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小田原ガス株式会社

業界で求められてきた画期的な圧力計を開発
ガス導管工事の安全性と効率化に大きく貢献

神奈川県の2市4町に都市ガスを供給する小田原ガス。同社は、都市ガス事業者6社と一般社団法人 日本ガス協会、アズビル金門との協働で、中圧域から低圧域までのシームレスな測定を可能にするワイドレンジ圧力計を開発し、アズビル金門が製品化しました。さらに小田原ガスは、実際のユーザーとしてワイドレンジ圧力計を活用し、導管工事の迅速化、作業負荷低減などの成果を上げています。

工場・プラント分野 電力・ガス 稼働改善 圧力計(圧力センサ)/差圧計(差圧センサ)

導入製品・サービス

ワイドレンジ圧力計

ワイドレンジ圧力計

業界内で長年求められてきた画期的な圧力計の開発を目指す

1913年に創業し、2013年に100周年を迎えた小田原ガス株式会社。今日では、小田原市をはじめ箱根町、大井町、開成町、二宮町、南足柄市という神奈川県の2市4町において、地域住民の生活や産業活動に不可欠なエネルギーである都市ガスを供給しています。2017年の都市ガス小売り自由化解禁を控え、都市ガス供給を取り巻くビジネス環境の激変が予想される中、同社では「温故創新」をテーマに取組みを進めています。

「自由化後は厳しい価格競争が予想されます。当社では競争に巻き込まれることなく、『温故』の視点でエネルギー事業者としての本分に立ち返った『安定供給と保安の確保』により、ガス本来の価値をお客さまに提供します。その一方で、『創新』の観点で、『小田原ガスでんき』と銘打つ電気の小売りや家電販売など、これまでの事業の枠組みを超えた新たな領域でのビジネス創出にも積極的に取り組んでいきます」(原氏)

特に今回、同社が「創新」というキーワードで打ち出しているチャレンジの姿勢は、小田原ガスが長年培ってきたDNAといえるものであり、新技術開発にも積極的に取り組んできました。その一つが、都市ガス事業者6社と一般社団法人 日本ガス協会、アズビル金門株式会社が取り組んだ、ワイドレンジ圧力計の開発プロジェクトです。

「ガス供給にかかわる中圧導管工事では、管内を流れるガスの圧力を中圧から低圧に下げ、また中圧へ復元するという作業を行います。このとき、中圧域と低圧域に対応した圧力計をそれぞれ1台用意し、工事の途中で圧力計の交換を行うという煩雑な作業が必要です。交換作業が不要で、1台で中圧・低圧の両領域を計測することができる圧力計を求める声が業界内には常にありました。しかし、技術的に困難なものと考えられていました」(大木氏)

特に近年、環境に優しいエネルギーとして天然ガスを主成分とする都市ガスへの転換、地震に強いガス管への交換などへの需要が高まり、中圧導管工事が増加してきました。新しい圧力計への要求はますます切実なものとなり、プロジェクトでは、都市ガス業界が長年求めてきた、中圧用、低圧用といった圧力計の交換がなく、1台で安全かつ効率的に測定できるワイドレンジ圧力計の開発を目指しました。

工事の所要時間を半分に圧縮、作業の安全性向上にも寄与

工場から高圧力で送出された都市ガスを家庭用の供給圧力に変換し、需要家に供給するための設備であるガバナ(整圧器)での検査作業にもワイドレンジ圧力計が活躍。持ち運びに便利なコンパクトな筐体、多様な現場でも視認性の高いバックライトの装備など、使い勝手の良い設計となっている。

工場から高圧力で送出された都市ガスを家庭用の供給圧力に変換し、需要家に供給するための設備であるガバナ(整圧器)での検査作業にもワイドレンジ圧力計が活躍。持ち運びに便利なコンパクトな筐体、多様な現場でも視認性の高いバックライトの装備など、使い勝手の良い設計となっている。

2011年4月に立ち上げられたプロジェクトでは、最初の半年で参画したガス事業者の要求を取りまとめました。それを受けて、100年以上にわたりガスメーターの提供をはじめとしたガス供給の分野を支えてきたアズビル金門が、ノウハウと技術力を総動員して開発を行いました。様々な技術的課題の克服に努めながら、2013年4月にワイドレンジ圧力計が製品としてリリース。早速、小田原ガスでもユーザーとして2台導入しました。

「ワイドレンジ圧力計は、中圧用、低圧用の2個の圧力センサを内蔵し、圧力変化に応じて瞬時にセンサを自動で切り替える仕組みになっています。これ1台あれば中圧域(0~1MPa)から低圧域(0~35kPa)までのシームレスな測定が可能で、工事作業の途中で圧力計を交換するといった手間も不要です。工事の作業時間を半分程度に減らすことができました」(大木氏)

また、ワイドレンジ圧力計は工事における安全性の担保にも貢献しています。中圧の圧力計では低い圧力を測るには限界があります。従来の導管工事では、中圧から低圧に減圧する過程で、その圧力帯に合った圧力計に交換して計測しますが、交換のタイミングでは中圧用圧力計の大きな単位の目盛りの中で、現在の圧力値が10kPa以下であるだろうと判断しなくてはならず、圧力が十分に下がっているかどうか不確定な中で圧力計を交換する必要があります。交換に適正な圧力かどうかは作業者の判断で行っていました。

「そのため、低圧用の圧力計が計測できる圧力に下がっていない段階で交換してしまうこともあり、圧力計が破損するという事態が発生していました。ワイドレンジ圧力計導入後は、中圧から低圧まで機器の交換なく、継続して計測が可能となり圧力計の破損がなくなりました。また、表示もデジタル表示となり、工事担当者は現在の圧力値を瞬時に把握することができるため、機器の交換などを気にせず工事の作業に集中することができます。そういった面でも“事故を発生させないツール”として大いに役立っています」(八田氏)

さらに、ワイドレンジ圧力計で測定したデータは本体に蓄積されています。そのデータをパソコンに取り込み、付属のソフトウェアを使ってトレンドチャートを表示したり、工事報告書などに出力することも可能です。分かりやすく可視化された情報を使って、工事中の圧力変化などの検証が容易な点も、小田原ガスは高く評価しています。

国内のガス事業者76社で採用、ワイドレンジ圧力計が高い評価を獲得

既にワイドレンジ圧力計は業界でも高い評価を獲得しており、国内のガス事業者210社中、76社に採用されています。また、日本ガス協会から2015年度の技術賞を贈呈されるなど、画期的な製品として広く認知されています。

「日本のガス事業の発展に大きな貢献を果たす製品の開発に参画できたことは、当社にとっても誇りです。開発を主導したアズビル金門とは、ガスメーターなどの領域で創業以来の長い付き合いですが、ワイドレンジ圧力計については様々な技術的な困難を乗り越えて製品化を実現したアズビル金門に、心からの敬意を表したいと思います。今後も、当社が都市ガス事業者として地域の皆さまに『快適・安全・安心』をお届けしていく活動を支えてくれるパートナーとして、大いに期待しています」(原氏)

ワイドレンジ圧力計には、圧力計に蓄積されたログデータをパソコンに取り込み、各種レポーティングを支援するソフトウェアが付属。工事にかかわるデータの管理や圧力変化の検証など、幅広く役立てられている。

ワイドレンジ圧力計には、圧力計に蓄積されたログデータをパソコンに取り込み、各種レポーティングを支援するソフトウェアが付属。工事にかかわるデータの管理や圧力変化の検証など、幅広く役立てられている。

客先設備のガス導管で行われた圧力検査のデータを、ワイドレンジ圧力計からパソコンに取り込んで作成されたグラフ。ガスが漏れていないかに合わせて、圧力値の推移を見ることで検査の状況も確認することができる。

客先設備のガス導管で行われた圧力検査のデータを、ワイドレンジ圧力計からパソコンに取り込んで作成されたグラフ。ガスが漏れていないかに合わせて、圧力値の推移を見ることで検査の状況も確認することができる。

お客さま紹介

小田原ガス株式会社
取締役社長
原 正樹 氏
小田原ガス株式会社
営業部
開発グループ
設備開発チーム
課長
大木 健司 氏
小田原ガス株式会社
供給部
供給グループ
建設チーム
係長
八田 直樹 氏

小田原ガス株式会社

小田原ガス株式会社

  • 所在地/神奈川県小田原市扇町1-30-13
  • 創立/1913年6月6日
  • 事業内容/都市ガス(天然ガス)の供給および販売、ガス機器の販売、ガス設備工事、プロパンガスの販売

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2016 Vol.4(2016年08月発行)に掲載されたものです。

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