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旭化成株式会社 水島製造所

調節弁の異常を早期に把握する「攻めの保全」で、製造プロセスへの影響を未然に防止

旭化成の水島製造所は、石油化学事業の中核生産基地として、水島石油化学コンビナートで使用される原料の大部分を担う重要な拠点です。同製造所では、重要プロセスで稼働する調節弁の微細な異常を、製造プロセスに影響が及ぶ前の段階で把握する仕組みを構築。これにより、品質や安全操業を阻害する要因を事前に取り除く「攻めの保全」を実現しています。

工場・プラント分野 石油・石油化学 安全・安心 安定稼働 メンテナンスサポート 運転監視・制御システム&ソフトウェア コントロールバルブ(調節弁)/操作端

安定操業のさらなる強化へ、現場から生まれた保全高度化のニーズ

1922年の創業以来、旭化成株式会社は化学を基盤とするコア技術を発展させながら、住宅やエレクトロニクス、医薬・医療へと事業領域を広げてきました。現在では「ヘルスケア」「住宅」「マテリアル」という三つの分野を手掛ける、世界的にも類を見ない企業として知られています。

水島製造所は、同社の石油化学事業における中核生産基地として、瀬戸内海に面する水島臨海工業地帯の南東に立地し、水島製造所の敷地面積は東京ドーム約30個分の広さに相当しており、スチレンなどの中間原料や、ポリアセタールをはじめとする高機能樹脂などの誘導品までを一貫して生産しています。同製造所の石化原料製造施設では、エチレンセンター※1から供給される石油系の生成物のうち、ガス成分から高純度の水素を精製するほか、分解ガソリンを蒸留して一定の組成ごとに分離して作られた各留分を、自社の別装置や水島地区の他社化学プラントに送り出しています。さらに、エチレンや燃料ガスの供給窓口としても機能しており、水島石油化学コンビナートの前工程と後工程をつなぐ中間工程として重要な役割を担っています。

水島製造所では13~14年前から、各装置で多用される調節弁の状態を稼働中に把握するため、アズビル株式会社のスマート・バルブ・ポジショナ調節弁メンテナンスサポートシステム PLUG-IN Valstaff(以下、Valstaff)を導入してきました。現在のポジショナの適用台数は約350台に上ります。一方で、各装置で個別に導入が進んだ経緯もあり、十分に成果へ結びついていない面がありました。そこで2023年ごろから、異常の早期発見による保安力強化に向けて、Valstaff活用の本格化に取り組みました。

「そうした保安力の強化に加え、人材不足や物価上昇といった社会変化への対応を見据え、調節弁を含む計装設備のCBM※2化にかじを切っていきたいという考えもありました」(平山氏)

長年にわたるパートナーシップで培われた、信頼や実績を高く評価

プラントの安全安定安心操業を行う上で、稼働中の調節弁で発生する重大な異常について、DCS※3によるプロセス監視で検知されるより前の段階でその予兆を捉え、安定操業を阻害する要因の芽を摘み取る「攻めの保全」が求められていました。

そうした背景の下、水島製造所の製造部門(CH・石化原料製造課)から挙げられた保安力強化の要望を受け、設備管理部門(計装設備管理課)で検討を進めて採用したのが、Valstaffを活用したオンライン監視の仕組みであるデバイス・マネジメント・システム InnovativeField Organizer™(以下、機器管理システム)でした。

「アズビルとは、水島製造所の設立当初からの付き合いがあり、現在に至るまでの支援体制で大きな信頼を寄せていました。また、他工場での実績があったことに加え、オンライン監視における監視速度の速さにも強みを感じました」(三島氏)

水島製造所は、2023年5月の定期修理※4で石化原料製造施設に機器管理システムValstaffを導入し、重要度、運転における危険度、保安上のリスクが高い調節弁15台を選定して、機器管理システムによる監視体制を構築。同年8月から稼働を開始しました。導入後は、調節弁の稼働データを蓄積しながら診断パラメータのしきい値※5のチューニングを進め、機器管理システムの監視画面上に音付きのポップアップで表示される機能(重要アラート通知)の対象とするアラーム種別を検討していきました。併せて、重要アラート発生時には製造部門が一次判断を行い、必要に応じて設備管理部門へ連絡する運用フローの整備も進めています。

■水素精製系に設置された他社調節弁。アズビルのスマート・バルブ・ポジショナ 形AVP302を取り付けて、調節弁の稼働状態を監視している

水素精製系に設置された他社調節弁。アズビルのスマート・バルブ・ポジショナ 形AVP302を取り付けて、調節弁の稼働状態を監視している

パネル室に設置された機器管理システムの監視画面。スマート・バルブ・ポジショナから取得した診断情報から発せられたアラートを一覧表示で確認している

パネル室に設置された機器管理システムの監視画面。スマート・バルブ・ポジショナから取得した診断情報から発せられたアラートを一覧表示で確認している

人間では捉えることのできない、調節弁の微細な変化を的確に検知

こうした取組みの中で成果が表れ始めています。石化原料製造施設には、リアクター※6の温度を設定値に保つため、リアクター入り口温度を制御する保安上重要な調節弁があります。この調節弁は2025年5月の定期修理で整備されましたが、運転再開後、定期修理前には発生していなかった調節弁の開度偏差に関する重要アラートが機器管理システムの監視画面に頻繁に発報されるようになりました。ところがDCSのトレンドを確認してもプロセスに乱れはなく、温度にも異常が見られません。そこで、該当する調節弁の稼働状況のトレンドを1週間、1時間といった単位で分析を進めたところ、調節弁の開方向での追従性が悪いということが判明したのです。

「制御に対して開度が正しく追従せず、途中でオーバーシュートという設定値を超える現象が起こり、偏差が生じていたことから、調節弁内部でスティックスリップ※7が発生している可能性があると考えました。そこで、調節弁に備わっている給油機でグランド部※8の潤滑を改善する処置を行ったところ、問題を解消することができました。最悪の場合、重大事故にもつながりかねない事例でした」(中田氏)

「人間の五感やDCSのトレンドでは決して捉えることのできない、極めて微細な異常を的確に検知できました。もし放置していれば、品質への影響に加え、調節弁の開放点検を行うための工場の停止・立上げが必要となり、1週間を超える操業の停止、加えて弊課は中間工程のため、他工場へも影響が及ぶ事態になりかねませんでした」(川内氏)

水島製造所では今後も診断パラメータのしきい値のチューニングを継続しながら、異常の検知漏れや過検知を抑え、「攻めの保全」を高精度で実現していくことを目指しています。

「その実現に向けて、水島コンビナート近くに営業拠点やバルブメンテナンスセンターを構えているアズビルには、引き続き手厚いサポートをお願いしたいです」(加藤氏)

「旭化成全体で見ると、今回導入したものと同様の調節弁の監視システムは、まだほかの製造拠点では十分に活用できていないのが実情です。今後も、水島製造所ではアズビルとともにノウハウを積み上げ、その成果を他拠点にも横展開していきたいと考えています」(平山氏)

定期修理を終えて運転を再開した際に、調節弁の稼働状況を示すトレンドグラフから偏差(黒線)の増大と開方向の追従性悪化を確認した。処置後は偏差が低減し、スティックスリップ兆候の改善が見られた

定期修理を終えて運転を再開した際に、調節弁の稼働状況を示すトレンドグラフから偏差(黒線)の増大と開方向の追従性悪化を確認した。処置後は偏差が低減し、スティックスリップ兆候の改善が見られた

※ Valstaff、InnovativeField Organizerは、アズビル株式会社の商標です。

用語解説

※1 エチレンセンター

石油化学製品の原料であるエチレンを生成し、石油化学プラントに供給する施設。

※2 CBM(Condition Based Maintenance)

状態基準保全。機器の状態を監視し、劣化兆候を把握することで、状態に応じて保守を実施する保全方法。

※3 DCS(Distributed Control System)

プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

※4 定期修理

各種生産施設やプラントで定期的に実施される大規模な点検・修理作業。

※5 診断パラメータのしきい値

調節弁の異常を判断するための指標(異常と判断する偏差の大きさや持続時間など)。

※6 リアクター

反応装置。原料同士を反応させて、目的とする化学物質を作るための中核装置。

※7 スティックスリップ

弁軸の摺動が固着(スティック)と急作動(スリップ)を繰り返す現象。調節弁において、グランドパッキンの構造的な破壊やプロセス流体の漏れなどにより、グランド部の摩擦が大きくなった結果、弁軸の動きが悪くなっている状態。

※8 グランド部

調節弁の弁棒(ステム)が弁本体の外へ出ていく部分で、流体の漏れを防ぐための封止機構。

お客さま紹介

旭化成株式会社 水島製造所 設備管理部 計装設備管理課 課長 平山 和彦 氏
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水島製造所
設備管理部
計装設備管理課
課長
平山 和彦 氏
旭化成株式会社 水島製造所 設備管理部 計装設備管理課 係長 三島 和基 氏
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設備管理部
計装設備管理課
係長
三島 和基 氏
旭化成株式会社 水島製造所 設備管理部 計装設備管理課 中田 洋輔 氏
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計装設備管理課
中田 洋輔 氏
旭化成株式会社 水島製造所 モノマー製造第一部 CH・石化原料製造課 係長 加藤 耕平 氏
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モノマー製造第一部
CH・石化原料製造課
係長
加藤 耕平 氏
旭化成株式会社 水島製造所 モノマー製造第一部 CH・石化原料製造課 運転主任 川内 勇希 氏
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モノマー製造第一部
CH・石化原料製造課
運転主任
川内 勇希 氏

旭化成株式会社 水島製造所

  • 所在地/岡山県倉敷市潮通3-13
  • 設立/1965年2月
  • 事業内容/ナフサ分解から中間原料・誘導品まで一貫生産

この記事は2026年07月に掲載されたものです。

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