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装置の状態変化を捉える独自の指標を搭載した調節計

グラフィカル調節計 形  C7

半導体製造装置や食品加工装置などに組み込み、ループ内の温度を一定に保つように制御する「調節計」の新製品、形  C7を開発しました。最大4系統の制御機能を小型筐体に内蔵。タッチパネル付きカラー液晶を搭載して操作性や視認性の向上を図った表示部と本体部が分離した構造を採用し、使いやすさを追求しました。
併せて、センサデータと操作量(制御信号)から制御ループの挙動の変化を定量的に把握するヘルスインデックス™という指標を新たに開発。故障予兆検出機能を備えているので予防保全へとつなげられます。

背景・ニーズ

4ループの制御機能を内蔵したグラフィカル調節計 形 C7

保存、加工、処理などにおける適切な温度管理は、安定かつ均質な製品を生み出すための重要な要素の1つであり、化成品や有機溶剤を扱う製造工場などにおいては安全性の確保にもつながります。

温度制御を行う装置を「調節計」あるいは「温度調節計」と呼びます。温度センサ、圧力センサ、流量センサなどから読み取った情報に応じて、あらかじめ設定した温度範囲になるように、ヒーターやバルブに対して操作信号を出力するのが主な役割で、半導体製造、食品加工、射出成形、石油精製、薬品製造など、様々な分野の製造装置や制御システムに組み込まれています。

「計測と制御」の技術を追求するアズビルは、製造装置メーカーを中心に長年にわたって調節計を提供してきた技術と実績を踏まえ、最大で4系統(4フィードバックループ)の温度制御機能を小型筐体に集約するとともに、制御の健全性を測る独自のヘルスインデックス機能を搭載した、新世代のグラフィカル調節計 形 C7を2016年3月に発表しました(図1)。

タッチパネル機能付きカラー液晶表示部を採用することで見やすさ、使いやすさを向上。さらに本体部と分離構造にすることで配置の自由度を高めています。本体部の結線にはスクリューレスでケーブルを確実かつ簡単に接続できるスプリング端子台を採用。10msの高速制御性(従来モデルは最高25ms)、保守性と機能性を高めたブロック構造、イーサネット(Modbus/TCP)コネクティビティ、プロセスデータおよび制御出力のロギング機能など、新世代にふさわしい様々な特長を備えています。

図1. グラフィカル調節計C7

図1. グラフィカル調節計C7

開発のポイント

制御ループの変調を定量的な指標で見える化

形 C7に搭載した新機能の1つがヘルスインデックスです。近年、装置や設備の様々な箇所にセンサを付けて状態をセンシングし、集めたセンサデータを解析して、操業条件の最適化や早期の異常検出につなげようというテクノロジーの開発が盛んです。インダストリ4.0、スマートファクトリー、インダストリアルIoT(Internet of Things)などと呼ばれる、新しい工場やプラントの姿を目指した取組みの一環といえます。

アズビルが開発したヘルスインデックスは、異常や故障の予兆を早期の段階で検出することを目指した指標であり、次のような特長があります。

  1. IoTではヒーターやバルブなどの周辺設備や周辺装置の個々の異常を検出するのが一般的ですが、ヘルスインデックスは温度制御に関係する制御ループ全体の挙動を定量的な指標として算出する点が特長です。指標の変化を時間の経過とともに見ていくことで、制御ループ全体の健全性や異常が把握できます。
  2. 形 C7に入力されるセンサデータと形 C7が出力する操作量のみを用いて指標を算出します。ヒーターやバルブなどの周辺設備や周辺装置にセンサを取り付ける必要がなく、追加配線なども不要です。
  3. センシングデータをネットワークを介して上位システムに集約する従来のIoTとは異なり、形 C7内部で演算処理を行うため、ネットワークを新たに敷設したり、上位サーバーやクラウド上に解析アプリケーションを構築する必要がありません(もちろん必要に応じて形 C7が算出した指標をネットワークを通じて上位に送出することは可能です)。

ヘルスインデックスの算出式を図2に示します。ヘルスインデックスには様々なものがあり得ますが、今回アズビルが開発し、業界に先駆けてC7に搭載したヘルスインデックスは、プロセスゲインKpを時定数Tpで割った「正規化応答性」という指標です。「正規化応答性」を分かりやすくいうと、プロセス値の状態の変化量を指標化したものです。

グラフを見ただけでは判別がしづらい現在温度や操作量の関係のわずかな違いも、図3に示すように、正規化応答性を使った場合、0.050、0.048、0.046、0.044といった数値の変化として求めることができます。すなわち、ヒーターやバルブなど、対象となる制御ループに関連するいずれかの設備や装置に変調が起きていることが速やかに把握できます。

図2. ヘルスインデックスの算出アルゴリズム(特許 4481953号)

図2. ヘルスインデックスの算出アルゴリズム(特許 4481953号)

図3. ヘルスインデックスを用いて制御ループの変化を把握

図3. ヘルスインデックスを用いて制御ループの変化を把握

タッチパネル付きカラー液晶で操作性を向上

アズビルは「人を中心としたオートメーション」の探求を企業理念に据えており、その取組みの一環として、使いやすい機器や装置の提供を目指しています。

調節計 形 C7においてはタッチパネル機能付きカラー液晶を表示部に採用しました。画面の表示を見ながらタッチ操作で設定ができるため、お客様からは使いやすくなったと好評です。

タッチパネルには抵抗膜式を採用し、かつ、IP67保護等級の防水防塵性能を備えているため、手袋をはめたままでもタッチ操作を認識するほか、濡れた手での操作も可能です。

また、画面を縦横に分割して最大4ループの状態を一括で表示するとともに、異常があったループは赤色で強調し、離れたところからも一目で分かるように視認性を向上させています。

表示部は本体部と分離構造とし、最長30m(別電源を供給すれば最長100m)まで離して設置ができます。制御システムや製造装置への組み込みの自由度が高く、例えば本体を装置背面側に置き、表示部を前面に配置することも簡単です。

また、開扉式の前面パネルに調節計を取り付けた場合、従来はセンサ信号や操作信号など大量のケーブルをヒンジ部分に這わせなければなりませんでしたが、形 C7であれば本体部と表示部の間の接続はケーブル1本のみで済むため、ヒンジ部分の省配線化が図れます。

図4. タッチパネル付きカラー液晶を搭載

図4. タッチパネル付きカラー液晶を搭載

図5. 本体部と表示部を分離構造にしたことにより組み込みの自由度が向上

図5. 本体部と表示部を分離構造にしたことにより組み込みの自由度が向上

成果と今後の展望

装置側で処理をするローカルコンピューティングを提案

前述のように、工場内の機器や設備をセンシングし、クラウドにデータを集約して、様々な見える化を実現するIoTへの取組みが盛んですが、クラウドに送られる大量のセンサデータによってネットワークの通信容量が占有されたり、クラウドの処理負荷が増大してしまったりするなどの課題が指摘されています。

そこでトラフィックを抑えるために、IoTゲートウェイなどで中間的な処理を行うエッジコンピューティングやフォグ(fog)コンピューティングといったアーキテクチャが提唱されています。

アズビルが提案するのが、さらに階層を下げ、センシングデータを装置自体で処理する「ローカルコンピューティング」です。

形 C7に搭載したヘルスインデックスのような指標は、センシングデータをそのままクラウドに送り、クラウド上で算出することも可能ですが、仮にネットワークトラフィックを抑えようとデータの送信間隔を長くしてしまうと製造装置のような挙動の変化が速いものでは、挙動の変化を正確に把握することができなくなります。

その点ローカルコンピューティングであれば、ネットワークトラフィックを気にすることなく、センシング対象や分析手法から導き出される最適な条件およびタイミングで算出が行えます。

アズビルは、今後、ローカルコンピューティングのようなアーキテクチャを必要に応じて組み合わせながら、工場やプラントのスマート化の推進をお客さまに提案していきます。


図6. 装置側で処理をするローカルコンピューティング

図6. 装置側で処理をするローカルコンピューティング

azbil Technical Review

調節計におけるファクトリオートメーション領域でのローカルコンピューティング (PDF/2,660KB)