HOME > 納入事例 > 中外製薬工業株式会社 藤枝工場

中外製薬工業株式会社 藤枝工場

製造現場の環境制御・モニタリングで
医薬品の品質と作業者の安全管理を徹底

中外製薬工業では、藤枝工場内に新設した「固形製剤棟」において、医薬品製造に求められる厳密な製造環境の制御と環境データのモニタリングを実現しました。その成果は、品質管理やコンプライアンス対応をはじめとする幅広い局面に及んでいます。

2008年2月に竣工した固形製剤棟。<br />薬の製造過程が見学できるコースも準備されている。

2008年2月に竣工した固形製剤棟。
薬の製造過程が見学できるコースも準備されている。

工場・プラント分野 医療・医薬品 省エネルギー コスト削減 品質管理 運転監視・制御システム&ソフトウェア

導入製品・サービス

建物管理システム savic-net FX

製造環境の厳密な管理が品質管理の重要なカギ

中外製薬工業株式会社は、医療用医薬品のリーディングカンパニーとして知られる中外製薬株式会社の生産機能を担う企業です。同社では2002年以来、生産のさらなる効率化と自社技術の維持・強化を目的に、それまで国内7カ所に展開していた工場を集約。現在では、東京都の浮間、栃木県の宇都宮、神奈川県の鎌倉、そして静岡県の藤枝という4つの工場が同社医薬品の生産拠点として稼働しています。

「2010年を目標に抗がん剤を中心とした固形剤(錠剤・カプセル剤・顆粒剤)の生産機能を藤枝工場に集約し、原薬生成から製剤、包装に至る一貫生産体制の構築を進めています。そして、その取組みの中核を担うのが、2008年2月、藤枝工場の敷地内に新たに竣工した『固形製剤棟』です」(酒井氏)

建設面積10855m²、延床面積29150m²、地上4階建てという規模を誇るこの建物のコンセプトは"パラレル&マルチユース"。抗がん剤などの高活性製品と一般製品を棟内にある複数の製造室や設備を共有し同時に生産することを目指しています。

「医薬品を生産する上では、その製造環境の高度な温度・湿度制御が必要です。加えて、少量でも人体に強い影響を及ぼす高活性物質の作業者への曝露(ばくろ)や、それら物質の飛散などによる一般製品への混入を防止するための"高活性物質の封じ込め"を行う必要があります。そのためには、厳密な室間差圧の制御が不可欠です。各製造室の温度や湿度、そして室圧などをつぶさにモニタリングしながら、製造環境を常に一定に維持していくための制御を行うことが重要な要件となります」(酒井氏)

「その一方で、GMP※1などの医薬品の製造・品質管理上の法規制を遵守するという観点から、製造環境の制御を適正に実施することはもちろん、モニタリングした製造環境データを継続的かつ克明に記録していくといったことも必須条件なのです」(道下氏)

山武との綿密な連携の下システムを継続的にブラッシュアップ

固形製剤棟に設置された建物の環境を制御するsavic-net FX(左)と製造環境データをモニタリングし蓄積するHarmonas。

固形製剤棟に設置された建物の環境を制御する"savic-net™ FX"(左)と製造環境データをモニタリングし蓄積する"Harmonas"。

薬品製造室の室間差圧の監視を行うHarmonasの監視画面。

薬品製造室の室間差圧の監視を行う"Harmonas"の監視画面。

工務棟に設置されたHarmonasはコジェネレーションシステムなどのエネルギー供給設備の制御と管理を行う。

工務棟に設置された"Harmonas"はコジェネレーションシステムなどのエネルギー供給設備の制御と管理を行う。

このような固形製剤棟における環境制御・モニタリングへの要求に応えるため、中外製薬工業が採用したのが、山武の建物管理システムsavic-net™FXと協調オートメーション・システム Harmonas™でした。savic-net FXでは、製造室などの温度、湿度、室圧の計測・制御を行い、連携しているHarmonasに搭載された環境モニタリングパッケージを用いて逐一変化する製造室の環境データを監視・記録します。これにより徹底した製造環境の管理を実現しています。

もともと中外製薬では、1992年の浮間工場を皮切りに宇都宮工場、さらには藤枝工場の別棟においても、このsavic-net FXとHarmonasを組み合わせたシステムを構築し、製造環境の管理に関する様々な課題に取り組んできたという経緯があります。その間、同社と山武が互いに協調しながらシステムの継続的なブラッシュアップに努めてきました。

「製品自体の優位性はもちろんですが、ユーザーである我々自身が"ブラックボックス化"されたシステムを利用するというのではなく、システムの内容をしっかりと理解した上で安心感を持って利用していきたいという思いが当社にはあります。そうした要望にも柔軟に応えてくれる山武のスタンスには、大きな信頼を感じました」(道下氏)

「システムでは、許容範囲を超える環境変化が発生した際に、速やかに管理者に通報し、適切な対処が行えるような仕組みが整備されています。このことが、製品の厳密な品質管理や作業者の安全確保に貢献していることは言うまでもありません。また、GMPなどの規制への対応に関しても必要な証跡を確実かつ自動的に確保できるというメリットが得られています。特にHarmonasに備えられた厳密なユーザー管理やアクセス制御といった一連のセキュリティ機能は、証跡の正当性の確保など、当社が抱えるコンプライアンス上のニーズを満たすものとして高く評価しています」(酒井氏)

CO2削減の側面でのモニタリング・分析にも活用

中外製薬工業の藤枝工場では、エネルギー供給にかかわるロスの最小化、CO2排出削減を目指し、1260kWの自家発電機3台を中心に構成される電力供給設備を工場敷地内に設け、電力供給ばかりでなく、発電時の排熱を利用して温水などを作るといったコジェネレーションシステムも導入しました。同社はこの設備を設置したESCO事業者(株式会社シーエナジー)より電力や温水、蒸気を購入して、工場内で必要となるエネルギーを賄うという形を取っています。これにより、送電によるエネルギーロスを最小限に抑えるとともに、災害などの非常時にも自社工場内でのエネルギー供給が可能となりました。

「このエネルギー設備全体のモニタリングにもHarmonasが活用されており、エネルギー供給に関する詳細な分析を行うことで常に改善点を見いだしながら、エネルギー効率をさらに向上させていくという取組みにも着手しています。現在、同設備によって5000t/年のCO2削減効果が見込まれていますが、Harmonasを活用した改善を今後継続的に実施していくことで、その効果をさらに高めていけるものと考えています」(道下氏)

「国内のGMP、米国のFDA※2や欧州のEMEA※3といった各国の医薬品製造・品質管理に関する規制対応はもちろんのこと、ICH※4による国際的な基準の標準化・統一の流れ、さらには環境保護への取組みなど、製薬会社を取り巻く環境は刻々と変わっています。そのような変化に対して、生産、品質、エネルギーといった幅広い分野でトータルに支援してくれるパートナーとして、山武には今後も大いに期待しています」(酒井氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

用語解説

※1 GMP

Good Manufacturing Practice。薬事法に基づいて厚生労働大臣が定めた医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準。

※2 FDA

Food and Drug Administration。米国食品医薬品局。

※3 EMEA

European Medicines Evaluation Agency。欧州医薬品審査庁。

※4 ICH

International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use。日米EU医薬品規制調和国際会議。日本・米国・EUそれぞれの医薬品規制当局と産業界代表で構成されており、新薬承認審査の基準を国際的に統一し、医薬品の特性を検討するための非臨床試験・臨床試験の実施方法やルール、提出書類のフォーマットなどを標準化する機関。

お客さま紹介

中外製薬工業株式会社 藤枝工場 工場長 酒井 康行氏
中外製薬工業株式会社
藤枝工場
工場長
酒井 康行氏
中外製薬工業株式会社 藤枝工場 施設グループ グループマネジャー 道下 糾生氏
中外製薬工業株式会社
藤枝工場
施設グループ
グループマネジャー
道下 糾生氏

中外製薬工業株式会社 藤枝工場

中外製薬工業株式会社 藤枝工場

中外製薬工業株式会社 藤枝工場

  • 所在地/静岡県藤枝市高柳2500番地
  • 設立/2006年5月
  • 事業内容/医薬品の製造

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2009年09月号に掲載されたものです。

工場・プラント分野の納入事例

省エネルギーの納入事例

運転監視・制御システム&ソフトウェアの納入事例