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シーサイドホテル屋久島

ホテルの空調・給湯設備の全面リニューアルで
島の「自然と人間の共生」を支える省エネ施策を推進

屋久島を代表するリゾートホテル「シーサイドホテル屋久島」では、空調・給湯設備の老朽化対策を契機に、環境省の補助事業を利用した省エネ施策を実施しました。島の電力の99.8%を水力発電で賄う屋久島。そうした自然エネルギーを活用し、重油から電気へのエネルギー転換、高効率機器の導入、自動制御の適用を核とした取組みは、環境保全と大幅なCO2削減を推進する屋久島のモデルケースとなっています。

建物分野 ホテル 快適 省エネルギー 稼働改善 老朽化対策 中央監視システム

導入製品・サービス

建物管理システム savic-net FX mini

建物管理システム savic-net FX mini

島を挙げて環境保全CO2削減を推進

屋久島は、鹿児島県の大隅半島佐多岬南南西約60kmの海上に位置します。樹齢7200年といわれる縄文杉など豊かな自然を有し、1993年に日本初の世界自然遺産に登録されたことでも知られます。

「屋久島町では、世界自然遺産という人類共通の財産を保護・保全し、後世に引き継ぐ取組みを続けています。それが、1996年以来推進してきた『自然と人間の共生』を目指したゼロエミッション*1事業です。加えて、2009年からは『屋久島CO2フリーの島づくりに関する協議会』を発足させ、電気自動車の導入や太陽熱温水器の設置補助など、CO2削減に向けた取組みにも注力してきました」(荒木氏)

シーサイドホテル屋久島は、屋久島空港や海の玄関口である宮之浦港に近く、海岸線の絶景を望む、屋久島を代表するリゾートホテルです。本館、新館と合わせて客室は80室、月平均3,000人以上の宿泊客が訪れるなど、年間を通じて多くの人でにぎわっています。

「当ホテルでも、お客さまのチェックイン前/チェックアウト後の客室の照明や空調を止めるように指導するなど、節電・節水を励行してきました。しかし、人手による対応では、得られる効果にも限界があり、設備面での抜本的な施策の実施が求められていました」(後藤氏)

「特に、ホテルの運営において最もエネルギーを消費する空調・給湯設備は旧型で、非常に効率が悪くなっていました。しかも、燃料は重油を主体としていたため、省エネルギー、およびエネルギーコストの観点でも大きな課題を抱えていました」(江口氏)

高効率機器の導入と制御の適用でエネルギー消費の最適化を図る

今回導入した高効率ボイラ(右)と旧来の重油焚きボイラ(左)。重油焚きボイラは、ヒートポンプ給湯器が故障したり、お湯の要求量が能力を超えた場合の追従運転用となっている。

今回導入した高効率ボイラ(右)と旧来の重油焚きボイラ(左)。重油焚きボイラは、ヒートポンプ給湯器が故障したり、お湯の要求量が能力を超えた場合の追従運転用となっている。

2014年初めごろ、同ホテルは空調・給湯設備のリニューアルについて検討を開始しました。以前から設備関連で付き合いのあったリース会社に相談したところ、環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(離島の再エネ・減エネ加速化事業)*2」施策実施事業者の公募が行われていることを紹介されました。

当該補助事業の利用を前提に、空調・給湯設備のリニューアルおよび省エネ施策の実施を決断。リース会社から紹介されたアズビル株式会社の支援を受けながら、離島の再エネ・減エネ加速化事業の要件を満たすべく、施策メニューの検討を進めていきました。

「アズビルは、建物管理にかかわる設備やシステムの提供、エンジニアリングの会社として知名度も高く、特に省エネルギーの取組みでは大きな成果を上げており、支援してもらうことに大きな安心感がありました」(江口氏)

2014年8月、シーサイドホテル屋久島の施策は、離島の再エネ・減エネ加速化事業の対象事業として採択されました。同年9月から工事に着手。宿泊客がいない時間帯を中心に新設備への移行を段取りよく進め、翌2015年2月にはすべての工事を完了しました。

具体的な省エネ施策としては、これまで別々の系統に供給していた3台の重油焚(だ)きボイラのうち2台を撤去。高効率ボイラ、ヒートポンプ給湯器、ヒートポンプ温水器を設置し、一つのベストミックス熱源を構築しました。高効率な電気式をメインで稼働させながら、急激な負荷増大には重油焚きボイラで負荷追従するシステムを自動制御により実現。併せて、高効率ヒートポンプチラーを導入し、空調の温水や冷水を効率的に作るとともに、各客室側にもファンコイルユニットの変流量・変風量制御を導入し、日の当たる時間帯によって建物の西側と東側で生じる室温差を、各部屋個別に調整できる仕組みも構築しました。

新館南側に設置されたヒートポンプ給湯器。

新館南側に設置されたヒートポンプ給湯器。

今回の施策では、空調・給湯設備のリニューアルに加えて、有限な水力発電を補完するため、太陽光発電設備も導入された。

今回の施策では、空調・給湯設備のリニューアルに加えて、有限な水力発電を補完するため、太陽光発電設備も導入された。

中央監視システムの導入でエネルギー使用量の確認や快適空間の提供が可能に

事務所に置かれた中央監視システム savic-net FX mini。設備管理担当者のほか、フロントのスタッフも日常的に操作する。

事務所に置かれた中央監視システム savic-net FX mini。設備管理担当者のほか、フロントのスタッフも日常的に操作する。

さらに、今回の施策では中央監視システムとしてアズビルの建物管理システム savic-net™FX miniを導入。空調・給湯設備の稼働状況やエネルギー消費量、客室を含む全館の室内温度や給湯温度などをフロントや事務所から随時把握できるようになりました。中央監視システムはアズビルのデータウェアセンターに接続されており、毎月のエネルギー使用量やCO2削減量などをレポートで確認することができます。これにより気づきが生まれ、新たな施策を実施するための参考となっています。

「自動制御を導入することにより、必要なときに必要な分だけ設備を稼働することができ、大幅なコスト削減に貢献しています。また、中央監視システムで客室の室内温度を監視しているので、チェックイン前に室内を快適な温度に整えることも可能となり、お客さまに常に快適な空間を提供できる体制が整いました」(江口氏)

重油から電気へのエネルギー転換を中核とした施策の結果、同ホテルの重油消費コストは取組み前と比較して3分の1程度に大幅に削減されました。今回の工事では多くの設備が電化されましたが、高効率機器の導入や設備の自動制御による最適運転の実現で電気消費量は微増にとどまり、なおかつCO2排出が非常に少ない水力発電に支えられ、ホテル全体としては68%のCO2削減につながりました。

「シーサイドホテル屋久島における取組みは、環境保護、CO2削減を推進する我々の島にとって極めて有効なモデルケースになるものと捉えています。蓄積されたノウハウを共有、横展開し、島全体での取組みをさらに強化していきたいと考えています」(荒木氏)

「1965年に建てられた本館は老朽化が進んでいるため、建て直す方向で検討を進めています。今回導入したシステムとの連携なども含めて、アズビルには今後も、省エネルギーへの高度な知見で我々の取組みを強力に支援してもらいたいと思います」(後藤氏)

※savic-net、savic-net FXは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 ゼロエミッション

産業活動から排出される廃棄物などを、ほかの産業の資源として再利用して、全体として廃棄物を自然界に排出しないようにするという考え方。

※2 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(離島の再エネ・減エネ加速化事業)

本土と送電線でつながれていない離島におけるCO2排出量の削減、エネルギーコストの削減、地域経済の活性化などに資するため、離島において、地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入、省エネルギーの推進を行う事業者に補助金を交付する事業。補助率は3分の2。

お客さま紹介

株式会社シーサイドホテル屋久島
代表取締役社長
後藤 慎 氏
株式会社シーサイドホテル屋久島
施設課長
江口 道人 氏
鹿児島県熊毛郡
屋久島町
町長
荒木 耕治 氏

シーサイドホテル屋久島

株式会社シーサイドホテル屋久島

  • 所在地/鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦1208-9
  • 竣工/本館 1965年(1993年改築)、新館 1993年
  • 事業内容/リゾートホテル、レストランなどの運営

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2016 Vol.4(2016年08月発行)に掲載されたものです。

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