月刊「配管技術」2021年6月号

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『生産設備の安定化・保安力強化に貢献するクラウド型バルブ解析診断サービス
<バルブの健全性診断をクラウドで実現する“Dx Valve Cloud Service”>』に関しての記事が月刊「配管技術」に掲載されました。

報道記事:月刊誌「配管技術」 2021年6月号

生産設備の安定化・保安力強化に貢献するクラウド型バルブ解析診断サービス

<バルブの健全性診断をクラウドで実現する“Dx Valve Cloud Service”>

1.はじめに

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記事(イメージ)

IoTやAIの活用が声高に叫ばれる昨今、バルブ診断に関してもIoT化が進み、専用デバイスや診断ツールが各ベンダーから提供されている。その目的は開放検査を実施すること無く、バルブの健全性を知ることで、プラント緊急停止の未然防止や、時間基準保全(Time based Maintenance)から、状態基準保全(Condition Based Maintenance)に移行することにより、バルブの状態に応じた最適な保全計画を立案、実施することである。しかしながらユーザー側では、日常の保全業務の傍ら、それらのデバイスやツールが収集したデータを解析・診断する事は、大きな負担となっている。
プロセス産業においても働き方改革が叫ばれる中、当社では、ユーザーによる解析・診断を不要とし、その目的であるバルブの健全性診断結果を「必要なトキに」「必要なカタチで」「必要なシーンで」で提供し、バルブ異常によるプラント緊急停止を未然に防ぎ、バルブの計画的且つ最適なメンテナンス計画立案をサポートする“Dx※1) Valve Cloud Service”の提供を開始した。

※1 「Dx」は医療分野で「Diagnosis(診断)」の略称として使われており、診断を意味している。バルブの健全性(健康状態)を把握することによって、常にバルブを安全にお使い頂く事をこの言葉に込めている。

2.Dx Valve Cloud Serviceとは

当社が提供するバルブ解析診断サービスは、当社スマート・バルブ・ポジショナ※2) (以下、スマートポジショナ)で計測・演算される調節弁の作動に関わる様々なパラメータを、調節弁メンテナンスサポートシステムValstaffTM (以下、Valstaff)で収集し、Valstaffに蓄積されたバルブ稼働データと、当社ノウハウを組み合わせて複合的に解析し、バルブの健全性を“健康診断” 結果としてユーザーへ提供する。
Dx Valve Cloud Serviceは、このバルブの“健康診断”結果をクラウド環境で利用するサービスである。バルブ稼働データをクラウドに自動送信、解析する事により、ユーザーは「必要なトキに」「必要なカタチで」「必要なシーンで」、診断結果をクラウド環境で確認することができる。従来、日常的にバルブの健全性を確認するには、Valstaffのようなバルブ診断ツールに蓄積するバルブ稼働データを、ユーザーが解析し、異常有無を診断する必要があった。本サービスではユーザーがこのような作業負担無く、バルブ異常の早期発見や、異常進行予測を確認することが可能となり、生産設備の安定化や保安力強化に貢献すると考える(第1図)。

※2 形AVP202、302、307及び形AVP701、702

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第1図(記事より)

3.Dx Valve Cloud Service詳細

Dx Valve Cloud Serviceは、グローブ弁、複座弁、ケージ弁、ダイアフラム弁、偏心軸回転弁、バタフライ弁、ボール弁の計7種類のバルブに対応しており、当社製スマートポジショナを設置することでバルブベンダーを問わず本サービスの提供が可能である。

次に、これらバルブの診断可能事象を以下①~⑦に示す。これらの事象は各種バルブの稼働データを複合的に解析することで、診断している。

① スティックスリップ(固着・かじり)
② 内弁損傷、詰まり
③ ポジショナへの一定入力値に対するハンチング動作
④ 鈍化現象(固着・かじり発生前の不調状態)
⑤ 流体差圧に対する性能不足
⑥ 供給空気圧力不足
⑦ ポジショナ空気回路診断
※④~⑦については、形AVP701、702で対応。

診断結果の確認方法としては、WEBコンテンツにより、総合判定最新(割合)、総合判定推移、診断結果一覧、詳細診断結果を提供している(第2図)。

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第2図(記事より)

総合判定最新(第3図)は全診断台数における最新の各判定割合を示しており、総合判定推移(第4図)は、各判定結果の過去から現在の件数推移を示している。この二つの図で、ユーザーは診断対象となるバルブの全体状況把握と、その推移が一目で確認できる。

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第3図(記事より)
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第4図(記事より)

 診断結果一覧(第5図)は異常傾向にあるバルブを抽出し、プラント内に存在する数百台のバルブの中から、各判定結果「開放推奨」「詳細確認」「経過観察」「良好」を提示し、注視すべきバルブを把握することを可能としている。

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第5図(記事より)

詳細診断結果(第6図及び第7図)は、注視すべきバルブの異常内容が、異常部位、異常開度帯域(形AVP701、702のみ)、異常傾向推移、異常判定データとして示される。これら異常内容を具体的に把握することで、装置運転に対する影響度を推定し、具体的な整備時期や必要交換部品検討を含めたメンテナンス計画が立案可能となる。 

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第6図(記事より)
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第7図(記事より)

4.セキュリティについて

プラントのIoT(Internet of Things)化にとって命題の一つにセキュリティの確保があるが、本サービスでは、守るべき領域(外部からの侵入に対し、制御系を守る)を定め、片方向通信機器、通信事業者の閉域網、ID・パスワード管理で高信頼セキリティを実現している(第8図)。

また、情報セキュリティに関して高い信頼性を確保したクラウドサービスを提供するため、ISMS※3) の国際規格認証を取得した当社組織「クラウド運用センター」で運用・監視している。

※3 ISMSとは、ISO/IEC27001:2013、JIS Q 27001:2014に準拠した情報マネジメントシステムで、社会インフラとして不可欠なITシステムやネットワークを、標的型攻撃やランサムウェアなどによる脅威に対して適切にリスクアセスメントを実施し、企業における総合的な情報セキュリティを確保するしくみのこと。

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第8図(記事より)

5.今後の展望

現在、診断結果を理解するにはバルブに関する専門知識が少なからず必要と感じている。今後、このサービスを広く様々なユーザーに利用頂くために、診断結果をより判り易くするためのWEBコンテンツ充実や、診断結果(特に異常時)のメール通知機能等を充実させることを検討している。また、最近では空気圧センサを搭載したスマート・バルブ・ポジショナ形AVP701、702での診断知見が蓄積されつつあり、より高精度な診断を提供できると確信している。

なお、本サービスは昨年11月に国内展開を開始した。現在は、海外への展開を準備中である。

6.おわりに

世界的に新型コロナウイルス感染症流行が継続している状況下で、本稿を執筆している時点でも、プラントの安全・安心操業維持を目的に、非常に多くの方々が、製造・保全業務に携われており、頭が下がる思いで一杯である。このような厳しい状況の中で本サービスを利用頂く事で、ユーザーの負担を増やすこと無く、生産設 備の安定化・保安力強化に貢献できれば幸いである。

  • HART®は、FieldComm Groupの登録商標です。
  • Valstaffは、アズビル(株)の商標です。

引用元

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