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株式会社 ジェイテクト 岡崎工場

コンプレッサ最適制御の技術導入により、生産現場における省エネルギーを大きく加速

持続可能な社会の実現に向けた取組み指針「環境チャレンジ2050」に基づく施策展開を加速させているジェイテクト。同社岡崎工場ではその一環として、生産現場へのエア供給を担うコンプレッサの稼働にかかわる省エネ施策に着手しました。現場のエア使用状況に応じたコンプレッサの台数制御と、必要とされるエア圧力を適正に送出するエア減圧制御の連動により、大幅な電力削減効果を実現しています。

工場・プラント分野 その他(市場・産業) 省エネルギー エネルギーマネジメント コスト削減 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア

カーボンニュートラルの実現へ向け省エネ施策を加速

2006年1月に、軸受(ベアリング)メーカーである光洋精工と工作機械メーカーである豊田工機が合併して誕生した株式会社ジェイテクト。現在では、トヨタグループの一員として「自動車部品」「軸受」「工作機械」の三つの分野を中心に事業を展開しています。

ジェイテクトでは2016年に、持続可能な社会の実現に向けた取組みの指針として「環境チャレンジ2050」を策定。2050年における環境負荷の“極小化”にジェイテクトグループ一丸で取り組んでいくことを明示しました。さらに、CO2排出の“実質ゼロ”、すなわちカーボンニュートラルの実現を具体的目標として掲げ、達成時期についても2035年へと前倒ししています。

その取組みの一環として岡崎工場では2018年に、2004年以来運用してきたガスコージェネレーション※1システムを、より高効率なエンジンに置き換えることを決定。設備の更新にあたり経済産業省の「エネルギー使用合理化等事業者支援事業※2」を活用することとし、エネマネ事業者※3であるアズビル株式会社にサポートを依頼しました。

「アズビルはエネマネ事業者であることに加え、生産現場の省エネルギーに関して、トヨタグループに対しても豊富な実績がありました。今回のガスコージェネレーションシステムの更新に際し、さらなる効果を追求するため、生産設備の省エネルギーについてもアズビルに相談し、提案されたのが、生産活動の中でもとりわけ電力消費の大きいエアの供給を担うコンプレッサの制御でした」(平岩氏)

台数制御とエア減圧制御によりコンプレッサの稼働を最適化

岡崎工場ではこれまで、合計10台のコンプレッサが稼働しており、うちインバータ機2台を含む7台については、省電力を念頭にジェイテクトが独自に構築した台数制御で運用していました。これに対しアズビルは、データ計測用の流量計等を設置して現地調査を実施。コンプレッサの稼働状況を可視化しました。

「インバータ機で負荷に応じた圧力制御ができれば消費電力量を抑えることができるのですが、その現状は単にオン/オフを切り替えている状態で、効率的な制御ができていないことが分かりました」(杉本氏)

こうした状況に対しアズビルは、協調オートメーションシステム Harmonas-DEO™でコンプレッサの台数制御とエア減圧制御を行い、さらにインバータ機の制御を変えて、コンプレッサの稼働と各現場に送出されるエア圧力の最適化を提案しました。これを受け、岡崎工場では、既存のインバータ機以外のコンプレッサについても適宜インバータ機に更新し、制御可能な範囲を大幅に拡大することを決定。運転はしているが負荷がかかっていない無負荷運転時間を低減し、最大効率による運転を実現するための台数制御を導入しました。併せて、系統ごとに末端圧力を計測し、各系統の末端圧力を最小化するエア減圧制御を実施。それぞれに必要な圧力が異なる各生産現場に対し、以前は一律の圧力でエアを送出していましたが、流量を系統ごとに制御することで必要な圧力のエア供給を保証しつつ、各系統の末端の圧力を必要最小限にすることでブローやエア漏れを低減し、高効率化を実現しました。

岡崎工場内に設置されたHarmonas-DEOで、コンプレッサ台数制御、エア減圧制御の状況を確認できる。ここから設定圧力値の変更を行えるため、現場の圧力をどこまで下げられるかなどの取組みも行われている。

岡崎工場内に設置されたHarmonas-DEOで、コンプレッサ台数制御、エア減圧制御の状況を確認できる。ここから設定圧力値の変更を行えるため、現場の圧力をどこまで下げられるかなどの取組みも行われている。

エア減圧制御に用いられ、工場ごとのエアの調節を行う偏心軸回転形調節弁。

エア減圧制御に用いられ、工場ごとのエアの調節を行う偏心軸回転形調節弁。

電力使用量の大幅削減に加え生産ラインの効率的な稼働にも貢献

こうしたきめ細かな制御により岡崎工場では、多大な省エネ効果を実感しています。

「電力原単位で見ると、従来1kWh当たりのエア吐出量が5m³だったものが9m³に高まっており、エネルギーコストの削減効果は月当たり約228万円にものぼっています」(早川氏)

さらに省エネ以外の部分にも、副次的効果がもたらされています。

「既存の台数制御では、休憩時間に無負荷運転状態になるとコンプレッサがオフにされてしまうために、休憩明けに生産ラインの機器が一気に稼働すると、しばらくの間、十分なエア圧力が得られずに生産活動が一時的に停滞してしまうという課題がありました。アズビルの台数制御では、インバータ機の容量調整をうまく制御しており、スムーズに追従してくれるため、コンプレッサが止まることはありません。現場を止めないという意味でもメリットがありました」(𠮷田氏)

「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」についても、こうした一連の取組み実施に先駆けて申請を行い、2019~20年度の事業として採択されています。

「申請手続きに要する煩雑な作業については、経済産業省からの問い合わせへの対応なども含めて、アズビルが窓口となって全面的に支援してくれました。そうした面でも、アズビルをパートナーに迎えたことの意義は大きかったといえます」(野沢氏)

岡崎工場では2019~20年の事業年度終了後も、2021~23年度の3年契約でアズビルのエネルギー管理支援サービスを活用し、構築したエア供給にかかわる仕組みの運用改善を進めています。これに関しアズビルでは、常にリモートから岡崎工場の関連機器の運転データを取得し、随時運転状況についての分析を実施。その結果を岡崎工場に対してレポートしながら、さらなる省エネルギーに向けた運用改善のアドバイスを継続的に行っています。

「現況の適切な把握なしに、改善は望めません。そうした意味で、機器の状況をつぶさに可視化してくれるアズビルのエネルギー支援サービスは、運用改善を目指していく上でまさに不可欠なものだと捉えています。今後、生産技術自体の改善なども含めて、工場全体の省エネルギーをさらに加速させていく予定です。引き続きアズビルには、省エネパートナーとしてしっかりとサポートしていってもらえればと考えています」(加藤氏)

※Harmonas-DEOは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 コージェネレーション

天然ガス、石油、LPガスなどを燃料として、エンジン、タービン、燃料電池などの方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステム。回収した廃熱は、蒸気や温水として、工場の熱源、冷暖房・給湯などに利用でき、高い総合エネルギー効率が実現可能。

※2 エネルギー使用合理化等事業者支援事業

一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)を執行団体とする、事業者の計画した省エネルギーへの取組みに関し「技術の先端性」「省エネルギー効果」「費用対効果」を踏まえて政策的意義が高いと認めた設備導入についての支援を目的とした補助金制度。

※3 エネマネ事業者

SIIに登録されたエネルギー管理支援サービス事業者。工場・事業所において導入された、省エネルギーに付随する設備・システムや、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、エネルギー管理支援サービスを通じて工場・事業所ごとの省エネ事業を支援する役割を担う。

 

お客さま紹介

株式会社 ジェイテクト 岡崎工場 工場長 加藤 靖司
株式会社 ジェイテクト
岡崎工場
工場長
加藤 靖司 氏
株式会社 ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 部長 平岩 正樹 氏
株式会社 ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
部長
平岩 正樹 氏
株式会社 ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 設備管理課 課長 野沢 譲 氏
株式会社 ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
設備管理課
課長
野沢 譲 氏
株式会社 ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 設備管理課 CL 𠮷田 健二 氏
株式会社 ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
設備管理課
CL
𠮷田 健二 氏
株式会社 ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 設備管理課 GL 杉本 亘 氏
株式会社 ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
設備管理課
GL
杉本 亘 氏
株式会社 ジェイテクト 岡崎工場 安全環境推進部 環境室 PEグループ 主担当 早川 隆 氏
株式会社 ジェイテクト
岡崎工場
安全環境推進部
環境室
PEグループ
主担当
早川 隆 氏

株式会社 ジェイテクト 岡崎工場

株式会社 ジェイテクト 岡崎工場

  • 所在地/愛知県岡崎市市場町字桐山8
  • 操業開始/1965年
  • 事業内容/自動車部品、工作機械部品の製造

この記事は2022年12月に掲載されたものです。

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