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株式会社カネカ 高砂工業所

ベテランのノウハウをしのぐ早期異常予兆検知が
設備稼働の「超安定」に大きく貢献

カネカ 高砂工業所では、プラント群における生産活動の生命線を担う自家発電の電力供給設備に異常予兆検知システムを導入。熟練オペレータをしのぐ検知精度が得られたことで、同工業所が目指す設備稼働の「超安定」を大きく前進させることができました。併せて、若手オペレータの監視スキルの向上にも貢献しています。

工場・プラント分野 化学 安定稼働 稼働改善 クラウド・IoT・AI 運転監視・制御システム&ソフトウェア

エネルギープラントの安定操業が工業所における生産活動の生命線

1949年の創立以来、化成品、機能性樹脂、発泡樹脂製品、食品、ライフサイエンス、エレクトロニクス、合成繊維など、衣食住の幅広い領域をカバーする製品を供給している株式会社カネカ。2009年9月1日に創立60周年を迎えた際には、2020年を見据えた長期経営ビジョン「KANEKA UNITED宣言」を策定しました。2017年4月からスタートした中期経営計画では、従来のように素材を提供するだけではなく「社会的な課題を解決するソリューションを提供する会社(=ソリューションプロバイダー)」へ変身し、成果にこだわった非連続的な成長を目指すこととしています。

高砂工業所は、同社が国内に展開する四つの工場の一つで、約100万m²以上という広大な敷地に、大型のプラント群を擁する同社の主力生産拠点です。塩ビモノマー/ポリマーを素材とした化成品や合成樹脂、合成繊維などを一貫生産しています。

高砂工業所のプラント群の操業をユーティリティ※1の供給で支えているのがエネルギー部です。自家発電を主体とした電力や蒸気、水などを生産現場に供給する傍ら、生産工程からの廃棄物などを処理する焼却炉や排水処理設備なども管轄しています。

「エネルギー部が運転管理しているエネルギープラントは、高砂工業所の生産活動を支える生命線であり、トラブルなどによる計画外の停止をいかになくすかが最重要テーマです。我々は設備の『超安定』をコストミニマムで実現していくことをミッションに、取組みを強化しています」(野夫井氏)

一方、設備の稼働において高度な安定性を実現する上では、監視に当たるオペレータの熟練度も重要なポイントとなります。

「現場のオペレータは40代以上の熟練者と、20代の若手といった人員構成になっています。数々の設備異常を経験してきたベテランのノウハウを、若手にいかに継承していくかが切実な課題となっていました」(森角氏)

高度なノウハウを持つベテランと同様の設備異常の予兆検知が可能

集中監視室に設置されたBiG EYESの端末。各監視ポイントの状態を確認するトレンド監視ビューア(左)では、計測値がいつもと違う動きをした際には直感的に状況を判断することができる。設備の監視対象となる計測点を設定し、モデル作成を行うコンフィギュレータ画面(右)。

集中監視室に設置されたBiG EYESの端末。各監視ポイントの状態を確認するトレンド監視ビューア(左)では、計測値がいつもと違う動きをした際には直感的に状況を判断することができる。設備の監視対象となる計測点を設定し、モデル作成を行うコンフィギュレータ画面(右)。

これらの課題に対し、その施策として導入したのが、アズビル株式会社の提供するオンライン異常予兆検知システムBiG EYES™(ビッグアイ)でした。

これまでエネルギー部では、プラント内各設備の通常とは違う微細な動きを熟練オペレータの経験に基づく高度なノウハウで監視し、異常を捉えた際には、必要に応じてトラブルを未然に防止するための処置を行ってきました。

「アズビルによれば、BiG EYESは熟練オペレータと同様のことが、人的スキルに依存せずシステムで実現できるとのことでした。これまでもプラントの運転管理の領域にアズビルの先進的な技術を採用し、多大な成果を上げてきましたので、実績に基づくアズビルへの信頼感から、さらなる操業の安定化に必ず貢献してくれると期待してBiG EYESを採用しました」(野夫井氏)

「併せて、これまで 経験や勘に基づく、伝承の難しいベテランの監視ノウハウを可視化し、若手オペレータがより高度な監視スキルを身につける上でも役立つのではないかと考えました」(森角氏)

BiG EYESの監視画面の一例(給炭機の詰まりの予兆を検知したケース)。

BiG EYESの監視画面の一例(給炭機の詰まりの予兆を検知したケース)。

高精度検知を実現する監視モデルの設定が若手のスキル向上に大きく貢献

高砂工業所が導入したBiG EYESは、2016年12月に稼働。ボイラやタービン、コージェネといった自家発電設備の監視に適用されており、成果は着実に表れています。

「これまでにBiG EYESが検知した異常予兆は計6件。その中には、給炭管の詰まりやダンパの動作不良など、ベテランのオペレータよりも早く予兆を検知した例も含まれています。DCS※2を使った計測値の上下限監視では幅が広すぎて検出できないものをBiG EYESではより高精度に検出することができます。その結果、より早い段階から問題の所在を検討し、必要な点検や処置を行うことができるので、トラブルによる緊急停止を回避することが可能となっています」(北村氏)

一方、BiG EYESでは、設備の監視対象となる計測点をあらかじめ設定し、これまでに蓄積された対象ポイントの正常な操業データから、ファジー・ニューラル・ネットワークで学習。正常と見なせる値の範囲の区間を割り出し、監視内容にかかわるモデルを作成する必要があります。高砂工業所では、BiG EYESの稼働に先立って、4人の担当者がアズビルの実施する3日間のトレーニングを受講。そこで学んだ内容を現場に持ち帰り、オペレータ全員へ設定手順の共有を図りました。

「監視モデルの作成は、特定のスタッフではなくプロセスを理解している現場のオペレータ自らが携わっており、オペレータ主体、運転主体で構築しています。こうした活動は、設備の構成や仕組み、プロセスを若手が深く知ることにも貢献しており、監視のスキルも上がっていると手応えを感じています」(黒木氏)

今後も高砂工業所では、エネルギー部が管轄する、広範な設備の監視に今回導入したBiG EYESを活用していく予定です。

「発電プラント以外の用水・純水・排水・廃棄物処理工程についても導入検討を進めています。それらの領域での異常予兆の検知においても、BiG EYESが大きな成果をもたらしてくれるものと確信しています」(早瀬氏)

「『超安定』の達成を目指した取組みにおいては、まず我々自身がやりたいことを明確にして、その実現に向けて信頼できるパートナーの支援を仰ぐことが重要だと考えます。複雑で厄介な問題についても、常に意見のキャッチボールに快く応じてくれるアズビルは、今後も我々にとって信頼できるパートナーだと感じています」(野夫井氏)

※BiG EYESは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 ユーティリティ

各種設備、装置を運転するために必要な電力、燃料、蒸気、工業用水、圧縮空気などの総称。

※2 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

お客さま紹介

株式会社カネカ
高砂工業所
エネルギー部長
野夫井(やぶい) 佳昭 氏
株式会社カネカ
高砂工業所
エネルギー部
動力課長
森角(もりずみ) 良作 氏
株式会社カネカ
高砂工業所
エネルギー部
動力課第一係長
早瀬 孝幸 氏
株式会社カネカ
高砂工業所
エネルギー部
動力課第一係
職長
黒木 睦介 氏
株式会社カネカ
高砂工業所
生産技術グループ
設備管理技術チーム
主任
北村 公二 氏

株式会社カネカ 高砂工業所

株式会社カネカ 高砂工業所

  • 所在地/兵庫県高砂市高砂町宮前町1-8
  • 創立/1949年9月1日
  • 事業内容/化成品、機能性樹脂、発泡樹脂製品、食品、ライフサイエンス、エレクトロニクス、合成繊維等

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2017 Vol.6(2017年12月発行)に掲載されたものです。

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