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新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所

熟練者の操炉スキルを自動化するとともに長期操炉データの分析に基づいた作業改善が、生産性と品質の向上を実現

新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所では、2007年に老朽化したDCSの更新に着手。併せてオペレータの作業負荷軽減に向けたオペレーションの自動化と、運転・品質改善のための長期操炉データを蓄積するなどの取組みに着手しました。蓄積した操炉データを解析することにより、人によるばらつきのパターンの発見や切分けの難しい事象の原因を究明し、作業の自動化、検証、改善というPDCAサイクルを確立。生産性の向上、品質の確保を実現しています。

新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所

新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所

工場・プラント分野 鉄鋼 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア

加熱炉の設備改造を契機に、計測・制御の高度化を目指す

2012年10月1日、新日本製鐵株式会社と住友金属工業株式会社の合併により誕生した新日鐵住金株式会社。東アジア市場を中心に競争が激化する鉄鋼業界の中で、「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指す同社では、コスト競争力や技術的先進性など、あらゆる面でのレベルアップを図るべく、様々な側面から施策を展開しています。

同社が運営する八幡製鐵所は、1901年に官営製鉄所として操業を開始。以来、一貫して日本の鉄鋼業界を牽引(けんいん)してきたことで知られています。特に近年は、主に九州地区の産業に向けた高級鋼板の供給基地として、ステンレスや電磁鋼板などの特殊鋼を中心に、多品種・小ロットによる生産で、タイムリーに市場の要求に応えています。

その八幡製鐵所では、省エネルギー、コスト削減などを念頭に、圧延(あつえん)※1加工をする際に必要な加熱処理を行う加熱炉の計測・制御のさらなる高度化を目指して、DCS※2の更新に着手したのです。このとき、新たなDCSとして採用したのが、アズビル株式会社の新世代プラント・オートメーション・システム Advanced-PS™APS5000でした。

「3基ある加熱炉のメンテナンス時期に合わせて1基ずつDCSを更新していくと、移行途上で旧システムと新システムが混在することが分かっていました。その際、既存DCSと互換性のあるAPS5000なら、オペレーションの混乱を防げる点も重要なポイントでした」(村田氏)

運転自動化パッケージの導入で想定外の業務負荷増加に対応

2008年に最初の1基についてDCSを更新しました。このとき、時期を同じくして実施した加熱炉の設備改造に伴い、炉内の温度分布が変わったことで、鋼材にキズが生じるという課題が発生していました。

「この鋼材は特定の温度を超えるとキズが発生することが分かっていました。オペレータが普段操炉しているDCSの画面を炉内の温度監視画面に切り替えて、温度の高い場所については手動で温度設定を変更するという作業を行いました。そのため、オペレータの作業負荷が高くなっており、操業が難しい状況に陥っていました」(富川氏)

そんな折、運転ノウハウを自動化することで、オペレータの負荷低減、運転ノウハウの蓄積・継承を支援する運転支援自動化パッケージ Knowledge Power™(ナレッジパワー)がアズビルから提案され、導入を決定しました。

「加熱炉の設備改造はインパクトの大きな取組みです。操炉上、影響が想定される事態への対応は、あらかじめDCSに組み込んでいましたが、想定外のキズが発生してしまいました。今後も、同様の事態が起こり、業務負荷が増えてしまうことは十分に考えられます。そうした課題を未然に解消するには、Knowledge Powerのようなツールが不可欠だと判断したのです」(倉浪氏)

具体的には、オペレータにとって大きな負荷となる作業を洗い出し、操炉時のアクションをKnowledge Powerにプログラミング、APS5000と連動することによりもともとオペレータが実施していた作業を自動化できるようにしたのです。

「Knowledge Powerのプログラム作成については、アズビルが開設する2日間のコースを受講することで容易に習得できました。現場のオペレータ全員がプログラミングできるように、スキルの共有化を図っているところです」(富川氏)

また、Knowledge Powerは、自分たちでプログラムを組むことができる手軽なツールのため、オペレータの作業負荷の削減にとどまらず、ミスを犯しやすい状況でアラームを発報して注意を喚起したり、担当者によってばらつきの出やすい作業を標準化したりするのにも役立てています。

「特に、ベテラン層が暗黙知として持つノウハウを、いかに若手へ継承するかという課題は、我々の現場において重要なテーマです。熟練者のスキルを標準化、定型化していく上でもKnowledge Powerは大きな威力を発揮しています」(村田氏)

運転室に設置されたAdvanced-PS APS5000とKnowledge Power。加熱炉の操業監視・制御、およびプロセスの自動実行を支援している。

運転室に設置されたAdvanced-PS APS5000とKnowledge Power。加熱炉の操業監視・制御、およびプロセスの自動実行を支援している。

運転室にあるPREXION。操炉データの長期にわたる蓄積が可能となっており、様々な角度からのデータ分析を行うことで運転の改善を図るとともに、設備トラブルの原因究明にも役立てている。同じ端末が整備、技術などの部門にも設置されており、逐次、操炉の様子を確認することができる。

運転室にあるPREXION™。操炉データの長期にわたる蓄積が可能となっており、様々な角度からのデータ分析を行うことで運転の改善を図るとともに、設備トラブルの原因究明にも役立てている。同じ端末が整備、技術などの部門にも設置されており、逐次、操炉の様子を確認することができる。

操炉データを長期に蓄積し、発生する事象の原因究明、解消を図る

さらに八幡製鐵所では、一層の操業品質の向上を図るため、2009年にアズビルが提供するリレーショナル製造情報管理システム PREXION™(プレキシオン)も導入しました。

「PREXIONは、DCSでは記録しきれない長期にわたるデータの蓄積が可能です。例えば、加熱炉の操業で発生する事象には短期的には再現しづらいものが多く、その原因を究明し、解消していくには、長期的なデータを様々な角度から分析できるPREXIONのような環境が必要でした」(谷川氏)

八幡製鐵所では2010年までに全3基の加熱炉についてDCSの更新を完了。その後も、APS5000、Knowledge Power、PREXIONを連携して活用することで、担当者によってばらつきの大きい休止後の炉の立ち上げ昇温作業、炉内の酸素濃度を監視して適切に制御しNOx※3排出を低減する作業、燃料原単位をモニタリングする作業などを自動化しました。

「その結果、生産性がおよそ2割向上するという成果が得られました。設備が悪いのか、制御が悪いのか、操業ミスなのかといった分かりにくい事象に対して、PREXIONのデータを分析することで原因がすぐに分かったという事例があります。このような事象が発生した場合は、PREXIONの蓄積したデータで原因究明し、Knowledge Powerでその対策となる作業を自動化するといった流れでPDCAがうまく回るようになりました」(谷川氏)

「多品種・小ロットの生産が主体である当製鐵所では、操業の条件が頻繁に変わるため、どうしてもオペレータに負担がかかりやすいという課題を抱えています。今回導入した一連のシステムによって、こうした課題も着実に解消していけるものと確信しています。アズビルには今後も、我々の取組みをしっかりと支えていってもらえるよう期待しています」(倉浪氏)

用語解説

※1 圧延

鋳造で製造された半製品に力を加えて「鍛える」ことで所定の形状の製品に加工する作業。

※2 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

※3 NO

一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素、N2O)など、窒素酸化物の総称。光化学スモッグや酸性雨などを引き起こす大気汚染原因物質であり、国の「大気汚染防止法」や自治体の条例などにより環境基準が定められている。

 

お客さま紹介

新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所 薄板部 熱延工場 熱延課 課長 倉浪 清仁氏
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熱延課
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新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所 薄板部 熱延工場 熱延課 富川 真光氏
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富川 真光氏
新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所 薄板部 熱延技術室 谷川 昌弘氏
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新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所 設備部 システム制御技術室 主査 村田 伸氏
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設備部
システム制御技術室
主査
村田 伸氏

新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所

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新日鐵住金株式会社 八幡製鐵所

  • 所在地/福岡県北九州市戸畑区飛幡町1-1
  • 操業開始/1901年
  • 事業内容/電磁鋼板、鉄道用レール、建材用スパイラル鋼管などの製造

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2013 Vol.5(2013年10月発行)に掲載されたものです。

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