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マスフロー(質量流量)

単位時間に流れる流体(液体・気体)の質量(重さ)。「kg/min」といった単位で表される。温度・圧力で体積が変化する気体でも質量流量では一定に表すことができる。

マンガ:湯鳥ひよ/ad-manga.com

体積流量か質量流量かは計測する対象によって異なる

水道やガス、燃料などの利用量を調べる際、一定時間内の「流量」を計測し利用料金を算出します。その流量を「L/min」などの体積で表したものが「体積流量」、「g/min」などの質量(重さ)で表したものが「マスフロー(質量流量)」です。

気体を計測する場合、温度や圧力によって体積が変化することに留意しなければなりません。例えば、大気圧下で1分間に10L流れた体積流量は「10L/min」ですが、圧力が2倍になればその気体は圧縮されて体積は2分の1になるため、同じ「10L/min」の体積流量でも、その質量は2倍になります。質量流量計は気体中の分子の量(=質量)を測定するため、温度や圧力による影響を受けません。このため、温度や圧力による体積変化の影響が小さい液体は体積流量を用いて計測されますが、気体の流量計測は質量流量を用いられることが多いです。

流体そのものを測るのではなく、そこに働く力や分子量で計測

質量流量を計測する「マスフローメーター」には、大きく分けて二つの方式があります。質量にかかわる物性量を量る「直接式」と、体積流量を補正して質量を割り出す「間接式」です。

直接式は、計測する物性によって「コリオリ式」と「熱式」という2種類に分かれます。

コリオリ式は、回転体上で運動する物体にその速度の向きを変えるように働く慣性の力である“コリオリの力”を応用した計測方法です。振動しているU字管の中を流体が流れたときに、地球の自転の影響でコリオリの力によって生じるひずみによってもたらされる振動数(周波数)の変化から流量を計測します。流量が大きいほど振動は少なくなり、流量が少なければ振動は増えます。リアルタイムの計測が可能ですが、振動の発生しにくい気体よりも液体での計測に向いており、薬品や飲料などの計測に使われています。

もう一つの直接式である熱式は、気体の流量計測を得意とする計測方法で、気体に含まれる分子量を測ることで流量を計測します。一定容積中の気体に含まれる分子量と1分子当たりの熱伝導率(熱の伝達能力)は決まっています。気体中の分子量は温度や圧力が変化しても変わらないため、ヒーターにて気体に熱を加え、その熱がどれくらい移動したか、あるいはどれくらいの熱が奪われるかを調べることで気体の質量流量を測定することが可能です(実際には気体の種類によって熱伝導率は異なるので種類に応じた補正が必要です)。昨今では、わずか数mm角のセンサチップにて熱式質量流量計測が実現されています。

熱式質量流量計測は幅広い分野で活用されており、自動車のエンジンをはじめ、半導体製造装置やガラス加工の製造現場、ボイラ、燃料電池などで使用される気体の流量の管理や制御などで使われています。

一方の間接式は体積流量を計測した上で、温度や圧力で補正し、質量流量を割り出します。この方法で計測するためには、体積流量計に加えて、温度計や圧力計も必要になります。

計測データの活用を見据えて質量流量計のさらなる進化も

今後、各方式のバージョンアップした計測方式が開発されていくでしょう。計測したデータをどのように使っていくかも今後の大きなテーマです。例えば、計測データをリアルタイムでクラウド上にアップし、ビッグデータとして収集し、蓄積したデータを活用して新たな解析手段に用いるような仕組みの一つとして、従来の概念を覆す流量計に対するニーズが高まることなどが考えられます。

また、流体に触れずに計測する方法ができれば大きなブレークスルーになるでしょう。現在も超音波を使って配管の外から液体流量を計測することが可能ですが、光学的アプローチなど新たな仕組みを構築することで、流量計そのものの価値が変わるかもしれません。


この記事は2018年12月に掲載されたものです。