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タカナシ乳業株式会社 北海道工場

燃料転換を機に国庫補助事業による省エネ施策を実施、エネマネ事業者を活用し補助率1/2を実現

タカナシ乳業 北海道工場では、ボイラ設備の更新および重油からLNG(液化天然ガス)への燃料転換事業を行うにあたり、省エネ事業を助成する経済産業省の「エネルギー使用合理化等事業者支援事業(エネ合補助金)」を活用、設備更新と同時にさらにエネマネ事業者としてアズビルを採用することで、通常の補助率1/3を1/2に引き上げることができました。EMSを導入し、インバータなどによる電気系の制御に比べ、技術的に難易度が高い蒸気圧の減圧制御を実施し、年間削減目標値の5割以上を5カ月間で達成しました。

工場・プラント分野 食品 省エネルギー エネルギーマネジメント 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア

重油からLNGへの燃料転換で設備の高効率化と地球温暖化対策へ貢献

タカナシ乳業が販売する製品群。

タカナシ乳業が販売する製品群。

タカナシ乳業株式会社 北海道工場が立地する北海道厚岸(あっけし)郡浜中町は道内でも有数の酪農地帯です。北海道工場は1982年に操業を開始し、生乳から脱脂粉乳、チーズ、生クリームなど、その土地の特長を活かした製品を生産する一方、自社工場に原料を供給する役割も担っています。

北海道工場が設備更新時期を控え、同社技術部ではボイラなどの設備を更新して高効率化を図るとともに、コスト削減および地球温暖化対策に対応するため、重油からLNGへの燃料転換を行うことを模索していました。

そんな折、同社では2015年4月に釧路にLNG基地が開設されることを知り、燃料転換の事業化の検討に入りました。燃料転換に伴い、大きなコストを投入して北海道工場敷地内にLNGのサテライト基地を建設する必要があります。そこで、省エネ事業を助成する経済産業省の平成27~28年度 エネルギー使用合理化等事業者支援事業※1(エネ合補助金)を活用することを決定。さらに、同補助事業のエネマネ事業者を活用することで補助率が1/3から1/2に引き上げられる施策を活用することにしました。タカナシ乳業では、エネマネ事業者としてアズビル株式会社を選定しました。

「アズビルとは、工場への制御機器やシステムの導入を通じて30年来のお付き合いがあり、そうした中で醸成された信頼感がありました。補助事業に関しては事前に情報収集していましたが、いざ申請作業に着手すると詳細な提出書類を作成するのに、大変な苦労をしました。また通常は半年以上要するといわれる準備期間も締切りまでに約3カ月しかなく、アズビルと議論を重ね、アドバイスをもらい、現場の意見も取り入れながら、急ピッチで申請作業を進めました」(菊地氏)

エネマネ事業者のノウハウを活用し、蒸気圧減圧制御で成果を上げる

EMSとして導入されたHarmonas-DEO。EMSを導入することで、北海道工場はもちろんのこと、本社からも工場のエネルギー使用状況や制御の状況を把握することができる。

EMSとして導入されたHarmonas-DEO。EMSを導入することで、北海道工場はもちろんのこと、本社からも工場のエネルギー使用状況や制御の状況を把握することができる。

タカナシ乳業では、これまでも省エネ活動には実績がありました。北海道工場でも取組みが進んでいた中、アズビルから提案されたのはEMS(エネルギー・マネジメント・システム)となるアズビルの協調オートメーションシステムHarmonas-DEO™の導入による蒸気圧の減圧制御でした。

「蒸気の省エネルギーというと、排熱を回収しボイラに供給する水の温度を上げ、ボイラ効率を上げる方式が一般的です。この方式はタカナシ乳業でも既に取り組んだ内容でした。アズビルの提案は系統ごとに圧力を計測し、現場側の要求必要量までヘッダーの圧力を下げる方式であり、今までに取り組んだことがないものでした」(菊地氏)

北海道工場では蒸気の熱により、生乳の加熱や濃縮、脱脂粉乳の製造などを行っています。脱脂粉乳の製造工程では乾燥炉など熱利用が欠かせず、ほかの工場に比べて多くの熱エネルギーを使用しています。ボイラで作られた蒸気は設備系統に送られ、従来は加熱処理などの系統ごとに減圧し、温度を調節する設備に供給していました。しかし、蒸気を送る配管は長い距離にわたって敷設されるため、放熱ロスが大きくなります。そこで放熱ロスを減らすことに着目し、系統に分岐する前の主管の大本にバルブを設置。EMSを活用して圧力・流量を自動制御し放熱量を抑え、省エネルギーを図ることになりました。

蒸気圧の減圧制御は電気系の制御に比べ、技術的に難易度が高く、圧力を下げれば一律にエネルギーを削減できるわけではありません。アズビルが提案する省エネ施策の蒸気圧減圧制御を採用し、補助事業に申請したところ「技術の先端性」が評価されました。

5カ月間の削減量が年間削減目標値の5割以上を達成

北海道工場内に新設されたLNGサテライト基地。

北海道工場内に新設されたLNGサテライト基地。

2015年8月に補助事業の採択が決定。設備工事へ向けて準備を開始しました。

「北海道工場は自社工場へ原料を供給する役割を担っているため、24時間365日製造を行っている工場です。そこで製造ラインを長時間止めることなく工事のスケジュールを組むことに苦労しました」(福田氏)

工程を一部の製造ラインに集約する、設備を小刻みに止めるなど工事の時間をやりくりし、既存設備のシステム・制御系の施工を担当した日本電技株式会社とともに昼夜を問わず工事は進められました。

そして、2016年末に燃料転換、蒸気圧減圧に付帯するすべての設備工事が完了。エネルギー削減量は順調に推移し、2017年4月から8月までの5カ月間の実績は、年間削減目標値の5割以上を達成しています。また、当補助事業の要件になっているエネマネ事業者による3年間のエネルギー管理支援サービスについても、1月からスタートしました。

「EMSや蒸気圧減圧制御を新たに導入しましたが、工場としてのオペレーションは何も変わらず、負担を感じることなく省エネ成果が出せています。さらに今まで把握できなかった蒸気使用量や過去の蓄積データが見える化され、設備の管理がしやすくなりました。例えば不具合が発生した際も、そうしたデータや使用状況からすぐに原因を特定することができます。また、アズビルが定期的に配管を巡回点検し、放熱、スチームトラップ、エア漏れなどを診断するサービスも大いに助かっています」(福田氏)

「当初、蒸気圧減圧制御による省エネ施策を提案いただいたときには、正直、減圧だけで省エネ効果があるのかと思いましたが、我々の引出しにない省エネ手法を教えていただき、省エネルギーの間口が広がりました。北海道工場は熱利用が多く、また今後は排熱利用を中心にさらに省エネルギーを進めていきたいと思います。アズビルには引き続きエネルギー診断サービスで今後の改善点につながるポイントを見つけていただくとともに、さらなる省エネ提案を大いに期待しています」(菊地氏)

※ Harmonas-DEOは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 エネルギー使用合理化等事業者支援事業

民間事業者等による省エネ設備・技術等を導入する事業に対して「技術の先端性」「省エネルギー効果・電力ピーク対策効果」「費用対効果」を踏まえて政策的意義が高いと認められたものに支援を行う経済産業省の補助制度。補助率1/3と1/2があり、補助率1/2の交付要件は、エネマネ事業者を活用し、EMSで省エネ率1%以上か、原油換算500kl以上の削減を行い、省エネ設備とEMSで合計省エネ率10%以上か、原油換算1,200kl以上の削減を達成すること。2017年度からは、EMS単独で省エネ率2%以上の削減を実施すれば補助率1/2になる。省エネ設備は、省エネ率1%以上か、原油換算1,000kl以上の削減ができれば、省エネ設備も補助率1/2になる。

 

お客さま紹介

タカナシ乳業株式会社 技術部 部長 菊地 勇二 氏
タカナシ乳業株式会社
技術部
部長
菊地 勇二 氏
タカナシ乳業株式会社 生産部 北海道工場 製造一課 課長 福田 桂祐 氏
タカナシ乳業株式会社
生産部
北海道工場
製造一課
課長
福田 桂祐 氏

タカナシ乳業株式会社 北海道工場

タカナシ乳業株式会社

  • 所在地/神奈川県横浜市旭区本宿町5
  • 設立/1950年4月13日
  • 事業内容/牛乳・アイスクリーム・生クリーム・ヨーグルトなど乳製品全般の製造ならびに販売

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2018 Vol.2(2018年04月発行)に掲載されたものです。

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