OPC UA

マルチベンダー製品間や異なるプラットフォーム(OS、プログラミング言語、データ表現形式)間でのデータ交換を可能にする、安全で信頼の高い産業通信用の情報連携基盤の国際標準規格。様々な機器の自動化やスマートファクトリーの実現を支える標準になりうる規格として期待されている。

マンガ:湯鳥ひよ/ad-manga.com

ベンダーごとに異なる機器のデータ連携・仕様を標準化

製造業の工場では、様々な製造機械や制御機器・システムが連動したオートメーションの仕組みが実現され、それをベースに生産活動が行われています。そうしたオートメーションを構成する機器やシステムには、通常、複数のベンダーの製品が用いられており、ベンダーごとにデータをやりとりするための手順や仕様が異なっているというのが一般的です。そのため、これらの異なる機器・システム間でデータ連携を行う際には、連携用のプログラムを作成するなどの対応が必要となります。当然、それには相応の労力、コストが発生します。

このようなデータ連携を巡る課題の解消を目指して、製造機械や制御機器のベンダーと、それらを利用する製造業各社などの協力の下、1996年に策定されたのがOPC(OLE for Process Control)と呼ばれる標準規格です。各ベンダーの機器やシステムに組み込まれるデータ連携のためのインターフェースの仕組みがOPCに準拠していれば、別途接続のためのプログラムを作り込む必要がなく、複数のベンダー製品間でデータの相互運用を実現することができます。

広範な産業分野のシステムの連携を支える新たな国際標準規格

しかし、2000年代に入り、工場現場の機器やシステムが、工場内のオートメーション領域にとどまらず、ほかの生産拠点や企業の本社、さらにはより広範な産業分野のシステムとの連携が求められるようになると、OPCを巡っていくつかの課題が浮上してきました。

例えば、マイクロソフト社のOLE(Object Linking and Embedding)というデータ交換の仕組みをベースとしているOPCは、実装可能なプラットフォームがWindowsに限定されるというのもその一つです。工場内での枠組みを超えたデータ連携を実現していくためには、Windowsだけではなく、様々なプラットフォームで利用できる仕組みにしていくことが必要でした。

そこで、OPCにおけるデータの相互運用性を継承しながら、OLEに代えてサービス指向アーキテクチャ(SOA)*1という技術を採用して、新たな国際標準規格として策定されたのが「OPC UA(Open Platform Communications Unified Architecture)」です。その内容は、従来のOPC(OPC Classic)以来、規格策定を主導してきたOPC Foundationがデータの相互運用性を巡る基本理念として掲げる、「つなげる」「伝える」「安全に」という各要件をトータルに達成するものとなっています。

まず、「つなげる」については、先述のSOAをベースに、Windowsはもちろん、Linux、あるいはスマートフォンやタブレットといったデバイスに搭載されているiOS、Android なども含めた多彩なプラットフォームに対応。OPC UAを利用するためのアプリケーションの構築も、OSやプログ ラミング言語に依存することなく行えるようになっています。

また、「伝える」に関してOPC UAでは、実際にやりとりされるデータの意味、例えばデータ内のある場所に格納されているのは温度情報で、また別の場所に格納されている値は圧力にかかわるものであるといったメタ(付帯)情報を、利用分野や用途ごとにモデルとして定義する際の規則を定めています。

さらに、「安全に」については、昨今、社会の様々なシステムが相互にネットワークで接続されている状況にあって、一般のITシステムだけでなく、工場内の製造機械や制御システムといった、いわゆるOT(Operational Technology)の領域においてもサイバー攻撃の脅威が増しています。これに対しOPC UAは、例えば暗号化や認証、電子署名など、ITの世界で利用されている一般的なセキュリティ対策のための技術が利用できるようになっています。


*1:SOA(Service Oriented Architecture)
コンピュータのソフトウェア機能を独立した「サービス」という単位 で実装し、その「サービス」を組み合わせることでITシステムを構築する考え方。

Industry 4.0の標準にも採用、生産現場のスマート化を支える

IIoT(Industrial Internet of Things:産業用IoT)に向けた取組みの広がりなどを背景に、生産現場を含む産業分野の広範なシステムや機器がネットワークに接続されてきている今日の状況において、こうしたプラットフォームに依存せず、安全にデータの相互運用を実現するというOPC UA のコンセプトは、各方面から広く支持されています。

例えば、ドイツを起点にした「Industry 4.0*2」。IIoTやAI(人工知能)などのデジタル技術を駆使して生産現場のスマート化を目指す潮流はグローバル規模で広がっています。OPC UAはこのIndustry 4.0においてデータ連携のための標準アプローチとして採用されています。

今まさに加速している、製造業をはじめとする産業分野全般におけるネットワーク化、デジタル化の流れを支えるものとして、今後OPC UAが果たすべき役割は、ますます大きくなっていくと考えられています。


*2:Industry 4.0
第4次産業革命といわれ、製造業のオートメーション化、デジタル化、コンピュータ化を目指す技術的なコンセプト。IoT(Internet of Things)、クラウドコンピューティングなどが含まれる。

※Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※Linuxは、Linus Torvaldsの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※iOSは、Cisco Systems, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標であり、ライセンスに基づき使用されています。
※Androidは、Google LLCの商標です。


この記事は2019年12月に掲載されたものです。