三河、東三河といった県内各地域を管轄する水道事務所の担当者も参加し、綿密な検討を行いました。その結果、新システムでは、既存システムの基本的な機能を継承しながら、大きく2つの項目について刷新を目指すこととなりました。1つは、既存システムのように専用の機器、ソフトウェアによってシステムを構築するのではなく、汎用製品を採用するというものです。このことにより、既存システムで課題となっている部品調達の不安を将来的にも取り除くことができます。また、汎用製品の利用は、浄水場などの拠点で独自に運用されている制御システムとの間で、標準的なインタフェースを介して、より円滑な連携を実現していけるという期待もありました。

システム更新のもう1つのポイントとなったのは、各拠点で収集している水量・水圧・水質などの管理データをシステムへ送るための通信インフラの見直しです。既存システムで採用されていた無線通信を有線の光通信に切り替えるというものでした。既存の無線通信ではデータ収集などの作業に時間がかかるほか、データの受信中は遠隔操作機能が使えないといった制約がありました。そこで、リアルタイムに情報の収集・閲覧や必要な操作を行うには、通信の高速化が必要だったのです。

以上のような要件を掲げ、愛知県企業庁ではシステムの構築に当たるベンダーを公募。2009年1月に実施された一般競争入札の結果、アズビル株式会社がこの案件を受託することになりました。同年6月に現場工事が開始されましたが、その際、特に細心の注意と工夫を要したのが既存システムから新システムへの移行でした。

システム移行については、どこかのタイミングで全拠点から送られてくるデータを、一気に既存システムから新システムに切り替えるというのが理想です。しかし、システムで収集する1日の集計データが、お客さまである受水市町の料金支払いのベースとなるほか、水量や水圧、水質といった情報が浄水場の運転にも影響するなど、このシステムが扱うデータが非常に重要なものであるため、リスク回避の観点から、段階的に移行するという手法を取ることにしました。

具体的には、既存システムでの運用を続けながら新システムの設備を各拠点で構築。まずは、稼働中の既存システムと、新しく構築したシステムの双方で設備からの情報を受け取る形とし、新システムで得られた情報が既存システムと整合が取れていることを確認した後、既存システムの設備を撤去していくという作業を各水道事務所の管轄単位ごとに順次実施していきました。

尾張東部浄水場に設置された広域送水監視制御システムのセンター局サーバー。各地に分散している浄水場や調整池、供給点などで計測した水量、水圧、水質などの情報を収集し、管理を行う。

尾張東部浄水場に設置された広域送水監視制御システムのセンター局サーバー。各地に分散している浄水場や調整池、供給点などで計測した水量、水圧、水質などの情報を収集し、管理を行う。

調整池に設置されたITVカメラ。不審者の侵入や災害時の施設内の状況を逐次確認できる。

調整池に設置されたITVカメラ。不審者の侵入や災害時の施設内の状況を逐次確認できる。

システムのレスポンス向上で、さらなる安全性を確保

本庁と県内に点在する水道事務所や浄水場に設置された監視操作端末。リアルタイムで送水管理情報の監視、閲覧、映像監視を行い、状況に応じて操作も行える。同時に水道料金の検針業務も実施。

本庁と県内に点在する水道事務所や浄水場に設置された監視操作端末。リアルタイムで送水管理情報の監視、閲覧、映像監視を行い、状況に応じて操作も行える。同時に水道料金の検針業務も実施。

こうした過程を経て、2011年3月にはすべての工事を完了。新たな広域送水監視制御システムが全面稼働を開始しています。新システムでは、汎用製品の組合せでありながら、あくまでも旧システムの使い勝手を踏襲することが目指されています。そこで、画面やシステムで出力する帳票のイメージについては、ニーズに応じて柔軟にカスタマイズできるような機能も装備しました。今後は、そうした機能も積極的に使いこなしていきたいと考えています。

また、通信に光回線を使った広域ネットワークを採用したことも大きな成果をもたらしています。これまでデータや操作のリクエストをしてから5分程度を要していたレスポンスも、今では1~3秒程度で返ってくるようになりました。遠隔操作もリアルタイムに実施できるようになり、水道用水供給のさらなる安全性確保につながっています。

さらに今回の更新と併せて、テロや防犯の対策として調整池にカメラを設置し、監視を開始しました。その映像をネットワークを介して配信し、庁内や各拠点の監視操作端末で常時確認できるようになったことも、高速の広域ネットワーク採用によって得られた大きなメリットです。

今回、再構築された広域送水監視制御システムは、今後長きにわたり愛知県企業庁が行う水道用水供給を支えていくことになります。人々の生活の源泉ともいえる水道では、24時間365日、供給が滞るといったことは許されません。アズビルに対しては引き続き、ライフラインを担うシステムの運用を、保守サポートの局面からしっかりと支えてもらうことが期待されています。

用語解説

※1 調整池

管路の途中に設置された貯水タンク。なお、災害時用に整備した調整池は特に広域調整池と呼んでいる。

※2 供給点

県営水道と受水市町との水道水の受け渡し地点。

お客さま紹介

愛知県企業庁水道部 水道事業課 主幹(水道) 吉野 健氏
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愛知県企業庁 水道部 水道事業課 課長補佐 (業務・送水グループ) 長谷川 勝正氏
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(業務・送水グループ)
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愛知県企業庁 水道部 水道事業課 (業務・送水グループ) 主査 黒宮 正守氏
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愛知県企業庁 尾張西部浄水場 主査 坂野 宏氏
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  • 所在地/愛知県名古屋市中区三の丸3-1-2

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2012年05月号に掲載されたものです。

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