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関谷醸造株式会社

酒造りの工程に遠隔監視・制御を導入
蔵人の負担を軽減して「人の判断」を支援

「蓬莱泉(ほうらいせん)」ブランドの日本酒の製造・販売で知られる愛知県の関谷醸造。同社では製麹機(せいきくき)用監視・制御システムの老朽化によるリニューアルを実施し、デリケートな温度・湿度の管理が不可欠な酒造りにおける監視・制御を、杜氏(とうじ)や蔵人(くらびと)の自宅でも行える仕組みを実現しました。これにより現場担当者の作業負荷が大幅に軽減しました。

工場・プラント分野 食品 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア

労働環境の改善を念頭に、生産現場の機械化を積極的に推進

関谷醸造のメインブランドのお酒「蓬莱泉 空」。

関谷醸造のメインブランドのお酒「蓬莱泉 空」。

1864年創業、150年の歴史を誇る関谷醸造株式会社は、地元愛知県内のみならず、全国に幅広いファンを持つ「蓬莱泉」ブランドの日本酒の製造・販売で知られる酒造メーカーです。原料の米を自社生産するなど、独自の施策で日本酒の可能性を追求するほか、早くから酒蔵の機械化・自動化にも積極的に取り組んできました。

「以前は新潟から蔵人※1が季節労働者として働きに来て、我々の酒造りを支えてくれていました。しかし時代の流れとともにそのような労働形態は一般的ではなくなり、当社でも20年ほど前から杜氏※2や蔵人など酒造りの中枢を担う人々はすべて従業員として雇用しています。従来の、いわば“昼夜を分かたない”厳しい労働環境の改善を図るべく、様々な現場作業を機械に置き換えていく取組みを進めてきました」(関谷氏)

麹(こうじ)造りや発酵の工程など、酒造りは温度や湿度の管理を細かく行い、適切にコントロールする必要があります。これまで少しずつ温湿度管理の自動化も行ってきましたが、その中で15年以上にわたって稼働させてきた製麹機※3の監視・制御システムの老朽化が、課題として浮上してきました。システム自体が保守切れの状態で、このまま利用するのは難しかったため、システムのリニューアルを検討しました。

「既存ベンダーにリニューアルを委ねるつもりでしたが、たまたま酒造組合の会合で九州の酒造メーカーと話す機会がありました。その会社は当社と同じ酒造業専門ベンダーによるシステムを導入していて、当社同様、老朽化が問題となっていたそうです。その酒造メーカーでは先ごろシステムのリプレースを行い、大きな成果が得られたと聞きました。そのリニューアルを担当したのがアズビル株式会社でした」(関谷氏)

製麹機で造られた麹(米)。

製麹機で造られた麹(米)。

完成した麹と水を発酵タンクに入れ、発酵させて日本酒を造る。

完成した麹と水を発酵タンクに入れ、発酵させて日本酒を造る。

多雪地域ならではの課題も浮上、その解消に向けた提案が決め手

アズビルは関谷醸造の要件を受け、中央監視装置に協調オートメーション・システムHarmonas™を採用した提案を行い、今回の取組みのパートナーとして選ばれました。決め手となったのが、通信回線を使って遠隔からの監視制御が可能であるという点でした。

「この辺は非常に雪深い場所で、商談を進めていたある日、アズビルの営業担当が積雪のため来ることができなかったことがありました。後日、我々も大雪で出勤がままならず困ることがあると話したところ、遠隔監視・制御機能の提案を受けました。大雪で出勤できないケースに限らず、普段でも勤務時間を終えて蔵を離れた後、麹の状態が気にかかることもあります。帰宅してしまうと麹の状況は翌朝になるまで分かりません。その間に温湿度の監視や変更が行えれば・・・と常々感じていました」(荒川氏)

そこで当初、関谷醸造がリニューアルを検討していた機器のほか、2台の製麹機と蔵内に複数ある発酵タンクのコントロールにもHarmonasによる監視・制御を適用することになりました。

「本年度、更新の予定で予算を策定していたのですが、アズビルからの提案により当初予定していた更新範囲を大きく超える規模と、機能面で充実したものを、より低コストで実現することができました」(関谷氏)

生産現場である酒蔵に置かれたHarmonasの監視・制御端末。通信を介して担当者の自宅パソコンからも同様の画面を参照し、必要に応じて操作が行える仕組みが実現されている。

生産現場である酒蔵に置かれたHarmonasの監視・制御端末。通信を介して担当者の自宅パソコンからも同様の画面を参照し、必要に応じて操作が行える仕組みが実現されている。

帰宅後も自宅に居ながらにして監視、必要に応じた制御が可能に

関谷醸造のHarmonasを中核とする遠隔監視のシステムは、2014年10月1日に稼働を開始し、現場の業務改善に大きく貢献しています。酒の銘柄を造り上げるには、天候や原料となる米の作柄に応じた対応など、杜氏を中心とした現場のノウハウに基づいて、きめ細かいコントロールが必要となります。

「麹の発酵具合による機器・タンク内の急激な温湿度変化が予想される日は、本来、一晩中現場に泊まって対応するといったことも必要です。しかし今回導入したシステムのおかげで、帰宅した後でも自宅のパソコンから監視を行い、必要に応じて温湿度や送風をコントロールする操作が行えるようになりました」(荒川氏)

通常は、外部から社内システムにアクセスする際は、セキュリティが切実な課題となります。今回のシステムでは、セキュリティゲートウェイを介したVPN※4による接続を行うなど、万全の対策が施されています。

さらに、Harmonasでは機器の温湿度の状況や制御の履歴などが記録され、万一問題が生じた際のトレーサビリティーの確保や、長期的に蓄積されたデータを生産プロセスの改善に向けた有効な資料として活かすといったことも可能です。

「将来的には、今回の製麹機や発酵タンクのほか、精米機などほかの機器にも遠隔監視の仕組みを適用していきたいと考えています」(荒川氏)

「当社では、酒の原料である米作りをはじめ、農業の分野にも参入しています。例えばハウスの温湿度制御などの自動化で、作物の品質向上を図っていくことも可能でしょう。そうした領域についても、アズビルならではの知見に基づく提案を大いに期待しています」(関谷氏)

用語解説

※1 蔵人(くらびと)

杜氏の下で酒造りに携わる職人。

※2 杜氏(とうじ)

酒造り現場の最高責任者。

※3 製麹機(せいきくき)

米、麦、大豆などの穀物にコウジカビなどの食品発酵に有効なカビ、微生物を繁殖させる機械。内部に温度センサを搭載し、送風機、温度調整機能などが備えられている。

※4 VPN(Virtual Private Network)

仮想的な組織内ネットワーク。あたかも自社ネットワーク内部の通信のように遠隔地の拠点との通信が行える。インターネット上の拠点間を専用線のように接続し、のぞき見や改ざんなどの不正アクセスを防ぎ、安全な通信を可能にする技術。

お客さま紹介

関谷醸造株式会社 代表取締役 関谷 健 氏
関谷醸造株式会社
代表取締役
関谷 健 氏
関谷醸造株式会社 本社蔵杜氏 荒川 貴信 氏
関谷醸造株式会社
本社蔵杜氏
荒川 貴信 氏

関谷醸造株式会社

関谷醸造株式会社

  • 所在地/愛知県北設楽郡設楽町田口字町浦22
  • 創業/1864年
  • 事業内容/酒類製造業(日本酒、焼酎、リキュール)、農業、外食

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2015 Vol.1(2015年02月発行)に掲載されたものです。

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