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株式会社デンソー 安城製作所

現場の要求量に応じた最適運転制御で、省エネ対策の新たな可能性を拓く

持続可能な社会の実現に寄与すべく、地球環境との調和を目指した事業を展開するデンソー。同社の安城製作所では先ごろ、「エネルギーJIT」のコンセプトの下、製造現場へのエア供給にかかわる省エネ対策に着手。生産状況に即したエアの要求量に応じて、必要なコンプレッサの稼働台数と組合わせを最適制御する仕組みを構築し、エネルギー原単位の改善に大きな成果を上げています。

株式会社デンソー 安城製作所

株式会社デンソー 安城製作所

工場・プラント分野 自動車 省エネルギー コスト削減 運転監視・制御システム&ソフトウェア

生産用エネルギーは、インフラではなく部品

株式会社デンソーは、世界中の主要自動車メーカーへ先進技術に基づく製品を提供する自動車部品のサプライヤーです。安全性、快適性、利便性を追求する新技術や新製品の研究・開発により、人とクルマが調和して共存する社会の実現に貢献しています。一方で省エネルギーセンターが実施する省エネ大賞において、2009年度の組織部門 経済産業大臣賞を受賞するなど、環境負荷低減に向けた取組みを積極的に展開している企業としても知られています。製造現場における省エネルギーの推進は、以前から最重要テーマの1つに据えられてきました。

「原油高によるエネルギーコストの高騰に加え、2008年秋のリーマンショックを背景に、生産量の減少に見舞われる中、製造現場におけるエネルギー効率にも悪化の傾向が見られるようになってきていました。これに対し当社では、JIT※1の思想を製造工程のエネルギー管理・運用に採用した『エネルギーJIT』というコンセプトを提唱し、従来の枠を超えた省エネ対策の展開で、生産変動にも強い製造現場を目指すことにしました」(菊地氏)

「従来の省エネ活動は、主に生産時のムダ取りを念頭に置いたものでしたが、エネルギーJITでは『生産用のエネルギーは、インフラではなく部品』と考えて、生産量に連動したエネルギーの最適化を目指しています。そうした意味でこのコンセプトは、"省エネ"から"少エネ"へのパラダイムシフトを意図したものだといえます」(松浦氏)

既存システムを活用した、コスト効果の高い提案を評価

デンソーでは、2009年春ごろからエネルギーJITを具現化するためのシステムの検討を開始。まずは、社内でも先進的に省エネ活動に取り組んできた実績のある安城製作所において、最も大きな効果が見込めると考えられるエア供給の分野に着手することにしました。

早速、デンソーでは数社のベンダーにエネルギーJIT思想を取り入れた空圧機の制御構想を具現化する最適運転制御に関する提案を依頼。各社の提案、プレゼンテーションを経て競争入札を実施した結果、山武をパートナーに選定しました。その内容としては、デンソーが既に運用していたコンプレッサの台数制御システムや、既存で利用していた機器間の配線を活用しながら、デンソーのエネルギーJITシステムと新たに導入する山武の工場省エネルギーソリューション コンプレッサ最適制御 ENEOPT™comp(エネオプト コンプ)とを連携させてコンプレッサ制御をミニマムコストで実現する仕組みでした。

「山武は、従来の安城製作所における運転の在り方をしっかりと踏まえながら、我々が言葉で伝えたニーズを的確に把握し、さらにそのニーズを一歩先に進める内容の提案を具体的な"絵"に描いて見せてくれました。特に、コスト面で非常にメリットの大きい、既存システムをベースとした提案をしてくれたことは、山武の技術力の高さの証明であると感じました」(松浦氏)

最適運転制御の対象となるコンプレッサ。第2安城製作所では、ターボコンプレッサ7台とスクリューコンプレッサ3台の計10台が設置されている。

最適運転制御の対象となるコンプレッサ。第2安城製作所では、ターボコンプレッサ7台とスクリューコンプレッサ3台の計10台が設置されている。

コンプレッサ室に置かれたHarmonasの監視・制御端末。製造現場でのエアの需要量に応じてコンプレッサの稼働台数およびその組合わせの制御を行うほか、エアの流量や圧力の状況についての見える化にも貢献。

コンプレッサ室に置かれたHarmonas™の監視・制御端末。製造現場でのエアの需要量に応じてコンプレッサの稼働台数およびその組合わせの制御を行うほか、エアの流量や圧力の状況についての見える化にも貢献。

生産現場でエアの要求量に応じて稼働台数と組合わせを制御

コンプレッサ室に設置されたコンプレッサ最適運転制御盤。中にはDGPL IIが組み込まれており、製造現場でのエアの要求量に応じてコンプレッサの稼働台数と組合わせについての制御を実現している。

コンプレッサ室に設置されたコンプレッサ最適運転制御盤。中にはDGPL IIが組み込まれており、製造現場でのエアの要求量に応じてコンプレッサの稼働台数と組合わせについての制御を実現している。

デンソーが山武の採用を正式に決めたのが2009年10月。その後、約3カ月の工期を経て、2010年に新システムが稼働することとなりました。新システムでは、新たに山武の監視・制御システムである協調オートメーション・システム Harmonas™とPLC※2などのコントローラを連携させるゲートウェイのDGPL IIを導入。これらのシステムにコンプレッサ最適制御 ENEOPTcompを組み込み、あらかじめ設定されたエアの要求量に応じた形で、メーカーの違うターボコンプレッサ7台とスクリューコンプレッサ3台の計10台による最適運転制御を実現しています。このとき、制御のベースとなる生産計画に基づいたエアの要求量は別途構築されているエネルギーJITサーバーから受け取ります。同サーバーには各現場の担当者が日々の各時間帯におけるエネルギー使用量をWeb上から入力する仕組みである"エネカンバン"のデータが集約されています。

「既存の台数制御は、各コンプレッサの運転時間が均一になるようローテーションを行うという仕組みでしたが、今回のシステムでは、時間帯ごとの生産状況に応じて必要となるエアの量、および各コンプレッサの特性などを総合的に加味して、必要な稼働台数とその組合わせを、システムがその都度判断して制御するという高度な最適運転を実現できました」(石本氏)

「実際の運用においては、ある要求量において最適であると当初想定していた機器の組合わせが必ずしも正しくないというケースがあることも明らかになりました。そうした際にも、現場担当者自身が機器の実稼働における性能情報を踏まえて、必要なパラメータをHarmonas上で容易に再設定できるというのも、今回のシステムの際立った優位性だと考えます」(熊谷氏)

また、Harmonasの監視・制御画面は、社内LANを通じて本社にある計画部門でも随時参照できるようになっており、新たな設備改善計画の際にも役立てられます。

コンプレッサの最適運転制御が実現されたことで、安城製作所では製造現場へのエア供給にかかわるエネルギーが原単位比較で従来より9%改善されるという成果を得ることができました。

デンソーでは、今回の第2安城製作所での成果をベースに、同様のコンプレッサの最適運転の仕組みを第1安城製作所や本社、高棚製作所においても構築すべく、既に取り組んでいます。さらに今後、エアを利用するすべての製作所・工場にも水平展開していく意向です。

「エアについての取組みは、エネルギーJITの第1ステップにすぎません。将来的には、空調や蒸気、受電といった分野でも最適運転を実現していきたいと考えています。重要なのは、これまでの延長線上で強化を図るというのではなく、常に新たな着眼点をもって省エネルギーに取り組んでいくということ。山武には、持ち前の高度な技術力とノウハウで、その指針となる提案をこれからも大いに期待しています」(菊地氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

用語解説

※1 JIT(Just In Time)

ジャストインタイム生産システム。トヨタ自動車の生産方式の代表的要素として知られるもので“必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産する”というもの。「カンバン方式」とも呼ばれる。

※2 PLC(Programmable Logic Controller)

装置や操作盤に設置したセンサやスイッチなどの入力機器からの信号を入力回路で取り込み、あらかじめプログラムされた条件で出力回路をON/OFFすることで電磁弁やモーターなどの出力機器を自由に制御するコントローラ。

お客さま紹介

株式会社デンソー 施設部 コンストラクション室 担当係長 菊地 康之氏
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施設部
コンストラクション室
担当係長
菊地 康之氏
株式会社デンソー ファシリティーズ 安城動力センター センター長 松浦 一氏
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ファシリティーズ
安城動力センター
センター長
松浦 一氏
株式会社デンソー ファシリティーズ 動力施設本部 安城動力センター 係長 熊谷 信治氏
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動力施設本部
安城動力センター
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熊谷 信治氏
株式会社デンソー ファシリティーズ 動力施設本部 安城動力センター 担当班長 石本 英二氏
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ファシリティーズ
動力施設本部
安城動力センター
担当班長
石本 英二氏

株式会社デンソー 安城製作所

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株式会社デンソー 安城製作所

  • 所在地/愛知県安城市里町長根2-1
  • 操業/第1安城製作所 1967年8月
    第2安城製作所 1973年12月
  • 事業内容/自動車部品(スタータ、オルタネータ、エレクトリック・ハイブリッド・ビークル製品)の製造

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2011年04月号に掲載されたものです。

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