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生産拠点のリニューアルで新たな価値を創造

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新棟の建設に合わせた四つのタスク展開で
生産革新を支える工場の理想的な姿を追求

フォグ式潤滑装置やデュアルバルブ、空圧機器といった製品を提供することで、産業分野のお客さまの生産活動を支えるアズビルTACO。同社では、長らく主要生産拠点として操業してきた埼玉工場において、新棟の建設を軸としたリニューアルを実施しました。リニューアルにあたり活動を開始した四つのタスクを通じて、生産・開発の効率化や従業員の作業にかかわる安全・安心の担保、環境配慮、従業員満足度の向上などの観点で新たな価値創造を実現しています。

工場の老朽化対策を契機として四つのタスクを実践し付加価値を追求

アズビルTACO株式会社は、独自の「空気を操る技術」により、潤滑装置事業、方向切換弁事業、空圧機器事業で、産業分野のお客さまの生産活動を支える機器の製造・販売を行っています。1955年に東京オートマチックコントロール株式会社として設立された同社は、1961年に現在の埼玉県行田市に埼玉工場を設置。1989年には社名をTACO株式会社に変更しました。azbilグループには2012年に参入し、2013年にはアズビルTACOに社名を変更して、新たなスタートを切りました。

切削工具の回転軸に潤滑油を噴霧して摩擦熱や摩耗を低減するフォグ式潤滑装置、動力プレス機に組み込んでクラッチ/ブレーキの圧縮空気の排出制御を行う方向切換弁、クリーンな真空が必要とされる半導体製造などで使用される空圧機器カスタム製品を主力製品として、埼玉工場に加えて、子会社のTACO精機株式会社(福島県相馬市)の2拠点体制で生産を行っています。

アズビルTACOの主要製品群 アズビルTACOの主要製品群

操業開始以来、主力工場として60年以上の歴史を持つ埼玉工場では、建物や付帯設備の老朽化が目立つようになり、一部の建物では耐震性の確保も課題となっていました。azbilグループでは事業継続計画(BCP)の一環で、全事業所に対して新耐震基準の建物へ移転する、もしくは補強の要件を満たすことを推進しています。これに対しアズビルTACOでは、2020年3月、老朽化した2号棟を解体し、その跡地に10号棟として新耐震基準を満たした新棟を建設することを決定しました。

リニューアルにあたっては、新棟の建設により生産性のさらなる向上を目指すとともに、azbilグループが取り組んでいる健幸経営*1やWell-beingの実現も追求し、その達成に向けて埼玉工場リニューアルプロジェクトとして四つのタスクで取組みを推進することにしました。これまで建物の制約などで取り組むことが難しかった、生産革新にかかわる様々な改善施策や、社員が安全・安心、そして快適に働くことができる環境の整備にも着手しています。新棟となる10号棟は2024年7月末に竣工し、埼玉工場は、これらのタスクによりもたらされた新たな付加価値提供を支えていく生産拠点として稼働を開始しています。

埼玉工場の建物配置 埼玉工場の建物配置

旧態依然とした生産の在り方を再考、理想的な姿を描きその実現を目指す

埼玉工場リニューアルプロジェクトの四つのタスクのうち、一つ目は「生産体制構築タスク」です。埼玉工場はアズビルTACOの中心となる生産拠点であることから、将来を見据えた新たな生産体制を整えていくことを目指しました。旧態依然とした生産ラインの在り方を全面的に構築し直し、工場内物流にかかわる動線を従来比で50%短縮することで、結果的に製品の受注から出荷に至るリードタイムを短縮できました。

また同社では、これまで扱ってきた膨大な数にのぼる製品ラインアップを、順次、最適な数に絞り込んでいくことも課題の一つとして挙げています。製品ラインアップを見直すことにより、生産や在庫に要する現場のスペースをより効率的に活用できるほか、製品の管理に付随する業務やスキルの最適化が可能になります。

二つ目は「工場構築タスク」です。これは、安全・安心、そして快適で働きやすく、地域貢献にも資する生産拠点の実現に向けた施策です。CO2排出量削減や騒音の防止など地域の環境や近隣住民への配慮もこのタスクにかかわる課題です。これについては、省エネルギーを目的とした照明のLED化や、窓の数を少なくすることによる断熱対策といった施策を行っています。加えて、近隣住民への配慮の観点で、生産の現場で多用される圧縮空気を作るコンプレッサを省エネ型、静音型にリプレースすることで、騒音防止に取り組んでいます。さらにコンプレッサが発する熱を工場内に還流させて、暖房に活用する排熱利用の仕組みも構築しました。そのほか、工場内の系統ごとに電力メーターを設置して、細かく電力の使用量をモニタリングするシステムも導入し、省電力の取組みをさらに加速していく環境も整えました。

こうした一連の施策の結果、埼玉工場ではリニューアル後の2024年8~10月の実績平均で、2019年度と比較してCO2排出量を31%、原単位で33%、それぞれ削減するという成果を挙げています。排熱を再利用することができる冬場には、さらなる削減効果が得られています。

三つ目は「テクニカルセンター構築タスク」です。これは、3号棟に置かれていた開発部の実験室を一新して、より明るく働きやすい環境に生まれ変わらせるというものです。リニューアルされたこの開発実験環境は、「埼玉テクニカルセンター」と命名され、アズビルTACOで生産するすべての製品の開発拠点として整備されています。

デュアルバルブ生産ライン。デュアルバルブの組立てから検査までを行っている
デュアルバルブ生産ライン。デュアルバルブの組立てから検査までを行っている
製品検査室。石鹸水の膜を使って方向切換弁のエア漏れを確認し、稼働の検査を行う
製品検査室。石鹸水の膜を使って方向切換弁のエア漏れがないかチェックし、動作確認を行う
新たに建設された10号棟には、コンプレッサ室が設置されている
新たに建設された10号棟には、コンプレッサ室が設置されている
※通常時は防音対策のため、シャッターを下ろしています

現場の“生の声”を収集することで気持ちよく働ける場の創出へ

そして四つ目の「社員満足度向上タスク」は、今回の工場リニューアルにおいて目指した付加価値向上の中でも大きな取組みといえるものです。ここまで紹介してきた三つのタスクが生産体制の構築や、安全・安心、快適さを追求した環境の構築というハード面での改善を主体としたものであるのに対し、社員満足度というソフト面に重点を置いた施策となっています。

具体的には、工場内の各部門から集まっているタスクのメンバーが、各々の現場でアンケートなどを実施しながら、従業員が不満に感じている点を浮き彫りにし、どうすれば従業員がより気持ちよく働くことができるかについての意見を収集して、快適な環境実現に向けた検討を進めました。

中でも取組みの象徴的な成果といえるのが、1号棟3階に開設された「グリーンラウンジ」と呼ばれるスペースの実現です。「グリーンラウンジ」は、基本的には旧来の食堂の役割を引き継ぐものですが、このスペースには多くの観葉植物が配置され、従業員がリラックスできる居心地のよい空間となっています。従業員はこの場所を、食事はもちろん、休憩やミーティング、ときには気分を変えてのデスクワーク、取引先との打ち合わせにも利用しており、従業員間のコミュニケーションの場として、また新たな発想やアイデアの創出を促す環境としても大いに役立てられています。

1号棟の食堂が「グリーンラウンジ」として生まれ変わり、従業員のコミュニケーションの場となっている

1号棟の食堂が「グリーンラウンジ」として生まれ変わり、
従業員のコミュニケーションの場となっている

埼玉工場リニューアルプロジェクトは2024年12月に完了し、アズビルTACOでは、埼玉工場における将来に向けた生産革新を実践していく環境を整えることができました。働く環境が整備されたことで社員のWell-beingの実現にも貢献でき、お客さまの生産活動に対して、より高度な価値を提供していくことに直結するものと、期待が大きく膨らんでいます。

  • *1:健幸経営
    azbilグループは、2019年7月に、働き方改革やダイバーシティ推進など、社員が健康で活き活きと仕事に取り組んでいけるようにするための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、「azbilグループ健幸宣言」を発表しました。