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高温で腐食性の高い過酷な環境でも高精度な圧力測定が可能な隔膜真空計

原子層堆積法向けサファイア隔膜真空計

サファイア隔膜真空計

パソコンやスマートフォンなどに組み込む高性能な半導体。その製造プロセスの中では様々な薄膜形成法が適用されますが、最近は微細な加工を実現するために「原子層堆積法(ALD法)」を採用するケースが増えています。しかしながら、ALD法はその成膜原理から半導体の製造装置内にも原材料の膜が堆積する課題があります。中でも製造装置内の真空度を計測する真空計に不要な膜が堆積すると、計測値に影響を及ぼします。アズビルは2006年に製品化した独自開発の「サファイア隔膜真空計」に、新たに三つの技術的な改良を加え、原子層堆積法向け真空計を開発しました。

背景・ニーズ

半導体製造に欠かせない真空計 原子層堆積法への対応が課題に

半導体製造には、高い耐食性や耐熱性を備えた真空計が必要とされます。そうしたニーズに応えた「サファイア隔膜真空計」を、アズビル株式会社は2006年、独自に製品化しました。真空度に応じてわずかに変形する極めて薄い人工サファイアをダイアフラム(隔膜)に用い、真空度に応じて変化する静電容量を測定する方式です。過酷な条件でも精度や信頼性が高いという特長があります。

近年、半導体製造過程で採用が増えているのが、半導体ウエハーの上に別の元素や化合物を極めて薄く、かつ回り込み良く堆積させる原子層堆積(Atomic Layer Deposition :ALD)法と呼ばれる方法です。この技術により、集積回路の高速化やメモリの大容量化が実現しています。

ALD法は多くの利点がある一方で、半導体製造装置内部の成膜室(チャンバー)にも原材料の膜が回り込み、堆積してしまうという問題があります。成膜中は、チャンバー内部の真空度を正確に制御し維持する必要があります。この時、内部の真空度を測定する真空計に不要な膜が堆積すると、測定値に誤差が生じてしまうという問題があります。

サファイア隔膜真空計

開発のポイント

三つの技術的工夫を積み重ねて 原子層堆積法の課題を解決

そこでアズビルでは2006年に発売した「サファイア隔膜真空計」をベースに、ALD法に適合した「原子層堆積法向けサファイア隔膜真空計」を開発しました。原材料の膜が真空計に堆積して発生する測定誤差を低減するため、新ダイアフラム構造・堆積場所のコントロール・堆積そのものの抑制の三つの技術的な開発により、堆積による計測誤差発生の大幅低減に成功しました。

  1. 新ダイアフラム構造
    新しいダイアフラムの形状

    ALD法では原理的に真空計への膜の堆積をゼロにすることはできません。「サファイア隔膜真空計」でもダイアフラムに原材料が堆積すると、熱膨脹係数が異なるため、ダイアフラムが常にたわんだ状態になり、測定の基準値(以下ゼロ点)にずれが生じてしまいます。

    この問題に対して、膜が堆積された状態でもダイアフラムのたわみ量が変化しないように、ダイアフラムの中央部分をわずかに薄くする独自の形状を開発しました。薄い部分と厚い部分のたわみを相殺させて誤差を減らそうという発想です。変形のシミュレーションと実験により、最適な形状を求めることに成功しました。

  2. 堆積場所をコントロール
    成膜による変形シミュレーション(1/4モデル)

    使用材料によってはダイアフラムの上の膜が均一に堆積せず、ダイアフラムの形状を工夫してもたわみが不均一となり、結果的にゼロ点のずれを抑えられない場合があります。均一な膜の堆積が見込めないのなら、逆転の発想で、特定の場所に意図的に堆積させることでダイアフラムがたわんでもセンサの出力として誤差を小さくする方法を考案しました。

    センサには、圧力を測定する感圧電極と温度などの影響を補正するための参照電極があります。ダイアフラムの半径のほぼ中央に設けたポイントは感圧電極と参照電極にまたがって膜を堆積させるようにしました。具体的には、ダイアフラムを覆うサファイア円板の該当箇所に微細な穴を開けて、堆積の原因となるガスを誘導しています。

  3. 堆積そのものを大幅に抑制
    トラップ構造

    以上の二つの対策を行っても、ダイアフラム上に不要な膜が堆積することに変わりはありません。長期的には測定感度や測定精度の低下を招くことが予想されました。そこで堆積自体をできるだけ抑えるために、膜の原材料を除去する微細なフィルタともいえるトラップ(バッフル)を開発しました。このトラップ構造は円周上におよそ4000本もの微細な通り道を設けたもので、応答性も確保しています。トラップ構造を設けたことで、ダイアフラム上の堆積量は計算上、0.03%に下がり、長期的な安定性が確保されました。

成果と今後の展望

過酷な環境で高精度かつ高安定性を実現 ユーザーのニーズをとらえて改良を持続

原子層堆積法向けサファイア隔膜真空計のゼロ点安定性

このようにして、「サファイア隔膜真空計」を、ALD法に対応した「原子層堆積法向けサファイア隔膜真空計」に進化させました。膜が堆積してもゼロ点のずれがほとんどなく、かつ、長期的な安定性が確保されているなど、数多くの優れた特長を備えた真空計です。従来よりお客さまからは、「アズビルの真空計は国内開発で安心して使える」といった高い評価を頂いています。こうしたお客さまの現場の課題に継続的に対応し、最新の製造プロセスでの課題解決を実現しました。


azbil Technical Review

原子層堆積法向けサファイア隔膜真空計の開発(PDF/2,497KB)