天王洲エリアサービス株式会社
地域冷暖房プラントの省エネ推進とBCPを強化、最新技術で運用効率の最大化を目指す
東京・天王洲アイルで地域冷暖房プラントを運営する天王洲エリアサービスは、1991年の稼働開始から30年以上使用してきたプラント設備の老朽化に対応し、中でも運転管理にかかわる中央監視システムや計測機器などの計装設備のリニューアルを実施しました。中央監視システムの更新をはじめ、省エネルギーの実現や事業継続計画(BCP)強化を目的とした取組みを推進。デジタルツインの活用により、冷凍機や冷却塔などの運転を最適化し、エネルギー効率を最大限に高める環境を構築しました。

工場・プラント分野 その他(市場・産業) 省エネルギー エネルギーマネジメント メンテナンスサポート 運転監視・制御システム&ソフトウェア 調節計(温調計)/記録計
中央監視システムを含む設備を更新、運用効率化とBCP強化が焦点に
JR品川駅から東南へ約1km、周囲を運河に囲まれた約20haの地域「天王洲アイル」。都心や羽田空港へ直結という高い利便性に加え、ウォーターフロントならではの環境を活かしながら、オフィスビルを中心としたビジネス施設の整備と、人に優しい街づくりが進められています。
天王洲エリアサービス株式会社は、地域冷暖房※1プラントを運営し、空調用の熱媒体となる冷水や蒸気をつくり、オフィスビルや劇場、ホテル、駅を含むエリア内14カ所の建物に熱(冷熱・温熱)を供給しています。
「30年以上にわたり地域冷暖房プラントを稼働させる中で老朽化が進み、メンテナンスに必要な部品の調達も難しくなっていました。そこで2022年ごろ、中央監視システムを含む設備のリニューアルを決断しました」(板倉氏)
「老朽化対応にとどまらず、オペレータの裁量に委ねられていた運転計画や運転操作の標準化を図るとともに、省エネルギーやBCP※2推進も行いたいと考えました」(村松氏)
24時間先までの最適な運転計画を提示、システムがオペレータにガイダンス
天王洲エリアサービスではプラントの運転管理に関する部分について、計装設備やエンジニアリングサービスを提供する事業者に依頼し、競争入札を実施。その結果、プラントを監視・制御する協調オートメーションシステム Harmonas-DEO™と、熱源機器の最適運用についてガイダンスを行う熱源設備/動力プラント全体最適化パッケージU-OPT™を提案したアズビル株式会社が採用されました。
「1991年のプラント稼働開始以来、アズビルの中央監視システムを継続的に採用しており、当社の設備運営を最もよく理解していることが採用の決め手でした」(板倉氏)
「工事期間中は中央監視システムの置換えにより、一時的に設備が無監視になるリスクがありました。それに対して、アズビルは地域冷暖房プラントにおける豊富な経験を活かし、ダウンタイムを最小化する切換え工程を提示してくれました」(村松氏)
更新工事は2024年3月に着工。14カ所の受入設備計量盤※3を順次更新し、12月には2週間にわたって新旧中央監視システムが共存できる環境をつくり、事前準備をしっかり行った上で熱供給を止めることなく切換えを完了しました。
同プラントでは、需要家の要求量に応じて滞りなく熱供給するために、イベント開催やオフィス稼働状況に加え、外気条件や気象情報を考慮した地域冷暖房プラントの運転が求められます。これを支援するため、10台の冷凍機に対して、省エネ・省コストに向けた最適運転のガイダンスを提供するU-OPTを中央監視システムの更新と併せて導入しました。
「安定供給を重視するあまり、オペレータは冷凍機を早めに立ち上げる傾向があります。安全側に寄りすぎるとどうしてもエネルギーを無駄に使用してしまうことになります」(村松氏)
U-OPTは省エネルギーの観点から冷凍機の起動・停止タイミングを判断し、24時間先まで30分単位で運転計画を提示。オペレータは、提示された運転計画を見ながら最適運転を行っています。
「U-OPTの導入により操業の状態が可視化され、改善点を議論できるようになりました。現在もチューニングを重ね、最適化演算のブラッシュアップを継続しているところです」(板倉氏)
さらに、地下に設置されたU-OPTのサーバを二重化するとともに、天王洲エリアサービスの本社がある建物の15階にもミラーリングされたサーバを設置しました。
「当施設では、南海トラフ地震などによる津波を想定した高潮対策を行っています。BCPの観点からも浸水の懸念がない15階にミラーサーバを設置する対応をとりました」(村松氏)
電動ターボ冷凍機。ここで作られた冷水が導管を通って需要家に供給される
需要家側に設置してある受入設備計量盤に取り付けられたグラフィカル調節計 形 C7G。冷水や蒸気の流量、熱量、圧力を調節する
U-OPTのモニタ画面。冷凍機の最適化運転ガイダンスを24時間先まで30分単位で提示する
地域熱供給プラントの監視・制御を行うHarmonas-DEO。55インチの大型モニタを導入し、監視画面に加え、気象情報や防犯カメラの映像なども同一の画面に表示し、オペレータ全員が一目で状況を把握できる環境を整えた
デジタルツインを活用し、冷却水系機器の最適運用を実現
天王洲エリアサービスでは、省エネ運転の実現に向けて、冷凍機の冷却水系機器の運転を最適化する仕組みも併せて導入しました。地域冷暖房プラントでは、冷却塔の電力を抑えることができれば、省エネ効果が期待できます。
設定した冷却水温度を超えた場合に冷却塔のファンを回して冷却しますが、外気条件によってはファンを回さなくてもよい場合があるため、この温度設定は非常に重要です。冷却水温度の設定値を最適な数値にすることに加えて、冷凍機と冷却塔の稼働を最適化することで、エネルギー消費量のさらなる削減が可能です。
「冷却塔ファンを使って冷却水を冷やし、冷凍機の効率を上げた方がよいのか、それとも冷却塔ファンの電力を抑えて冷却水をあまり冷やさずに、冷凍機の効率を少し犠牲にした方がよいのか、双方の加減のいいところを演算で導き出すのは、人の手による計算では非常に困難です」(村松氏)
これに対してアズビルは、冷却水最適化システムを提供し、冷凍機や冷却水ポンプ、冷却塔といった冷却水系の機器の運転データを基に、仮想空間で同じ環境を再現するデジタルツイン※4を用いて最適演算を行っています。冷却水の設定温度に加え、エネルギー効率を最大化する最適な運転方法を導き出し、10分単位でガイダンスを提示。オペレータはこのガイダンスを参考に運転を行っています。特に中間期に効果が大きく、2025年5月には冷却塔の消費電力を約5%削減することができました。
「今回導入したシステムにより、新人オペレータでも短期間で運転を任せられるようになれば、人手不足の問題も解決できます。オペレータの個人差がない運転ができるようになることを期待しています」(外薗氏)
「さらに将来に向けて、当社では天王洲エリアの立地条件を活かし、風力発電や太陽光発電を取り入れ、電力エネルギーの地産地消を実現する構想も描いています。今後のビジョンに関しても、アズビルの技術力を活かした協力を引き続き期待しています」(板倉氏)
※Harmonas-DEO、U-OPTは、アズビル株式会社の商標です。
用語解説
※1 地域冷暖房
一定地域内の建物群に集中管理された熱供給設備(プラント)から冷水、温水、蒸気を地下の地域導管を通して供給し、建物内の冷房、暖房、給湯などを行う仕組み。需要家(ビルや施設などの利用者)側で熱源設備を持つ必要がなく、省エネルギーや環境負荷低減の効果が期待できる。
※2 BCP(Business Continuity Plan)
企業が災害や事故などの緊急事態に直面した際でも、重要な業務を継続できるようにするための事業継続計画。これにより、業務の中断を最小限に抑え、迅速に復旧することが容易になる。
※3 受入設備計量盤
地域冷暖房やエネルギー供給システムにおいて、需要家(ビルや施設などの利用者側)に設置された制御盤。熱量計、コントロール弁を制御するための調節計などの制御装置が組み込まれている。
※4 デジタルツイン(Digital Twin)
IoTの仕組みなどを通じて収集した情報に基づき、現実にある物理空間の“双子”となる環境をデジタルの仮想空間内に再現する技術。リアルタイムで様々なシミュレーションや分析を行うことができる。
お客さま紹介

代表取締役
社長
板倉 孝 氏

技術部
部長
村松 雅彦 氏

総務・経理部
部長
外薗(ほかぞの) 信幸 氏
天王洲エリアサービス株式会社

- 所在地/東京都品川区東品川2-2-4 天王洲ファーストタワー15F
- 設立/1988年12月
- 事業内容/天王洲アイル全域への熱供給
この記事は2026年01月に掲載されたものです。







































































































