HOME > 納入事例 > 株式会社荏原製作所 藤沢事業所

株式会社荏原製作所 藤沢事業所

ドライ真空ポンプで求められる小型化をレギュレータブロックの採用で実現

荏原製作所の藤沢事業所では、半導体の製造過程で重要な役割を果たすドライ真空ポンプの開発・生産を行っています。半導体工場の高効率な運営のために、小型化が求められるドライ真空ポンプにアズビルTACOが提案するレギュレータブロックを搭載。その結果、製品の小型化実現に加え、生産におけるリードタイムの大幅な短縮、さらには生産コストの低減といった成果を上げています。

工場・プラント分野 半導体 コスト削減 コントロールバルブ(調節弁)/操作端

半導体の生産性向上に向けて、コンポーネント製品の省スペース化が課題

株式会社荏原製作所は1912年の創業以来、水・空気・電子・エネルギーに「流れ」を創る技術で、時代とともに変化する産業や社会インフラ、そして進化する情報化社会を支えてきました。同社はポンプをはじめ、送風機、冷凍機など、国内生産初となる製品を含め数多くの製品を開発し、社会に供給してきた実績を有しています。現在は、「建設・産業」「エネルギー」「インフラ」「環境」「精密・電子」の五つのカンパニー体制を軸に、国内外の人々の暮らしや産業に必要な製品・サービスを提供し、社会課題の解決や地球環境の維持、改善に貢献する事業活動を展開しています。

近年、特に精密・電子カンパニーは飛躍的な成長を遂げています。同カンパニーは、先端の半導体製造に欠かせないドライ真空ポンプや半導体ウェーハの研磨を行うCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置、排ガス処理装置、オゾン水製造装置などの様々な製品を提供しています。中でもドライ真空ポンプとCMP装置は世界屈指のシェアを誇り、半導体の製造・発展に大きく貢献しています。

「藤沢事業所は、今後さらなる受注の拡大が予想されるドライ真空ポンプの開発に加え、生産拠点として重要な役割を担い、精密・電子カンパニーの躍進を支えています」(米倉氏)

半導体の製造は、半導体製造装置内の真空チャンバと呼ばれる空間内で、成膜やエッチングといった処理を行います。その際、クリーンな真空環境を提供するために欠かせないのがドライ真空ポンプです。同事業所では、これまで自社のドライ真空ポンプにおいて、真空環境を構築しプロセスガスを排ガス処理装置へと排出するためのメカニズムに、アズビルTACO株式会社が提供するレギュレータや圧力計などを個別に採用してきました。

半導体製造の分野では、信号の増幅やスイッチングに使うトランジスタの素子の微細化が、性能向上における重要な差別化要因とされ、各メーカーの微細化に向けた競争が年々加速しています。半導体の微細化のために半導体製造工程はさらに複雑になり、その分、半導体製造装置の種類も数も増えることになります。それに伴い、これらの装置を機能させるドライ真空ポンプの台数もより多く必要となります。加えて、半導体製造工場では、生産性を高めるためにドライ真空ポンプをはじめとするコンポーネント機器を限られたスペースに配置する必要があり、機器を小型にし、スペース効率を向上させることが重要になっています。

「半導体工場内に真空ポンプなどの機器を、いかに効率的に多く導入できるかがメーカー各社の重要な課題となっており、当社のドライ真空ポンプにも、よりコンパクトで省スペースな設計が必要でした」(島田氏)

レギュレータや圧力計などのパーツをブロック化し製品に合わせて提供

省エネルギー・省スペースのドライ真空ポンプ EV-S型の中に組み込まれているレギュレータブロック(右)と配管ブロック(左)

省エネルギー・省スペースのドライ真空ポンプ EV-S型の中に組み込まれているレギュレータブロック(右)と配管ブロック(左)

そのような状況に対し、2008年、アズビルTACOでは、藤沢事業所のドライ真空ポンプの仕様に合わせたソリューションとして、これまで個別に製品に搭載されていたレギュレータや圧力計などのパーツを一体化し、モジュール化した上で一つのブロックとして提供することを提案しました。

「アズビルTACOの提案が可能になれば、当社製品の小型化に向けた実現性が高まるほか、レギュレータや圧力計を個別に組み付ける手間も不要となり、製品の生産に要するリードタイムも短縮されてコスト削減が期待できます。また、配管接続に伴うガス漏れのリスクも低減できるなど、様々な利点が得られると考えました」(島田氏)

同事業所では、アズビルTACOとともに、ドライ真空ポンプへのレギュレータブロックを組み付ける位置や方法、コスト面を含めたブロックの形状や素材について詳細な検討を重ねていきました。

「アズビルTACOは、組み込まれるブロックやニードル弁のテンションの具合など、我々の細かなこだわりに対してもしっかりと耳を傾けてくれて、長期にわたり綿密なチューンアップを施しながら、製品の完成に尽力してくれました」(竹内氏)

その結果、荏原製作所が2003年から提供しているドライ真空ポンプESR型へのレギュレータブロックの搭載が実現。その後も、省エネルギー・省スペースを特徴とするEV-S型やEV-X型などに、アズビルTACOが提供するレギュレータブロックが採用される運びとなりました。

ドライ真空ポンプ内のレギュレータブロック周り構造。

ドライ真空ポンプ内のレギュレータブロック周り構造

レギュレータブロックの搭載が生産効率化に貢献

こうした施策により、荏原製作所では期待通りの成果が得られています。まず、ドライ真空ポンプの小型化が実現したことで、半導体の微細化を追求し、かつ省エネルギー・省スペースを目指す顧客に対して、製品の競争力が向上しました。さらに、製品へのレギュレータや圧力計の組付け、そして配管作業が不要になったことで、生産リードタイムの短縮が実現し、結果として生産コストの削減にもつながっています。

「ドライ真空ポンプの多くの工程で自動化が進んでいるV7棟では、継続して生産性改善に向けた活動が続けられています。今回の複数パーツを統合して開発されたレギュレータについては、省スペース化という機能面だけでなく、生産性の面でも効率化、リードタイム短縮の実現につながっており、とても意義深い成果だったと思います」(米倉氏)

今後も荏原製作所では、アズビルTACOのレギュレータブロックを搭載したドライ真空ポンプの提供を通じて、半導体メーカーのニーズに応えていく考えです。また、さらなる製品の省スペース化や生産現場における効率化の要請に応えるべく、レギュレータブロックの形状や素材の改善によるコスト削減を図るほか、レギュレータ周辺のより広範な機器の統合を目指すなど、アズビルTACOと連携して検討を進めていきたいとしています。

「当事業所では、ドライ真空ポンプやチラーなど、クリーンルームでの工程を支えるサブファブ※1エリア全体の自動化や、機器の故障予知の実現に向けて、中央監視装置との連動を議論し始めています。この試みについては、制御システムの領域において豊富な実績を持ち、高度な知見とノウハウを有するアズビルTACOをはじめとするazbilグループとの協業の可能性を探っていきたいと考えています」(竹内氏)

用語解説

※1 サブファブ

半導体製品を量産する工場のことをファブ(fab)と呼び、サブファブには半導体製造を支える多数の真空ポンプや除害装置などが設置されている。サブファブに設置された装置は、クリーンルーム内の装置のプロセスに必要な清浄な環境を創り出し、製造プロセスで発生した排気ガスや副産物を処理する。

 

お客さま紹介

株式会社荏原製作所 藤沢事業所 精密・電子カンパニー 経営戦略統括部 経営企画部 共創推進課 米倉 潤 氏
株式会社荏原製作所
藤沢事業所
精密・電子カンパニー
経営戦略統括部
経営企画部 共創推進課
米倉 潤 氏
株式会社荏原製作所 藤沢事業所 精密・電子カンパニー コンポーネント事業部 事業企画部 製品企画課 竹内 大輔 氏
株式会社荏原製作所
藤沢事業所
精密・電子カンパニー
コンポーネント事業部
事業企画部 製品企画課
竹内 大輔 氏
株式会社荏原製作所 藤沢事業所 精密・電子カンパニー コンポーネント事業部 真空製品技術部 開発課 島田 聖二 氏
株式会社荏原製作所
藤沢事業所
精密・電子カンパニー
コンポーネント事業部
真空製品技術部 開発課
島田 聖二 氏

株式会社荏原製作所 藤沢事業所

  • 所在地/神奈川県藤沢市本藤沢4-2-1
  • 操業開始/1965年7月
  • 事業内容/標準ポンプ、カスタムポンプ、ドライ真空ポンプなどの開発・加工・製造・組立

この記事は2025年06月に掲載されたものです。

工場・プラント分野の納入事例