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くらしき流ESCO事業

公共施設の長寿命化に向けた設備改修をESCOサービスの活用で実現

岡山県倉敷市では、国庫補助事業の活用によるESCO事業を展開し、公共施設の長寿命化に向けた老朽化設備の改修と省エネ施策に取り組みました。空調用熱源機器の高効率化、太陽光発電の導入、中央監視システムのBEMS化など、各種施策を三つの建物で実施。厳しい財政状況の中、ESCOサービスを活用した取組みにより、老朽化対策と省エネルギーを同時に実現し、ほかの公共施設への展開も進められています。

建物分野 官公庁建物 その他(市場・産業) 快適 省エネルギー エネルギーマネジメント コスト削減 老朽化対策 中央監視システム 建物のエネルギーマネジメント 総合ビル管理サービス

導入製品・サービス

老朽化した設備の改修に国庫補助事業とESCOを活用

岡山県南部に位置する倉敷市。瀬戸内海に面し、豊かな自然と温暖な気候に恵まれた同市は、山陽道、および瀬戸内海の海上交通における古くからの要衝(ようしょう)であり、現在も瀬戸大橋の本州側の起点として、本州と四国をつなぐ交通上の重要な役割を担っています。江戸時代の風情を残す白壁の蔵や町家の景観と、大原美術館のギリシャ神殿風の威容が調和する美観地区をはじめ、市内には観光資源も豊富で、年間を通して国内外から観光客が訪れます。

今日、全国の自治体では、人口の減少や住民ニーズの多様化に対し、生活に必要なインフラをいかに維持・管理するかという視点に立った取組みが急務となっています。中でも、高度成長期に整備された公共施設の老朽化対策は、自治体にとって非常に切実な課題です。倉敷市は、この課題に対して先進的な取組みを展開してきたことで知られ、同市の企画財政部公有財産活用室を中心に、継続使用すべき施設の長寿命化や総量の適正化などの施策を進めています。

2012年、同市では市民の生涯学習を支える中核施設であるライフパーク倉敷、および消防局倉敷消防署合同庁舎、児島消防署という三つの建物の設備改修を国庫補助事業の活用と併せてESCO事業※1のスキームで展開することを決定。厳しい財政状況の中で、設備の老朽化対応と省エネルギーの実現を同時に目指すことにしました。

空調用熱源設備を高効率化。3施設の遠隔監視も実現

倉敷市は、2012年12月に当事業のESCO事業者の公募を実施。翌2013年2月に、アズビル株式会社をはじめ、倉敷市の市庁舎など公共施設の建物・設備の運用管理にあたっているクラレテクノ株式会社、自動制御設備の工事を担当する日本電技株式会社、ファイナンス部分を担うひろぎんリース株式会社の4社で編成されたコンソーシアムがESCO事業者として決定し、同市初のESCO事業となる案件を受託しました。

「老朽化した設備の改修や自動制御の導入にとどまらず、施策実施後の建物・設備の運用管理を一体化させた提案が高く評価されました」(仲達氏)

倉敷市では、公的な補助事業の活用を前提としたESCO事業の実施を考えていたため、アズビルから提案されたエネルギー使用合理化等事業者支援事業※2への申請を決定。2014年5月に採択され、2014年秋から翌2015年1月末にかけて施工。2015年4月からESCOサービスが開始されました。

主な施策としては、ライフパーク倉敷にBEMS※3としてアズビルの建物管理システム savic-net™FX2を導入。空調用熱源機器の高効率化、太陽光発電設備の新設、誘導灯のLED化といった各種省エネ施策、老朽化対策を建物ごとに実施しました。

ライフパーク倉敷では、建物の竣工当初から空調用熱源としてヒートポンプ式氷蓄熱ユニット3台と吸収式冷温水発生機2台を常時稼働させていましたが、運用を続けていく中で吸収式冷温水発生機のエネルギー源となっているガスの単価が上昇。エネルギーコストの増大が課題となりました。そこで夏季にイベントなどがない通常の日は、単価の高いガスを利用する吸収式冷温水発生機を停止し、単価の安い夜間電力を利用した氷蓄熱のみで冷房を行う運用に切り替えていました。

「多くの人が来館するイベント時など、館内の温度上昇が懸念される際には、オペレータが状況を注視し、必要に応じて吸収式冷温水発生機を追加稼働させるといった運用上の工夫も行ってきました。今回の事業により、氷蓄熱と吸収式冷温水発生機をすべて高効率の空冷ヒートポンプチラー5台に置き換えました。現在では、savic-net FX2が館内の温度状況に応じて、自動的に空冷ヒートポンプチラーの稼働台数を制御し、最適運用を実現しています。運転にかかわる我々の労力も大幅に軽減されました」(岡原氏)

ライフパーク倉敷では、クラレテクノが常駐して建物・設備の運用管理を行っていますが、設備が小規模である消防局倉敷消防署合同庁舎、児島消防署については、クラレテクノが月1回の巡回点検を行っています。

「三つの建物の設備については、すべてアズビルの総合ビル管理サービス BOSS-24™で遠隔監視しています。常駐管理が行われていない二つの施設に関しても、機器異常などの警報が現地機器からセンターに上がった際には、アズビルから我々に通知され、クラレテクノの担当者が速やかに現場に駆け付ける体制が整っています」(岡原氏)

ライフパーク倉敷の中央監視室で稼働するsavic-net FX2と太陽光発電システム。建物内の設備の稼働状況に加え、エネルギー使用量などのデータ収集も可能となった。

ライフパーク倉敷の中央監視室で稼働するsavic-net FX2と太陽光発電システム。建物内の設備の稼働状況に加え、エネルギー使用量などのデータ収集も可能となった。

ライフパーク倉敷の屋上に設置されているソーラーパネル。太陽光発電の導入も今回のESCO事業における目玉施策の一つ。

ライフパーク倉敷の屋上に設置されているソーラーパネル。太陽光発電の導入も今回のESCO事業における目玉施策の一つ。

提案削減量に対し127%の省エネ達成率を実現。ほかの公共施設にも施策を展開

一連の施策の結果、アズビルが倉敷市に企画提案した1次エネルギー削減量を大きく上回る省エネ効果が得られており、達成率は127%に上っています。倉敷市ではこの成果を踏まえ、別の公共施設を対象とした次なるESCO事業にも展開しサービスを開始。引き続きアズビル、クラレテクノを含めた4社のコンソーシアムが同事業を担当し、成果を上げています。そして現在、第三のESCO事業の実施に向けた準備が進められています。

ESCO事業での協業を通じて、アズビルの省エネ提案力やノウハウを間近で感じることができました。アズビルとのパートナーシップを強化できたことは、クラレテクノにとっても大きな成果です。今後も省エネルギーと快適性の両立を目指して倉敷市の施設の運用に携わっていきたいと思います」(仲達氏)

「倉敷市はファシリティマネジメントの施策を加速させるべく、今後も新たなESCO事業に取り組んでいくものと予想されます。これからもアズビルと手を携えながら、公共、民間を問わず、お客さまの省エネルギー、建物の設備や運用管理の拡充にかかわるニーズを満たしていきたいと考えています」(秋田氏)

消防局倉敷消防署合同庁舎(左)と児島消防署(右)。月に1度の巡回点検と遠隔監視を行っている。

消防局倉敷消防署合同庁舎(左)と児島消防署(右)。月に1度の巡回点検と遠隔監視を行っている。

※savic-net、savic-net FX、BOSS-24は、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 ESCO(Energy Service COmpany)事業

工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。資金を顧客が負担し、ESCO事業者が省エネ保証を行う「ギャランティード・セイビングス契約」と、ESCO事業者が資金提供を行い、顧客は省エネ効果を含めたサービス料を支払う「シェアード・セイビングス契約」という二つの契約形態がある。

※2 エネルギー使用合理化等事業者支援事業

環境共創イニシアチブ(SII)が、事業者の計画した省エネルギーへの取組みに関し「技術の先端性」「省エネ効果」「費用対効果」を踏まえて政策的意義が高いと認めた設備導入についての支援を目的とした補助制度。

※3 BEMS(Building Energy Management System)

ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネ監視・制御を自動化し、建物全体の使用エネルギーを最小化するためのシステム。

 

お客さま紹介

クラレテクノ株式会社 ビル管理サービス事業部 副事業部長 企画開発担当 秋田 智 氏
クラレテクノ株式会社
ビル管理サービス事業部
副事業部長
企画開発担当
秋田 智 氏
クラレテクノ株式会社 ビル管理サービス事業部 工務部長 仲達 賢二 氏
クラレテクノ株式会社
ビル管理サービス事業部
工務部長
仲達 賢二 氏
クラレテクノ株式会社 ビル管理サービス事業部 ライフパーク倉敷 所長 岡原 正道 氏
クラレテクノ株式会社
ビル管理サービス事業部
ライフパーク倉敷
所長
岡原 正道 氏

くらしき流ESCO事業

岡山県倉敷市役所 企画財政部公有財産活用室

  • 所在地/倉敷市西中新田640
  • 発足/2011年4月
  • 事業内容/市の公共施設にかかわるファシリティマネジメント

クラレテクノ株式会社

  • 所在地/大阪市北区角田町8-1
  • 設立/1981年4月
  • 事業内容/ビル管理サービス事業 など

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2018 Vol.2(2018年04月発行)に掲載されたものです。

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