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京和ガス株式会社

大規模地震に備えた遠隔一括遮断の仕組みを構築
安全・安心なガス供給体制が大きく前進

京和ガスでは大規模震災の発生に備え、供給エリア内のガス供給において、本社側から各地区に設置された地区ガバナを遠隔操作し、ガスの供給を停止する仕組みを実現しました。平常時の機器状態・流量のモニタリングと併せて、災害発生時の遠隔遮断で利用する商用電話回線については、有事の際に想定される回線の混雑による不通を回避し、セキュリティの確保を行うシステムを構築。ガス供給にかかわる安全・安心を担保し、お客さまに「信頼」という価値を提供しています。

工場・プラント分野 電力・ガス 安全・安心 スイッチ/センサ

ガス供給に関する安全・安心の強化には“プラスアルファ”の施策が必要

1972年に千葉県流山市において設立された京和ガス株式会社は、千葉県北西部を中心とした地域に都市ガスを供給する京葉ガスグループの会社です。同社は京葉ガス株式会社からガスの供給を受け、流山市のほぼ全域、および柏市の北側一部エリアの計約5万戸に都市ガスを供給し、地域の人々の快適な暮らしや産業活動を支えています。2005年のつくばエクスプレス開通以降は、同社の供給エリア内が都心と短時間で結ばれることになり、大規模な住宅開発が進められ、人口が急増。京和ガスの顧客戸数も年率約5%という勢いで増加を続けています。

2017年4月には、ガスの小売り全面自由化がスタート。京和ガスでは2016年の初めごろから、新規参入組も含めたガス事業者間の競争激化を見据え、ビジネス上の差別化をいかに図っていくかという課題についての検討を進めてきました。

「差別化ポイントの一つとして掲げたのが、東日本大震災を契機に要請が高まっていた、ガス供給にかかわる安全・安心といった側面での取組みです。競合他社にはない『信頼』という独自の価値の提供を目指しました」(石上氏)

「当社では、ガス供給設備に関する定期保安検査の実施や、ガス漏れなどの緊急時に備えた24時間の保安体制の整備に加え、導管の耐震化なども東日本大震災以前から積極的に進めていました。ただ、さらなる安全・安心を推し進めるには、プラスアルファの施策が必要でした」(中村氏)

平常時の地区ガバナ監視に加え、同一システムで遠隔遮断も実現

地区ガバナに設置されたFOMA対応遠隔データコレクタ DCX350と遮断制御ユニットSES51Z。

地区ガバナに設置されたFOMA対応遠隔データコレクタ DCX350と遮断制御ユニットSES51Z。

そこで、大規模地震など有事の際に、本社側からの指令で供給エリア内32カ所に設置された地区ガバナ*1のガス供給を停止させる遠隔遮断システムの構築に着手しました。複数のベンダーの提案について比較検討を行った結果、同社がパートナーに選定したのがazbilグループとして提案を行っていたアズビル株式会社とアズビル金門株式会社でした。

「長年にわたりガス関連機器を供給し、常に身近で対応してくれていたアズビル金門と、計装システムで大手ガス事業者にも実績のあるアズビルが組み、納得のいく提案でした。さらに、こちらが知りたい具体的な仕様に対して、常に的確な説明を行ってくれました」(石上氏)

「既存の地区ガバナ遠隔監視の仕組みも、12~13年前にアズビル金門(当時:株式会社金門製作所)が構築したものでした。同社なら、既存設備を有効利用しつつ、短期間かつ低コストで新しい遠隔監視/遮断システムへの移行が期待できると考えたのです」(中村氏)

京和ガスがazbilグループの採用を決めたのが2016年6月。その後、同年10月には本社側の遠隔監視/遮断システムを構築。続いて、32カ所の地区ガバナに対して遠隔監視/遮断システムへの切替え工事を実施していきました。既設で運用していたアズビルのインテリジェント地震センサ SES60やガス検知器などから情報を収集し、無線で本社のセンターに送信するFOMA対応遠隔データコレクタ DCX350を各ガバナへ新たに設置。さらに、遮断制御ユニットSES51Zを導入することで、平常時のガバナ運用状況、ガス流量などのモニタリングに加え、地震発生の緊急時にはセンターからの指令によりガス供給を停止することができるようになりました。約3カ月間という短期間ですべての地区ガバナが新システムの下で運用を開始。実際にセンターからメイン系統ではないサブ側のガバナへ一括遮断指令を出し、すべてのガバナが遮断したことを確認する試験を経て、12月末に新システムが本格稼働を開始しました。

本社に設置された遠隔監視/遮断システム。画面上には32カ所の地区ガバナと6カ所の地震センサの状態に加え、ガス圧力、ガス漏れ発生の有無などが併せて表示される(左)。また、執務室内には大型ディスプレイも設置されており、有事の際には、大型ディスプレイに表示される情報と併せて、あらかじめ用意されているホワイトボードで刻々と変わる状況を記録し、災害および保安点検状況を社員が共有できる形となっている(右)。

本社に設置された遠隔監視/遮断システム。画面上には32カ所の地区ガバナと6カ所の地震センサの状態に加え、ガス圧力、ガス漏れ発生の有無などが併せて表示される(左)。また、執務室内には大型ディスプレイも設置されており、有事の際には、大型ディスプレイに表示される情報と併せて、あらかじめ用意されているホワイトボードで刻々と変わる状況を記録し、災害および保安点検状況を社員が共有できる形となっている(右)。

セキュリティを確保した商用回線を利用、災害時における無線通信の混雑を回避

緊急遮断弁SSVは二重化システムとなっており、通常はメイン側が作動しているが、故障時などはサブ側がバックアップを行う。銀色の筒状の機器は負圧ユニット。緊急遮断弁SSVと組み合わせることにより外部電気信号による遮断が可能となる。

緊急遮断弁SSVは二重化システムとなっており、通常はメイン側が作動しているが、故障時などはサブ側がバックアップを行う。銀色の筒状の機器は負圧ユニット。緊急遮断弁SSVと組み合わせることにより外部電気信号による遮断が可能となる。

こうした施策により、大地震などの災害が発生した場合も、本社側の遠隔監視/遮断システムの操作で速やかにガス供給を停止する仕組みを整えることができました。防災無線ではなく、商用電話回線を安全に使うためにアズビルの遮断制御ユニットがセンターとの間で通信の信頼性を確認してから通信を開始します。これにより商用回線を防災用に使うことが可能となり、セキュリティを確保した遠隔監視/遮断システムを実現しています。さらに大規模地震が発生した際には震災モードという状態に移行し、地区ガバナとセンター間の通信を確保。災害時に発生が懸念される通信回線の混雑を回避します。震災モードは、6カ所に設置された地震センサのうち、2カ所の地震センサで所定のSI値*2を超える揺れを検知した場合に作動します。センターでは地震の被害規模などを精査して、万一、ガス供給の停止が必要だという判断に至れば、各ガバナに対して遮断指令を出します。

「想定外でしたが、本格稼働前に少し大きな地震が発生しました。地震センサが検知した揺れが基準値を超え、震災モードに実際に移行したこと、そしてその動作状況も確認することができました」(染谷氏)

京和ガスが、大手ガス事業者が導入している遠隔遮断システムと同等のものを導入するという先進的な取組みを行ったとして、大きな注目を集めています。

「私たちの規模のガス会社でも大手ガス事業者並みの取組みができたということは非常に画期的です。これからさらに安全・安心の取組みや利便性について、お客さまからも要請が強まるでしょう。これからもazbilグループには、機器やシステムの提供にとどまらず、我々がその機能を最大限に使いこなすための教育や技術支援なども含め、大いに期待しています」(石上氏)

※ SESは、アズビル株式会社の商標です。
※ 「FOMA」は、株式会社NTTドコモの日本または他の国における登録商標または商標です。

用語解説

※1 地区ガバナ

ガスの消費量の増減に合わせてガスの圧力を自動的にコントロールする機能を持つガバナ(整圧器)により、工場から高い圧力で送出された都市ガスを安全な圧力に変換して需要家に供給するための設備。

※2 SI(Spectral Intensity)値

米国のハウスナー(G. W. Housner)によって提唱され、地震によって一般的な建物にどの程度の被害が生じるかを数値化したもの。

お客さま紹介

京和ガス株式会社 常務取締役 石上 隆 氏
京和ガス株式会社
常務取締役
石上 隆 氏
京和ガス株式会社 供給部 保安グループ マネージャー 中村 明愉(あきよし)
京和ガス株式会社
供給部
保安グループ
マネージャー
中村 明愉(あきよし) 氏
京和ガス株式会社 供給部 保安グループ 係長 染谷 祥之 氏
京和ガス株式会社
供給部
保安グループ
係長
染谷 祥之 氏

京和ガス株式会社

京和ガス株式会社

  • 所在地/千葉県流山市江戸川台東1-254
  • 設立/1972年2月1日
  • 事業内容/都市ガス・LPガスの供給、ガス工事の設計・施工、ガス機器の販売などにかかわる事業、太陽光発電事業

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2017 Vol.3(2017年06月発行)に掲載されたものです。

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