建物管理システム savic-net FX
アマリンプラザ
BEMSの導入により、タイの大型複合ビルの設備機器の運転管理や省エネルギーを実現
タイの首都バンコク市内の繁華街、ラチャプラソン地区にあるアマリンプラザでは、独自に推進してきたビルの省エネ施策のさらなる強化を図るため、省エネ先進国である日本の技術を活用した取組みに着手。空調用熱源設備の運転最適化をESCO事業として展開することで、投資リスクを最小化しながら、目標値を大幅に上回る省エネ効果を達成しています。
セミナーで紹介された日本の省エネ技術に感銘
長年にわたって高い経済成長率を維持し、東南アジアにおける代表的な工業国であるタイ。その首都バンコクの中心部に位置するラチャプラソン交差点の周辺エリアは、大型ショッピングモールや高級ホテルが立ち並ぶ、同国きっての繁華街です。アマリンプラザは、1984年、同地区に竣工した22階建ての大型複合ビルです。1階から5階のショッピングモールには衣料や雑貨、食料品、電化製品などの店舗、レストラン、フードコートなどおよそ300店が営業。1日に1万5000~2万人の人々が訪れ、大きなにぎわいを見せています。7階以上はオフィスフロアとなっており、約30の企業が入居しています。
タイでは、急速な経済発展とともにエネルギー需要が急増しており、省エネルギーの推進は、国を挙げての重要なテーマとなっています。アマリンプラザでも、以前から社会的な要請が高まる環境問題への対応、ビル運営にかかわるエネルギーコストの削減などを念頭に、照明のLED化や熱源設備のチラーの高効率化、さらには水のリサイクルといった取組みを進めてきました。
「効果的な省エネルギーの手段を継続的に模索していた中で、公益財団法人地球環境センターがバンコクで実施した建物の省エネルギーに関するセミナーに参加しました。そこで紹介されていた省エネ技術に非常に感銘を受けました。特に、当時タイには普及していなかった“BEMS”※1の仕組みに興味を持ち、すぐにセミナーで省エネ事例を紹介していたアズビル株式会社に詳細を聞きたいと依頼しました」(Wisit Suthatheerarat氏)
期待される省エネ効果に加え、ESCOによる成果保証も評価
アズビルからビルの省エネ技術や方法を紹介され、その有用性に確信を深めたアマリンプラザは、省エネ施策にかかわる提案を依頼。アズビルは現地調査を行い、アマリンプラザにとって最適な省エネ施策をまとめ、ESCO事業※2として展開していく提案をしました。
「施策実施によって期待される多大な効果、ESCOによる成果保証や投資面でのメリットなども併せて評価し、アズビルの提案を受け入れることにしました。省エネルギーに向けた、さらなる取組みの推進に着手できたのです」(Wisit Suthatheerarat氏)
具体的な施策内容としては、新たにBEMSとしてアズビルの建物管理システム savic-net™FXを導入。建物におけるエネルギーの消費動向を可視化するとともに、空調用熱源の冷水、冷却水用ポンプにインバータを設置し、変流量制御を採用しました。熱源設備の最適な運転・制御を実現し、ポンプ消費電力の最適化を図っています。
熱源設備の冷水ヘッダーに設置された差圧・圧力発信器 AT9000 Advanced Transmitter Model GTXがヘッダー差圧を計測。負荷側の冷水要求量に応じてコントローラで冷水ポンプの流量を調節し、省エネルギーを図っている。
中央監視室にBEMSとして導入されているsavic-net FX。
目標値を上回る省エネ率を達成、オペレータの作業負荷軽減にも貢献
工事は2013年10月から2014年3月で行われ、工事完了と時期を同じくしてESCO契約がスタート。新たな省エネ機能を盛り込んだシステムが稼働しました。その成果は、確実に表れています。
「ESCOの契約では、今回の施策対象となったポンプの消費電力について、40%削減を目標値としていましたが、実際には50~60%の削減を実現することができました。ビル全体でも年間約4%のエネルギー削減を見込んでいます」(Wisit Suthatheerarat氏)
「BEMSの導入によって、中央監視システムでの監視・制御が行えるようになったのも大きな成果です。これまでは、各機器が設置された現場でオペレータが手動で空調設備のオン/オフを行っていました。今はsavic-net FXの画面上で操作できるようになり、現場スタッフの作業負荷も大きく軽減されました」(Pisan Chinnawong氏)
さらにBEMSで設備の稼働状況が可視化されたことによる効果もあったといいます。あるとき、省エネ効果が十分に得られていないことが分かり、BEMSに記録されたデータを分析した結果、原因は冷却塔の能力低下でした。同設備の清掃を行い能力を回復させ、事なきを得ました。
今回の省エネ施策は、ラチャプラソン地区でショッピングモールやホテルを経営するオーナーのコミュニティでも大きな注目を集めています。
「アズビルとともにセミナーを企画し、アマリンプラザの取組みをエリアの皆さまにも紹介しました。この取組みに興味を持ち、自社施設の省エネ対策についてアズビルに相談している経営者もいます」(Wisit Suthatheerarat氏)
今後もアマリンプラザでは、さらなる省エネルギーに取り組んでいきます。
「現段階ではBEMSによる監視対象も空調用熱源設備に限られていますが、今後はビル全体へと広げ、より広範な視点でエネルギーの消費動向の監視を行いたいと思います」(Pisan Chinnawong氏)
「アズビルには、日本企業ならではのきめ細かな対応により、我々の取組みを今後もしっかりと支えてくれることを大いに期待しています」(Wisit Suthatheerarat氏)
アマリンプラザの中央監視システムトップ画面には、現在のCO2削減量が表示されている。
熱源系統図では、複数台ある冷水・冷却水ポンプの稼働状況、回転数、現在の消費電力量などが一目で確認できるようになっている。
※savic-netはアズビル株式会社の商標です。
用語解説
※1 BEMS(Building Energy Management System)
ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネルギー監視・制御を自動化し、建物全体のエネルギーを最小化するためのシステム。
※2 ESCO(Energy Service COmpany)事業
工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービス提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。国内では、資金の担保などを顧客が提供し、顧客が一切の償還義務を負う「ギャランティード・セイビングス契約」と、ESCO事業者が一切の資金提供を行い、顧客が償還義務を負わない「シェアード・セイビングス契約」のいずれかの契約形態を取ることが一般的である。
お客さま紹介
副社長
資産管理担当
Wisit Suthatheerarat 氏
資産管理部
上級技術主任
Pisan Chinnawong 氏
アマリンプラザ
Amarin Ratchaprasong Co., Ltd
- 所在地/7th FL., Amarin Plaza 496-502 Ploenchit Rd., Lumpini, Pathumwan, Bangkok 10330
- 竣工/1984年
- 事業内容/ショッピングモール、オフィスビルの運営
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2015 Vol.4(2015年08月発行)に掲載されたものです。