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Keppel DHCS Pte Ltd

既存施設を活かした熱源最適化制御の導入で、
地域冷房プラントの大幅な省エネルギーを実現

シンガポール最大のDHCS(地域冷暖房)プロバイダーとして知られるKeppel DHCS。国の環境保護施策への対応、施設運用コストの削減によるビジネス競争力の強化などを念頭に、同社が運営する三つの地域冷房プラントで省エネ施策を実施しました。既存設備を活かした制御とESCOスキームに基づく施策の展開で、投資とリスクを最小化しながら、目標を大きく上回る省エネ効果を達成しました。

工場・プラント分野 上・下水道 省エネルギー 海外 運転監視・制御システム&ソフトウェア

導入製品・サービス

事業のキーとなる省エネ実現に向けて、今後10年のロードマップを作成

19世紀初頭に英国の東洋貿易における拠点となり、インド、中国の中継貿易を中心に発展を遂げたシンガポール。今日では、世界的に見ても常に上位のGDPを維持しており、高い国際競争力をベースに継続的な経済発展を遂げています。同国の発展の一翼を担っているのが、インフラ整備事業や不動産事業、海洋事業、投資事業など広範なビジネスを展開する政府系企業であるKeppel Corporationです。その傘下に属するKeppel DHCS Pte Ltdは、シンガポール最大のDHCS*1プロバイダーとして知られています。

現在、Keppel DHCSはシンガポール国内にチャンギ、ウッドランド、バイオポリス、メディアポリスという四つの地区の地域冷房プラント(以下、DCS*1)を所有しています。中国・天津にもDHCSプラントを設置しており、今後はインドネシアをはじめとする、ほかの東南アジアエリアでもビジネスを積極的に拡大していく予定です。

近年、シンガポール政府は、産業などの領域と同様に建物分野でも省エネ推進に努めており、環境配慮型のビルを評価する「グリーンマーク制度*2」などの取組みを進めています。

「DCSプラントもこの制度の対象となっており、当社のプラントでも、それに準じた省エネルギーの実現が求められていました。もちろん、省エネ施策導入による効率性向上、エネルギーコストの削減は、ビジネス強化に直結するものです。当社では3~4年前から、今後10年間を見据えたロードマップを描いてきました」(NG氏)

最適制御とESCOが核となる提案で、初期投資のリスクを最小化

チャンギDCSプラントの監視・制御を行っているHarmonas-DEO。

チャンギDCSプラントの監視・制御を行っているHarmonas-DEO。

同社では以前から、シンガポール国内で運営するすべてのDCSにおいて、アズビルシンガポール株式会社の支援の下、中央監視制御システムとしてアズビルのHarmonas-DEO™を導入してきました。これらのシステムがプラントの安定操業や供給する冷水品質の維持に貢献してきた経緯もあり、Keppel DHCSが描くロードマップに沿った省エネ対策の具現化について、あらためてアズビルシンガポールに相談を持ちかけました。

アズビルシンガポールからは、冷凍機や冷却塔、送水ポンプといった既存設備を活かしながら、新たに熱源最適化制御技術を適用して省エネ効果を目指すというアプローチと、さらに、省エネ効果を保証するESCO*3型のスキームが提案されました。

「既存設備の入替えをほとんど行わないことから初期投資が抑えられます。さらにESCOスキームを取り入れることで、省エネ成果をアズビルが5.5年間保証してくれるのです。この点は、リスクの最小化という意味からも当社にとって非常に魅力的でした。また、親会社であるKeppelの了解を取り付ける際にも説得力がありました」(NG氏)

同社ではまず、ウッドランドのDCSで省エネ施策に着手。既存設備については、インバータを導入するなどの最小限の対応を行い、そのほかはすべて最適化制御によって熱源設備全体の効率を改善する方法が取られました。具体的には、既存のHarmonas-DEO、および新たに実装した熱源設備/動力プラント全体最適化パッケージ U-OPT™により、需要家側の必要熱量を満たし、かつ総電力コストを最小化する制御を、冷凍機や冷却塔ファン、送水ポンプなどの各種設備に適用しました。

「当初は、リスク回避の観点から完全な自動運転は見合わせていました。U-OPTが割り出した最適な運転ガイダンスをオペレータに示し、人による判断を加えてから中央監視制御システムで必要な操作を行うスタイルを採用したのです。しかし、しばらく運用を続けていくとKPI*4による効率がどんどん良くなっていくことが分かり、常に適正な運転であることが確認できたのです。これにより人間の判断を介さずにU-OPTの演算を基にした自動運転へ完全移行しました。最適化プログラムが常に値を計算して一年を通じて休むことなく制御しているので安心して省エネルギーを実現することができます」(ZAW氏)

熱源設備/動力プラント全体最適化パッケージ U-OPT。監視・制御システムで収集している各熱源設備の運転データなどを取り込み、気象条件を踏まえて需要家側の必要熱量を予測。予測した熱量を製造するに当たり、熱源システム全体の消費エネルギーが最小化されるよう冷凍機や冷却塔、送水ポンプなどを最適に運用する最適化制御パッケージ。

熱源設備/動力プラント全体最適化パッケージ U-OPT。監視・制御システムで収集している各熱源設備の運転データなどを取り込み、気象条件を踏まえて需要家側の必要熱量を予測。予測した熱量を製造するに当たり、熱源システム全体の消費エネルギーが最小化されるよう冷凍機や冷却塔、送水ポンプなどを最適に運用する最適化制御パッケージ。

目標を大きく上回る省エネルギーを実現、ほかのDCSにも同様の施策を展開

DCSプラントで作られた熱が送られているバイオポリスのオフィス街。空調用としてプラントで作られた熱が使われている。

DCSプラントで作られた熱が送られているバイオポリスのオフィス街。空調用としてプラントで作られた熱が使われている。

省エネ施策を実施した結果、ウッドランドのDCSプラントでは、開始時の目標だった約185万kW/年の電力消費量削減を大きく上回る、228万kW/年という大幅な削減を実現しました。目標に対し123%という高い達成率です。

ウッドランドにおける非常に良好な成果により、その後、チャンギ、バイオポリスの両DCSにおいても順次、同様の施策を行いました。その結果、いずれも目標値を大きく上回り、合計で800万kW/年以上の消費電力の削減を達成しました。

「運用面でもアズビルシンガポールが常に手厚くサポートしてくれたことに加え、Harmonas-DEOやU-OPTを日本側でアズビル株式会社がリモート監視する保全サポートもあり、万一の際にも日本からリモートログインして対応してくれる体制に大きな安心感があります。azbilグループには技術力というバックグラウンドがあるので信頼して施策を実施することができました」(ZAW氏)

「さらに、当社エンジニアの教育という面でも貢献してくれました。一連のプロセスにおいて、アズビルシンガポールや日本のアズビルとともにディスカッションしながら進めたことで、エンジニアの意識やスキルも向上しました」(KENG氏)

今後もKeppel DHCSでは、DCS以外の領域も含めて、さらなる省エネルギーへのチャレンジを進めていきます。

「当社では、個々のビルにある熱源設備の運用を行うビジネスも展開しています。各ビルで運用されている熱源制御システムをKeppel本社など、センターから集中的にモニタリング、コントロール可能な仕組みも構築したいと考えています。その中でいかに省エネルギーを図るのかも重要なテーマです。その観点からも、azbilグループは、今後も当社にとって必要不可欠な省エネルギーのパートナーだと考えています」(NG氏)

※Harmonas-DEO、U-OPTは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 地域冷暖房(DHCS:District Heating and Cooling System)

一定地域内の建物群に熱供給設備(プラント)から冷水、温水、蒸気などを、地域導管を通して供給し、冷房、暖房、給湯などを行うシステム。熱帯、亜熱帯など暖房が不要の地域では、DCS(District Cooling System)とも呼ばれる。

※2 グリーンマーク制度

シンガポール政府の国家開発省に所属する機関であるBCA(Building & Construction Authority)が実施している、建物をエネルギー効率や環境配慮の観点から評価する制度。スタンダードからゴールド、ゴールドプラス、プラチナなどのレベルがある。

※3 ESCO(Energy Service COmpany)

工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。

※4 KPI(Key Performance Indicator)

重要業績評価指標/主要業績評価指標。組織や事業、業務の目標の達成度を評価するための定量的な指標。

お客さま紹介

Keppel DHCS Pte Ltd
CEO
JOSEPH NG 氏
Keppel DHCS Pte Ltd
ゼネラルマネージャー
POH TIONG KENG 氏
Keppel DHCS Pte Ltd
テクニカルマネージャー
DR. KHIN ZAW 氏

Keppel DHCS Pte Ltd

Keppel DHCS Pte Ltd

  • 所在地/1 HarbourFront Avenue #05-05 Keppel Bay Tower Singapore 098632
  • 設立/1998年
  • 事業内容/地域冷暖房施設の開発、施設、運営

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2016 Vol.5(2016年10月発行)に掲載されたものです。

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