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豆知識

インバータ制御

インバータ制御

インバータ制御とは、インバータ装置を用いて、電圧と周波数を可変にし、主にモータの回転速度(回る速さ)やトルク(回す力の強さ)を自在に制御するために使われる電力変換技術の一つです。産業用機械や家庭用電化製品、交通システムなど、幅広い分野で活用されています。

インバータ制御の基本的な仕組みは三つのプロセスで構成されています。まず、コンバータを介して交流を直流に変換する整流(Rectification)を行います。整流にはダイオード*1やサイリスタ*2などが使われます。次に整流後の直流は波があるため、コンデンサなどを用いて滑らかな直流にする平滑化(へいかつか:Smoothing)を行います。最後に平滑化された直流を、インバータ回路のトランジスタ(IGBTなど)*3によって高速でオン・オフを繰り返し、任意の周波数や電圧の交流に再変換(Inversion)します。

インバータ制御の基本プロセス インバータ制御の基本プロセス

こうして、任意の周波数・電圧に調整した交流を作ることが、モータを制御する上で鍵となります。なぜなら、モータの回転速度は供給される交流の周波数に比例するからです。つまり、周波数を変えることでモータの回転数を自由に制御できるため、次の三つの利点が得られます。

  1. 省エネルギー
    モータの回転数を機器の負荷に応じて制御することで、過剰な電力を消費することなく、効率的な運転を可能にします。
  2. 柔軟な速度制御
    モータの速度を滑らかに調整できるため、製造ラインや搬送装置などで精密な制御が可能です。また、負荷の変動に応じてリアルタイムで回転数を調整したり、回転数を一定に保ったりするなど高精度な運転も可能です。
  3. 機械の寿命延長
    急激な起動・停止による負荷を軽減できるため、モータや機械全体の負担を減らし、寿命を延ばす効果が期待できます。

インバータ駆動のモータは、工場ではコンベアなどの搬送装置・ポンプ・ファンなどの速度制御に、家庭では、エアコン・冷蔵庫・洗濯機などの電化製品に、そして交通分野では電車・電動車両・エレベータのシステムなどに活用されています。さらに、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーシステムにおいても不可欠です。

従来のインバータ制御では、モータの周波数と電圧を比例的に変えることで回転数を制御しますが、トルク制御の精度が低く応答性も遅いという課題がありました。これを改善するために開発されたベクトル制御*4は、トルクを精密に制御できるのが特徴です。また、回転速度や位置を正確に把握するためのセンサを使わずに、計算などからモータの状態を推定するセンサレス制御など、最近ではこれらの高度なインバータ制御技術が登場し、より高精度で効率的な運転が可能となっています。

  • *1:ダイオード
    電流を一方向にだけ流し、逆流を防ぐ半導体部品。
  • *2:サイリスタ
    主に交流(AC)や直流(DC)回路のオン・オフスイッチとして使われる半導体素子。
  • *3:トランジスタ(IGBT)
    トランジスタは電流を制御する半導体素子の総称で、IGBTはその一種。大電流を扱いやすく、インバータ回路のスイッチとして広く使われる。
  • *4:ベクトル制御
    モータのインバータ制御を高度化するための手法。モータ内部の磁界を座標変換して「d軸(磁束方向)」と「q軸(トルク方向)」に分け、それぞれの電流成分を独立に制御することで、トルク応答や効率を向上させる。
(監修:東京理科大学 創域理工学部 教授 野口 昭治 氏)