PID制御

装置内の温度や圧力を設定どおりに保つため、計測結果を基に調整する「フィードバック制御」の一つで、比例動作(P)、積分動作(I)、微分動作(D)の三つを組み合わせた制御方式。

生産物の品質維持などを目的に厳密な温度制御が求められる

工場やプラントにおける製造工程で、温度を一定に保つ。あるいはビル内の室温を快適なところで維持する。そうした様々な場面で、自動制御の技術が活躍しています。

特に製造工程においては、極めて緻密な温度制御が求められるケースも多々あります。半導体装置の製造工程などはその典型例です。我々が日ごろ手にしている携帯電話やスマートフォンなどの情報機器は、日進月歩の勢いで高性能になっていますが、そうした進化を背後で支えているのが半導体チップの集積度の向上です。集積度が上がるというのは、より小さい面積に複雑な回路を組み込めるようになったこと。これにより小型で高性能な製品を作ることができるのです。その回路の製造には、半導体の材料であるウエハー(円盤状の板)にフォトマスク(ガラス乾板)をかぶせて光を当て、パターンを焼き付ける方法がとられます。その際、1 ℃未満の微細な温度変化でもウエハーが膨張したり、縮小したりするなどしてパターンがずれてしまうため、製造工程の温度は厳密に保つ必要があります。

こうした緻密な温度制御を行うには、通常は設定温度(SP)とセンサで計測した現在の温度(PV)の差を捉えます。そして設定温度と比べて現在の温度が低ければコントローラがヒーターに加熱指示を行い、高ければ加熱を止める指示を出して温度を一定に保ちます。このように設定温度と現在の温度の差異を埋める方法をフィードバック制御といいますが、単純にヒーターをON/OFFする方法(ONOFF制御)では、温度が目標値を超えてしまうなど、極端なバラツキが生じてしまい、制御の安定性を保つことが困難です。この問題を解決するため用いられているのが、フィードバック制御の一種であるPID制御なのです。

温度、流量、圧力などの自動制御に幅広く適用される根幹的アプローチ

PID制御とは、P(比例動作)、(I 積分動作)、D(微分動作)の三つを組み合わせた制御を意味します。

基本的なフィードバック制御であるPは、任意の比例帯(温度や圧力の変化する幅)を設定して、制御偏差(設定温度-現在の温度)に比例した操作量(MV)を作り出すもの。比例帯域内における設定温度と現在の温度のズレに応じて出力の値を増減していくことにより、目標温度に近づけていくものです。例えば、設定温度が200 ℃で、コントローラが0~400 ℃の温度制御を行う場合、比例帯を10 %とした場合には、比例帯域が180~220 ℃となり、設定温度が180 ℃以下の場合に出力100 %、220 ℃以上では出力0 %となります。

比例帯を広げることで、制御がより緩やかとなり、目標温度に至るまでの時間は長くなるものの、目標値オーバーや温度のバラツキに関するリスクが抑えられることになります。

次にIの積分動作は、Pの比例帯に対して、周囲の環境に応じて入力値を変化させる動作をします。例えば加熱炉などの場合、炉内がいったん温まればヒーターの出力を必ずしも100%にしなくてよいと考えられます。そうした場合にIの積分動作によって、低い出力に変更するという操作を行います。

そしてDの微分動作は、現在の温度変化の状況によって比例帯を移動させ、操作量を変化させるという操作を行います。例えば温度が下がってきている状況では、急いで加熱を行う必要がありますが、温度が上昇している状況では、操作量を抑えることで設定温度を超えてしまうリスクを低減できるのです。

三つのパラメータを最適にチューニングすることで、外乱に対する応答が早く、かつ目標値を大きく上回ったり、下回ったりすることや、ON/OFFを繰り返すことなどを起こさずに安定性を保ちながら、目標値とのズレを最小化することができます。

PID制御はここで紹介した温度制御だけではなく、流量制御や圧力制御などにも幅広く適用されており、まさにあらゆる自動制御の根幹を成す不可欠な手法だといえるのです。


この記事は2014年08月に掲載されたものです。