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新江ノ島水族館

海洋生物の飼育環境を維持しながら
エネルギー可視化による省エネルギーを実現

2004年にリニューアルオープンした新江ノ島水族館は、イルカショーや幻想的なクラゲの展示、相模湾の生態系を再現した大型水槽などで数多くの来館者を集める、本格的なエデュテインメント型水族館です。省エネ推進が課題となっていた同水族館では、ESCO事業により設備の詳細な運転状況を集中管理し、運用データの可視化をベースとした各種施策を展開。目標値の2倍を超える結果を達成し、継続的に維持しています。

建物分野 レジャー施設 その他(市場・産業) 省エネルギー 安定稼働 中央監視システム センサ・計測機器 建物のエネルギーマネジメント

導入製品・サービス

ビルマネジメントシステム savic-net FX BMS

ビルマネジメントシステム savic-net FX BMS

建物管理システム savic-net FX

人手による監視・管理では省エネ施策の展開に限界

太平洋に面し、右手に富士山、左手には江の島を望む絶好のロケーションにある新江ノ島水族館。眼前に広がる相模湾の生き物展示を中心に、来館者が海や生命に潜む多くの不思議を“遊びながら学べる”エデュテインメント※1型の施設として人気を博しています。同館は、世界でもクラゲ展示の先駆けの水族館としても知られています。館内には、球型水槽を中心に大小14の水槽を配した「クラゲファンタジーホール」を設置し、訪れる人々に幻想的な“癒やし”の空間を提供しています。

「海洋生物の飼育・展示を行う水族館では、水槽内の温度や水質を厳密に管理することが運営上の生命線です。その実現には多大なエネルギーを必要とします。社会的な要請やエネルギーコスト削減の観点から、いかに省エネルギーを実現していくかが、我々にとって常に重要なテーマになります」(山越氏)

以前から中央監視システムを導入していたものの、その監視ポイントはあくまでも主要設備の警報監視に限られていました。水槽温度などの確認は、基本的には現場の計器を人の目で読み取って管理するという運用だったため、省エネ施策の展開にもおのずと限界があったのです。

相模湾にいる生き物を集めて展示している大水槽。一日に数回、ショーが行われている。

相模湾にいる生き物を集めて展示している大水槽。一日に数回、ショーが行われている。

リピーターも多い“癒やしの空間”「クラゲファンタジーホール」。

リピーターも多い“癒やしの空間”「クラゲファンタジーホール」。

国内外の水族館施設での実績など総合的な評価に基づき委託先を選定

新江ノ島水族館では、2010年初めごろから、さらに踏み込んだ省エネ施策を推進するための検討を開始しました。同水族館の運営に当たる江の島ピーエフアイ株式会社の出資元・オリックス株式会社の発案により、NEDO※2の住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業費補助金(BEMS※3導入支援事業)の申請を前提に、ESCO※4事業として取り組むことを決定しました。

「事業スキームとしては、江の島ピーエフアイがESCO事業者のオリックスとシェアード・セイビングスによる契約を結ぶという形態を取りましたが、オリックスは工事を行う機能がありません。そこで、実際の工事や必要な製品が提供できるパートナーが必要でした」(高島氏)

いくつかの事業者に提案を依頼した結果、パートナーに選ばれたのがアズビル株式会社でした。

「2004年のオープン当初から設備などにアズビルの製品を採用してきたこともあり、当水族館の現場に精通していました。また、国内外の水族館に多くの実績を持っていること、コスト面なども含めて総合的に評価しました」(小出氏)

BEMS導入支援事業の申請については、江の島ピーエフアイとオリックスが共同で申請事業者となりました。申請に必要な省エネ効果の試算などをアズビルが全面的にサポート。2010年5月に申請を行い、無事採択されました。

2010年10月に着手した工事は、2011年1月に完了。同年2月から新たな監視・制御システムが稼働しました。

具体的には、中央監視システムを建物管理システム savic-net™FXへリニューアルするとともに、監視ポイント数を以前より拡大。より多くのポイントでの詳細な計測に基づき、飼育用の濾過(ろか)ポンプや大型熱源設備用ポンプなどのインバータ制御、あるいはパッケージ空調機の間欠運転などを実現しています。

中央監視室に設置されているsavic-net FXとビルマネジメントシステム savic-net FX BMS。水槽など飼育施設の温度、水位を含む建物全体の設備の稼働状況を可視化し、施設運営にかかわる省エネルギーの実現を支援。飼育員のために飼育施設のみの状況を参照できる画面レイアウトを用意するなど、職務に応じた監視のしやすさを追求するといった工夫も施されている。

中央監視室に設置されているsavic-net FXとビルマネジメントシステム savic-net FX BMS。水槽など飼育施設の温度、水位を含む建物全体の設備の稼働状況を可視化し、施設運営にかかわる省エネルギーの実現を支援。飼育員のために飼育施設のみの状況を参照できる画面レイアウトを用意するなど、職務に応じた監視のしやすさを追求するといった工夫も施されている。

バックヤードに設置されたデジタル指示調節計 R36では、展示スペースの水槽の温度管理を行っている。

バックヤードに設置されたデジタル指示調節計 R36では、展示スペースの水槽の温度管理を行っている。

目標値の2倍超に上る省エネ量を継続的に達成

一連の施策の結果、消費エネルギーの大幅な削減を実現しました。その成果をBEMS導入支援事業申請時の省エネ量(目標値)と比べると、1年目は約240%、2年目は257%、3年目は239%と、軒並み2倍を超える成果が得られています。

「オリックスはアズビルとの協業で、新江ノ島水族館以外にも様々な現場でESCO事業を推進しています。アズビルは常に保証した省エネ量を確実に達成してくれるので、大きな安心感があります」(高島氏)

「今までは飼育員が現場に赴いて各水槽の温度や水位をチェックしなければなりませんでしたが、savic-net FXから各設備の運転状態を監視できるようになり現場作業の省力化につながっています。また、エネルギーの使用量が可視化されたことは、職員の省エネルギーに対する意識向上にも貢献しています」(小出氏)

新システム稼働直後の2011年3月に東日本大震災が発生しました。計画停電の影響は新江ノ島水族館にも及びましたが、適切な省電力計画を策定・実施できました。その理由の一つとして、今回の取組みによってsavic-net FXから各設備を集中管理できるようになり、その運転データを活用したことで、計画停電に備えて夏季の電力使用ピーク時には各設備を段階的に停止させるなどの対応ができたと、同水族館は評価しています。

新江ノ島水族館では、現在の監視ポイント数を、将来的にはさらに拡大していくことを目指すなど、詳細な機器状況の可視化を進め、省エネ施策の強化を図っていきます。

「集中管理・運用データの可視化をすることで、機器の故障や障害の兆候を捉えることもできます。予防保全にも注力しながら、生き物にとっての最適な飼育環境を維持し、お客さまに常にベストな状態で生き物の展示を楽しんでいただきたいと考えています。アズビルにはこれからも、良きパートナーとして我々の取組みを強力に支援してくれることを大いに期待しています」(山越氏)

※savic-netは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 エデュテインメント

エデュケーション(Education:教育)とエンターテインメント(Entertainment:娯楽)を組み合わせた合成語。博物館や美術館などをはじめ、楽しみながら学習する手法を表現する用語として用いられている。

※2 NEDO(New Energy and industrial technology Development Organization)

独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構。

※3 BEMS(Building Energy Management System)

ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネルギー監視・制御を自動化し、建物全体のエネルギーを最小化するためのシステム。

※4 ESCO(Energy Service Company)事業

工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。資金を顧客が負担し、ESCO事業者が省エネ保証を行う「ギャランティード・セイビングス契約」と、ESCO事業者が資金提供を行い、顧客は省エネ効果を含めたサービス料を支払う「シェアード・セイビングス契約」という二つの契約形態がある。

お客さま紹介

江の島ピーエフアイ株式会社 施設部長 山越 賢悟 氏
江の島ピーエフアイ株式会社
施設部長
山越 賢悟 氏
江の島ピーエフアイ株式会社 施設部 施設管理チーム チームリーダー 小出 一城 氏
江の島ピーエフアイ株式会社
施設部
施設管理チーム
チームリーダー
小出 一城 氏
オリックス株式会社 環境エネルギー部 第一チーム 高島 彬 氏
オリックス株式会社
環境エネルギー部
第一チーム
高島 彬 氏

新江ノ島水族館

新江ノ島水族館

  • 所在地/神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19-1
  • 設立/2004年4月16日
  • 事業内容/水族館、グッズショップ、カフェなど

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2015 Vol.2(2015年04月発行)に掲載されたものです。

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