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株式会社ジェイテクト 岡崎工場

運用支援サービスの活用により、データに基づく設備運用改善で省CO2を実現

来る2035年をカーボンニュートラルの達成目標に掲げ、CO2排出削減への取組みを加速させるジェイテクト。同社岡崎工場ではその一環として、運用支援サービスを活用したデータに基づく省エネ施策を展開し、生産現場へのエア供給を担うコンプレッサの運用改善に取り組んできました。新たに工場の空調設備にも施策対象エリアを拡大し、確実な省エネルギーとCO2排出量削減の実績を積み上げています。

工場・プラント分野 その他(市場・産業) 省エネルギー エネルギーマネジメント コスト削減 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア 圧力計(圧力センサ)/差圧計(差圧センサ)

CO2排出削減を目指してコンプレッサの運用を改善

株式会社ジェイテクトは、トヨタグループの一員として「自動車部品」「軸受」「工作機械」の分野で事業を展開しており、愛知県にある岡崎工場は、自動車駆動部品の主要製造拠点として重要な役割を担っています。

同社では、環境負荷極小化に向けた取組みである「環境チャレンジ2050」の達成に向け、「環境行動計画」を策定し、5年ごとに更新。カーボンニュートラルについては、2035年の達成を目指したCO2排出量の削減に取り組んでいます。

岡崎工場では2019年に「エネルギー使用合理化等事業者支援事業※1」の採択を受け、エネマネ事業者※2としてアズビル株式会社を選定しました。2020~2024年の4年間で、アズビルが提供するENEOPT™運用支援サービスを活用し、設備機器の稼働状況のモニタリング、設備稼働データの収集、省エネ施策の立案と対策を継続的に推進。毎月提出されるレポートと半年に一度の対面による報告会も活用し、確実な省エネ実績を積み上げてきました。

「ムダをより多く省いて、しっかりと成果を出していくということで、この活動をどんどん加速していくつもりです」(河村氏)

この4年間では、生産設備で利用される圧縮空気(エア)を供給するコンプレッサの運用改善を実施。作る/送る/使うという三つのフェーズで起こるロスの削減に取り組みました。「作るロス」では、それまでコンプレッサ本体に流量計がついていないことから、コンプレッサ単体での効率の実態が把握できていませんでした。そこでアズビルは、流量計の代替として、重回帰分析※3を用いてコンプレッサ単体の効率を可視化。毎月提出する月報でジェイテクトとその数値を共有し、稼働する計10台のコンプレッサのうち、効率の良いものを優先利用する形としました。「送るロス」では、一律の圧力でエアを送出する従来の運用を改め、各製造ラインが必要とする量だけを送る仕組みに変更しました。現場の要求量よりも過剰にエアを送出している場合は、各製造ラインへのエア送出を制御している減圧弁の開度が小さくなることから、減圧弁を常時監視。弁開度が小さいときは、エアを供給するコンプレッサの運転台数を減らしてヘッダ圧力を下げ、できるだけ弁開度を大きくし、現場で必要とされる圧力を維持しながら省エネルギーを図りました。また、「使うロス」では、各製造ラインの末端圧力をできるだけ低く設定しムダを排除しています。

「今まで、コンプレッサの効率はカタログスペックで判断せざるを得ず一番効率が良いのは、ターボコンプレッサだとずっと思っていました。アズビルの月報で、一番効率が良いと思っていたものが、実は一番効率が悪いことが分かり、優先利用の順位を変えるだけで大きな省エネ効果を得ることができました」(杉本氏)

これらの取組みを経て前年比4~6%の省エネ率を積み上げ、4年間で合計16%の省エネ率を達成しました。

空調設備運用を見直し、さらなる省エネルギーを達成

岡崎工場では、コンプレッサに加え、工場の空調設備にも着目し2024年からの3年間で省エネ施策を実施することに決めました。まずは空調機の自動発停機能の追加と、保全室に設置された中央監視装置から監視・制御が行えるようにしました。

「空調設定温度を変えるために今までは空調機が設置された18カ所、全長600mの距離を回っていました。一度設定したものをこまめに変更するかというとなかなか難しいのが現状でした。今は遠隔で簡単に設定変更ができるようになりました」(杉本氏)

この取組みにより、コンプレッサに加えさらなる省エネルギーとCO2削減を実現し、光熱費としても年間800万円を削減しています。

2025年6月から施行された改正労働安全衛生規則により、事業者は熱中症対策の実施が義務化されました。これに伴い、岡崎工場でも夏季の空調はフル稼働していますが、アズビルでは空調の監視画面に不快指数、暑さ指数、絶対湿度を表示し、厳しい夏場の空調運用をサポートしています。

「夏場の室内温度は28℃設定が目安ですが、例えば32℃設定でも湿度が40%であれば、暑さ指数で体感温度は28℃くらいになります。設定温度を上げることができれば大きな省エネルギーにつながります」(𠮷田氏)

また同工場では、コージェネレーション※4システムから排出される蒸気を利用して蒸気吸収式冷凍機を稼働し、空調用冷水の不足分を必要に応じてガス焚冷凍機で補う運用をしています。この運用切換を今まで人が判断してきましたが、次のステップでは、コージェネレーションシステムの排蒸気の優先利用の判断を自動化し、さらなる省エネルギーを進める予定です。

コンプレッサの運用改善を行っている協調オートメーションシステム Harmonas-DEOに空調監視画面を追加。設備の運用状態と併せて不快指数、暑さ指数、絶対湿度を参考に室内温度設定を調整して熱中症対策を実施

コンプレッサの運用改善を行っている協調オートメーションシステム Harmonas-DEO™に空調監視画面を追加。設備の運用状態と併せて不快指数、暑さ指数、絶対湿度を参考に室内温度設定を調整して熱中症対策を実施

空調設備の監視・制御を行うコントローラの計装ネットワークモジュール

空調設備の監視・制御を行うコントローラの計装ネットワークモジュール

収集した設備の稼働データは保全活動でも効果を発揮

稼働状況を見える化したことで、トラブルの早期発見や保全活動にも役立っています。例えば、操業形態が変わらないのになぜか、効率が良かったはずのコンプレッサが止まるべきタイミングで止まらない、一方で供給されるエアが不足しているということを早期に把握することができました。現場を確認したところ三方弁の配管が折れていて、大きな電力を使い続けていることが分かりました。

「通常は1カ月に一度しか点検しない場所だったものを1日で発見し修理したことで、大きなエネルギーロスを回避することができました」(杉本氏)

エア漏れについても、圧力発信器の計測値を基に自動計算でエア漏れ率を算出する仕組みを導入しています。

「エア漏れ率が記載されたアズビルの月報を見ると、エア漏れ対策の結果がきちんと数値として見える化されているので、現場担当者のやる気にもつながっています」(大嶽氏)

「工場内の生産設備の故障対策で、様々な兆候監視・予兆監視に今後はAIなども活用していきたいと考えています」(今泉氏)

岡崎工場では、カーボンニュートラルの達成に向けてさらなる改善活動を継続していく予定です。

「設備が正常に動くことによって、良い製品ができる、不良を出さないということもカーボンニュートラルにつながっていきます。改善活動というのは1回では終わりません。効果を見ていくことが大事で、リアルタイムで改善した結果を確認してPDCAを回していく必要があります。今後もアズビルには継続してさらなる省エネ施策の提案を期待しています」(𠮷田氏)

製造ラインで利用する圧縮空気の圧力を計測する圧力センサ Bravolight

製造ラインで利用する圧縮空気の圧力を計測する圧力センサ Bravolight™

※ENEOPT、Harmonas-DEO、Bravolightは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 エネルギー使用合理化等事業者支援事業

現在の名称は、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業。一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)を執行団体とし、事業者の計画した省エネルギーへの取組みに関し「技術の先端性」「省エネルギー効果」「費用対効果」を踏まえて政策的意義が高いと認めた設備導入についての支援を目的とした補助制度。

※2 エネマネ事業者

SIIに登録されたエネルギー管理支援サービス事業者。工場・事業所において導入された、省エネルギーに付随する設備・システムや、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、エネルギー管理支援サービスを通じて工場・事業所ごとの省エネ事業を支援する役割を担う。

※3 重回帰分析

多変量解析の一つで、1つの「結果」を予測するために、複数の「要因」がそれぞれどの程度影響を与えているのかを明らかにする統計手法。立地や従業員数、広告などの変数が、どのように結果を左右するかを関数の形で数値化し、それを基に将来の予測を行う統計手法である。

※4 コージェネレーション

ガス、石油、LPガスなどを燃料として、エンジン、タービン、燃料電池などの方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステム。回収した廃熱は、蒸気や温水として、工場の熱源、冷暖房・給湯などに利用でき、高い総合エネルギー効率が実現可能。

お客さま紹介

株式会社ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 部長 河村 隆行 氏
株式会社ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
部長
河村 隆行 氏
株式会社ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 主任プロフェッショナル CN・CE戦略室 生産企画プラント・エンジニアリング室 𠮷田 健二氏
株式会社ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
主任プロフェッショナル
CN・CE戦略室
生産企画プラント・エンジニアリング室
𠮷田 健二 氏
株式会社ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 設備管理課 課長 今泉 典成氏
株式会社ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
設備管理課
課長
今泉 典成 氏
株式会社 ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 設備管理課 CL 大嶽 秀之 氏
株式会社 ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
設備管理課
CL
大嶽 秀之 氏
株式会社ジェイテクト 岡崎工場 製造技術部 設備管理課 GL 杉本 亘 氏
株式会社ジェイテクト
岡崎工場
製造技術部
設備管理課
GL
杉本 亘 氏

株式会社ジェイテクト 岡崎工場

  • 所在地/愛知県岡崎市市場町字桐山8
  • 操業開始/1965年
  • 事業内容/自動車部品、工作機械部品の製造

この記事は2025年12月に掲載されたものです。

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