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デジタルツイン

現実空間にある膨大な情報をIoTを介して収集し、AIで分析・処理をすることで現実にある物理空間の『双子』となる環境をデジタルの仮想空間内に再現する技術。リアルタイムで高度なシミュレーションを行うことができ、製造をはじめ、建設や都市開発など、幅広い分野で注目が高まっている。

マンガ制作:株式会社シンフィールド

物理環境とのリアルタイムな連動で、現実世界の“いま”を仮想環境で捕捉

デジタルツインとは、IoTを介して現実世界に存在しているモノや環境の情報を収集し、AI技術によってコンピュータ内の仮想空間に同じ環境を再現する技術をいいます。現実世界とリンクした仮想空間上では、現実に起こっている環境の変化などが常時リアルタイムで反映されるため、現状に合わせたシミュレーションや分析を即座に行うことが可能になります。特に近年では製造をはじめ、小売りや物流、建設、都市開発など、幅広い対象や用途で活用が進んでいます。

製造業において、このデジタルツインの適用により大きな効果が期待されているのが設備保全の領域です。具体的には、プラントの製造設備や操業にかかわる環境のモデルを仮想空間上に再現し、実際に稼働している設備に備え付けられたセンサ類から収集される各種プロセスデータをリアルタイムにモニタリング・分析します。その結果、「実際の設備の稼働状況」と「データを解析したもの」の両者の間に生じる状態の乖離(かいり)によって、操業上のエラーや設備故障の発生を速やかに検知できるほか、問題を引き起こしている箇所や原因の特定なども容易に行えるようになります。さらに、蓄積されたプロセスデータに基づくシミュレーションによって、現状のデータから将来的に起こり得る設備故障の予兆を捉えるといったことも可能となるのです。このようにデジタルツインを活用することで、操業継続に関する不安要素が軽減し、安定した操業が可能になります。

そうした意味でデジタルツインは、物理環境とのリアルタイムかつ動的な連動によって、現実世界の“いま”を捕捉し、IoTが収集した大量のデータを駆使して再現した仮想空間で高度なシミュレーションや分析を行い、迅速に必要な対処や制御につなげていけることが、従来のシミュレーションとの決定的な違いであるといえます。

仮想環境でトライ&エラーを重ね、製品設計や生産プロセスを最適化

デジタルツインは、昨今、生産現場において大きな課題となっている働き方改革や技術の継承などにおいても有効です。例えば、これまで担当者が現場を巡回して行っていた生産設備や機器の点検作業にデジタルツインを活用するといったアプローチも考えられるでしょう。

また、製品設計においても、現実空間で試作品を作製したり物理的なテストを行うことなく、仮想空間上で構造や熱、流体などにかかわるシミュレーションを柔軟に行えるという利点があります。生産プロセスや人員配置に関しても同様に、プロセスを構築した仮想環境に人員を配置して、生産効率やエネルギー消費といった様々な視点からシミュレートし、より効率的に最適化を実施することが可能です。

このように、デジタルツインを活用したシミュレーションが実現すると、仮想空間上でトライ&エラーを繰り返し実施し、現実世界にフィードバックができるため、試作や実験の時間や手間をかけることなく、より短期で最適解を見いだしていくことが可能となります。これにより、製品の設計・開発にかかわるリードタイムが短縮されるほか、低コスト、低リスクで最適化された生産プロセスの実現が期待できるわけです。

サステナブルな街づくりにもデジタルツインを活用

公共領域におけるデジタルツインの活用も国や自治体を中心に加速しています。その一例が、国土交通省が取り組んでいるPLATEAU(プラトー)と呼ばれるプロジェクトです。このプロジェクトでは、日本全国の建物や道路を3Dデータ化し、都市全体を仮想空間上に再現。そこに交通・人流や災害リスクなどといった様々なデータを反映することで、都市全体での多様なシミュレーションを可能とし、防犯・防災など、多種多様な施策検討に役立てることができます。また、それら高精度の3D都市モデルや各種データはオープンデータとして公開され、地方公共団体や民間企業、研究者、エンジニア、クリエーターなど、誰もが自由に引き出し、活用することが可能です。これにより、都市のマネジメントや都市機能の整備、サステナブルな街づくりの推進をはじめ、様々な領域でのイノベーション創出が期待されています。

今後、IoTやAIをはじめ、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、あるいは大容量高速無線通信である5Gなど、周辺技術のさらなる発展をベースに、デジタルツインを構築する環境、空間、領域はますます拡大し、より精緻に再現できるようになっていくでしょう。高精度な仮想空間の構築にかかわるコストなどの課題もありますが、デジタルツインの活用が進むことにより創出される新たな価値に期待が高まります。


この記事は2024年07月に掲載されたものです。