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オイルミスト

油を使った加工作業や調理の際に、油が微粒子化して空気中に飛散したもの。工場などでは呼吸での吸込みや皮膚への付着による疾患、オイルで床が滑りやすくなることによる転倒・滑落など安全衛生上の問題、作業場所に設置された設備への悪影響、外部への排気による環境汚染といった問題が指摘されている。

健康や環境などに悪影響をもたらす空気中の油の微粒子

台所で日常的に料理をしていると、いつの間にか換気扇やコンロ周りが油でべたついて、放置するとなかなか落ちないという経験をした人は多いのではないでしょうか。それは、料理で使っている油が飛散したり、油を含んだ煙が上がったりすることが原因です。工場では、金属部品を加工する際に、マシニングセンタ*1や旋盤などの工作機械を使いますが、加工時に潤滑油を供給しながら切削を行います。潤滑油を使用することで、工具の摩耗を防ぐほか、摩擦熱による加工物の硬度低下や膨張を抑えて加工精度を維持することができます。一方で、加工物と切削工具が高速で接触することにより潤滑油が微粒子化して空気中に飛散し、様々な影響を及ぼすことが考えられます。

オイルミストがもたらす影響が、従業員の意欲低下や環境汚染の要因に

その一つとして挙げられるのが健康への影響です。呼吸の際にオイルミストを吸引したり、オイルミストが皮膚に付着したりすることで最悪の場合、呼吸器系の疾患や皮膚疾患を引き起こすことも考えられます。また、オイルミストが床に付着することで床や階段などが滑りやすくなり、転倒や高所からの滑落といった従業員の安全を脅かす危険な事故の原因となることもあります。さらに、蓄積されたオイルが何らかの原因で発火することで、火災につながってしまうリスクも考えられます。このような作業環境への悪影響は就業意欲や作業品質の低下を引き起こし、その結果、従業員の会社への定着率低下を招くといった課題も浮上しています。

そのほか、オイルミストは現場の設備の正常な運転にも支障を来す可能性があるだけではなく、メンテナンスサイクルや機器の寿命の短縮にもつながります。例えば空調設備にオイルミストが付着し堆積したために熱交換率が下がり、エネルギー消費が増大したことで、CO2の排出量が増える可能性もあるのです。加えて、オイルミストを含んだ空気を工場外に排出することで、近隣の環境汚染が引き起こされてしまったり、工場や企業のイメージに悪い影響を与えてしまったりといったことも考えられます。

独自の基準値を設定し、オイルミストを対策

多くの工場ではオイルミストの除去・削減を、従業員の働き方や職場の安全衛生管理、省エネルギー、地球環境対策にもつながる重要なテーマと捉えています。作業環境におけるオイルミストの濃度を制限するような法規制などは現状では存在していないため、工場を操業する各社が独自に基準値を設定し、オイルミスト対策を実施しています。

一般的に空気中のオイルミストの濃度は1m³あたりの質量で把握され、それが0.5mg/m³であれば、現場がうっすらと曇っている程度、1mg/m³になると明確に曇っている、さらに2mg/m³になると視界が悪い状態となります。そのため、オイルミストの低減に取り組んでいる工場では、通常、0.2~0.5mg/m³に基準値を設定しているケースが多いようです。

オイルミストの濃度を低減するための具体的な施策として、高い効果が期待できるのが、オイルミストコレクタ(集じん機)の導入です。加工機械に集じん機を組み込んで、発生したオイルミストが空気中へ飛散する前に回収するという方法、あるいは加工機械の種類や設置状況によってそれがかなわない場合は、作業現場のいずれかの場所に集じん機を設置して回収するという方法で、オイルミストの濃度を下げることができます。

そうした集じん機には、ファンによって吸い込まれたオイルミストの油分を、フィルタを通してろ過するフィルタ式、遠心力を利用して油分を分離させて除去する遠心分離式、そして電気のプラスとマイナスの極性を利用して、油分を静電気を帯びたプレートに吸い付ける電気式といった方式があります。それぞれに集じん可能なミストの大きさや、設置場所への適性が異なり、工場では、それらの条件に加えて、価格面なども考慮しながらニーズに合ったものを選択しています。

このように工場では、単に加工機械や製造設備が動いてものが作られるだけではなく、従業員が快適に働ける職場環境の確保や自然環境保護のための配慮に必要な様々な仕組みが一体となって操業されています。カーボンニュートラルに向けた省エネ施策の取組みやSDGsの達成といった社会課題の解決に貢献する一助となるオイルミストの対策は今後ますます必要とされることでしょう。


*1:マシニングセンタ
自動工具交換機能を持ち、目的に合わせてフライス加工・中ぐり加工・ねじ立てなどの異種の加工を1台で行える工作機械。主に切削加工を目的としており、工具マガジンには様々な切削工具を格納。コンピュータ制御によって工具を自動的に交換して加工を行うことができる。

この記事は2024年04月に掲載されたものです。