The Okura Prestige Bangkok
空調熱源設備の省エネ施策をESCO事業で展開、環境にやさしい建物づくりをスタッフとともに実現
タイの大手財閥TCCグループの一員として不動産事業を担うAWCでは、「Building Better Future For All」という企業理念の下、バンコク市内で運営するオークラ プレステージバンコクにおいて、省エネ施策をESCO事業として展開しています。空調熱源設備のインバータ制御やBEMSの導入を通じて、着実な省エネ効果を実現。その成果を社内で共有することで、スタッフ一人ひとりの省エネ意識の醸成にもつなげています。

建物分野 ホテル 省エネルギー エネルギーマネジメント 中央監視システム 建物のエネルギーマネジメント
導入製品・サービス
環境に配慮した企業理念を掲げ、持続可能なホテル経営を推進
オークラ プレステージバンコク(The Okura Prestige Bangkok)を所有・運営するAsset World Corporation Public Company Limited(アセット・ワールド・コーポレーション、以下、AWC)は、タイの大手財閥Thai Charoen Corporation(TCC)グループの一員として、不動産事業を担っており、タイ国内の7カ所の観光地で、24以上のホテルを展開しているほか、商業施設なども多数保有しています。
「AWCが所有するこれらの建物は、『Building Better Future For All』という企業理念に基づいて運営されています。スタッフ一人ひとりが地球市民としての意識を持ち、SDGs※1の目標にも沿った、環境にやさしい建物づくりに向けて、全社を挙げた取組みが進められています」(Soammaphat Traisorat氏)
オークラ プレステージバンコクは、こうした企業理念の下、AWCがバンコク市内で運営する高級ホテルの一つとして2012年に開業しました。バンコク中心部に位置する地上34階建ての複合施設「Park Ventures Ecoplex」の低層階(1~3階)と高層階(23~34階)に入居しています。
「ホテルは240室の客室数を誇り、レストランやフィットネスセンター、スパ、プールに加え、会議室や宴会スペースなどの設備も充実しています。飲食、宿泊合わせて、1日平均約650名、年間で約237,000名もの人々が国内外から当ホテルを訪れています」(Niek Hammer氏)
省エネ施策の豊富な実績に加え、自社所有ホテルでの成功事例も
オークラ プレステージバンコクでは、ホテルという業態上、24時間稼働している空調が、エネルギー消費の大きな割合を占めています。ホテルを運営していく中で、エネルギーが過剰に使われている部分を見つけ出して対策を講じるため、ESCO事業※2を導入して省エネ対策に取り組むことになりました。2022年末にパートナー選定に向けた入札を実施。その結果、AWCがESCO事業者として選定したのがアズビル株式会社でした。
「応札した各社の損益(P&L)データや過去の実績、取組み事例についても精査しました。アズビルは、企業としての安定性はもちろん、省エネルギーの実績の豊富さにおいても他社を大きく上回っています。何よりも過去に実施したAWC所有のホテルの省エネ施策でも確実に結果を出しており、多大な成果を上げてきたことを高く評価しました」(Soammaphat Traisorat氏)
オークラ プレステージバンコクでは、アズビルとの間でESCO事業契約を2023年5月に締結。アズビルは同年の12月に関連設備の工事を完了し、2024年1月からESCO事業としてのサービスを開始しました。
今回、アズビルの提案により導入された施策は、空調の熱源設備周りの一次ポンプ、二次ポンプ、および冷却塔の冷却水ポンプにおけるインバータ制御です。空調の需要に応じて冷水や冷却水の流量を制御し、省エネルギーを図ります。併せて、これら機器の運転データを管理するBEMS※3として、アズビルの建物管理システム savic-net™G5も導入しました。なお、今回のESCO事業はシェアード・セイビングス契約で展開されており、設備については、協業実績のある芙蓉総合リース株式会社の海外グループ会社であるFuyo General Lease (Thailand) Co., LTD.が所有・管理し、AWCに貸与する形がとられています。
空調熱源設備の冷水1次ポンプ(左)と需要に応じたポンプの回転数を制御するインバータ(右)
空調熱源設備の冷却塔へ冷却水を送るポンプ(下)と需要に応じたポンプの回転数を制御するインバータ(上)
省エネ施策を開始してから1年で達成率 約120%の削減効果を実現
ESCO事業のサービス開始後、成果は確実に上がってきています。1年目となる2024年には、契約上での保証削減量 約49万kWhに対し、およそ60万kWhの電力削減を達成。年間での目標達成率は約120%となりました。
「アズビルは契約で定めた目標に対して、常にその目標を上回る成果を出してくれています。私の期待を大きく超えてくれました。アズビルは正確で具体的なデータ収集を行い、月次レポートも提供してくれており、これを基にパフォーマンスレビューを実施して、新たな課題の検討に役立てています。また、具体的な数値を社内に公開して、省エネ施策の効果を全社員で共有することで、さらなる省エネ推進に向けての意識の醸成にもつなげています」(Niek Hammer氏)
「アズビルのような優れた知見やノウハウを持っている専門家が入ることで、確実にエネルギーを削減することができます。アズビルタイランド株式会社を通じたアズビルの顧客サービスは非常に迅速であり、問題が発生した際には、即座に連絡を取り合い、必要な対処を直ちに行います。そうした中で、信頼関係が強化され、新たな改善に向けた施策も互いに信頼感をもって推進していける体制が整ってきていると考えています」(Soammaphat Traisorat氏)
「システムを導入した後も、アズビルはしっかりとフォローアップやアフターケアをしてくれるので、現場としてとても安心感があります。インバータの調整なども含め、スタッフがいつでもサポートを受けられる体制が整っています」(Kittichai Chumnanruksa氏)
今回のESCO契約では、2031年末までの8年間が省エネ保証期間となります。その間、オークラ プレステージバンコクでは、アズビル、そしてアズビルタイランドと密接に連携しながら、引き続きさらなる省エネ効果の実現に向けて取組みを進めていきます。
「まだ手付かずの領域もたくさんあります。ホテルを利用される方のゲスト体験を損なわずに温度管理をするなど、アズビルと協力してさらなる省エネルギーの実現を目指していきたいです」(Niek Hammer氏)
「アズビルとは、このような長期的なパートナーシップを、今後も何年にもわたって維持していきたいと思っています。省エネ領域の専門事業者としての視点から、今後も常に創造的なアイデアを我々にもたらしてくれることを、大いに期待しています」(Soammaphat Traisorat氏)
空調熱源設備の稼働状況を監視するsavic-net G5。データを収集して省エネ対策が必要な個所を特定したり、施策実施の効果を確認することができる
※savic-netは、アズビル株式会社の商標です。
用語解説
※1 SDGs(Sustainable Development Goals)
2015年の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標のこと。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17のゴールと169のターゲットが示されている。
※2 ESCO(Energy Service Company)事業
工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。資金を顧客が負担し、ESCO事業者が省エネ保証を行う「ギャランティード・セイビングス契約」と、ESCO事業者が資金提供を行い、顧客は省エネ効果を含めたサービス料を支払う「シェアード・セイビングス契約」という二つの契約形態がある。
※3 BEMS(Building Energy Management System)
ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネルギー監視・制御を自動化し、建物全体のエネルギーを最小化するためのシステム。
お客さま紹介

Asset World Corporation Public Company Limited
Director, Corporate Governance and
Sustainability Committee
Soammaphat Traisorat氏

General Manager
Niek Hammer氏

Chief Engineer
Kittichai Chumnanruksa氏
The Okura Prestige Bangkok

- 所在地/Park Ventures Ecoplex, 57 Wireless Road, Bangkok 10330, Thailand
- 開業/2012年5月14日
- 施設内容/ホテル、レストラン、会議場・宴会場など
この記事は2025年12月に掲載されたものです。



































































