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豆知識

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ダウンフォース

ダウンフォース

ダウンフォースとは、空気の流れによって、物体が下向きに押される力で、主に高速で走行する乗り物の設計に活用されています。例えばF1のレーシングカーでは、車体下面の空気の流れを速くし、上面の空気の流れが遅くなるように設計されています。これにより、空気の速度差によって圧力差が生じるため、下面は低圧に、上面は高圧になります。これはベルヌーイの定理に基づく現象であり、その圧力差によってダウンフォースが生じ、車両が路面に強く押し付けられる状況が意図的に作られ、その結果、スピードを落とさずに安定して走ることができるのです。

レーシングカーに発生するダウンフォースの仕組み レーシングカーに発生するダウンフォースの仕組み

車両が走行する際、空気はその周囲を流れ、流れの中で圧力差が生じます。特に、車体のボディ形状やウイング(翼)などのデザインによって空気の流れが変化し、ダウンフォースが発生します。ダウンフォースが高まると、車両には以下のようなメリットがあります。

① タイヤと路面の接地圧が高まり、グリップ力が向上します。これにより、コーナリング時の安定性が増し、より高い速度で曲がることが可能になります。

② 高速走行時にダウンフォースが働くことで、ブレーキをかけた際の安定性が増し、より短い距離での停止が可能になります。

③ 加速時において、ダウンフォースは後輪にかかる力を増加させ、タイヤのスリップを防ぎます。これにより、より効率的な加速が可能になります。

しかし、ダウンフォースはメリットばかりではありません。ダウンフォースを生み出そうとすると、空気抵抗や路面との抵抗が増加するため、燃費の悪化や最高速度の低下につながる可能性があります。そのため、レーシングカーの設計者は、ダウンフォースと空気抵抗のバランスを考慮しながら車体を設計します。

レーシングカーや高性能車両では、ダウンフォースを調整するために様々な技術が用いられています。例えば、スポーツカーや高性能車に搭載された走行状況に応じて角度や位置が変化するリアウイングのほか、フロントスプリッターやディフューザーといった様々な空力パーツを取り付けることで、走行条件やドライバーの好みに応じてダウンフォースを調整することができます。また、サスペンションの設定や車両の重心位置もダウンフォースに影響を与えます。

ダウンフォースは、自動車の性能を向上させるために欠かせない要素です。特にカーレースなどでは、ダウンフォースの効果を最大限に引き出すことが求められます。適切なダウンフォースを得ることで、操縦性やブレーキング性能が向上し、安全かつ効率的な走行が可能になります。今後も技術の進化により、ダウンフォースの制御や最適化が進むことで、さらなる性能向上が期待されます。その実現には、空気の流れや圧力の変化を正確に捉え、走行状況に応じて最適に制御するための計測・制御の技術がますます重要になっていくでしょう。

(監修:東京理科大学 創域理工学部 教授 野口 昭治 氏)