超音波

人間の聴覚では聞こえない高い周波数帯の音のこと。気体中は伝わりにくく、水や金属などの物質の中でよく伝わるという性質を持つ。周波数が低いほど波長が長く、高いほど波長は短くなる。

タイタニック号事故が超音波技術発展のきっかけに

私たちの耳に届く「音」は、空気を振動させて伝わる波(音波)のこと。楽器などから発せられた音は、空気を伝わって人間の耳の鼓膜を震わせ、音として「聞こえる」ようになります。この音の波が1秒間に繰り返される回数を「周波数」と呼び、低音ほど周波数が低い低周波、高音ほど周波数が高い高周波となります。

人間の耳で感知できる音(可聴音)の範囲は、1秒間に20回の波が繰り返される20Hzから2万回の20kHzまでとされています。20kHzより高い周波数は、人の耳で聞き取れる音を超えているので「超音波」と呼ばれるのです。

超音波は可聴音よりも音波がまっすぐ進みやすいので指向性が高く、空気中よりも水中や固体の方が伝わりやすいという特性があり、水中ではかなり遠くまで届きます。イルカやクジラが水中で餌の位置を伝達したり、周囲の地形を把握したりできるのはそのためです。また、音には異なる物体にぶつかると反射する性質があり、指向性が高い超音波は狭い範囲でも反射します。この仕組みを利用しているのがコウモリです。コウモリは明るいところでもあまり目が見えないのですが、自ら発した超音波の反射を聴覚で捉えて障害物の有無を確認しているため、見えないところでも飛ぶことができます。

現在、超音波技術は世の中の様々なところで利用されていますが、その大きなきっかけとなったのは、1912年に氷山と接触したタイタニック号の沈没でした。この事故をきっかけに、水中で障害物を検出する技術の研究が始まったとされています。超音波の応用については海洋航海技術の発展とのかかわりが大きく、第1次世界大戦では、ドイツ軍のUボートを筆頭に、各国で潜水艦開発が進み、海中で他国の潜水艦を見つける技術の研究開発も加速しました。フランスの物理学者であるポール・ランジュバンは、圧力を電気に変換する「圧電効果」から着想を得て、電気エネルギーを超音波の振動に変換する圧電素子を開発。この圧電素子は超音波を発生させる超音波振動子として活用できると同時に、超音波を検出するセンサにも使われます。この発明がきっかけとなり、魚群探知機などのソナー技術*1が発展していきました。


*1:ソナー技術
音波によって物体を探知する技術。海中に向けて超音波を発射し、その反射波を捉えることで目的の物体を探す。

医療応用から産業応用まで、幅広く活用されている超音波

超音波は、医療の現場でも活用されています。体の上から器具を押し当て、胎内の赤ちゃんの様子を観察するときに使われる超音波診断装置がそうです。魚群探知機で利用している超音波は魚を探したい範囲によって15kHzの低周波から200kHzの高周波まで様々ですが、医療用の超音波診断装置では対象となる部位の深さによって3MHzから15MHzというかなり高周波の超音波が使われています。超音波はレントゲンやX線CTのように放射線被ばくのリスクがなく、体に負担を与えない検査法です。

メガネや貴金属の洗浄に使われる超音波洗浄装置は、超音波で水を振動させたときに発生する微細な気泡で汚れを落とします。一般の人にはなじみが薄いかもしれませんが、この仕組みは工業の現場でも応用されており、例えば半導体など微細な汚れも許されない製造工程では超音波洗浄機が使われ、強力な超音波で金属を加工する超音波加工機といった産業用機械にも活用されています。

液体中を伝わる超音波の速さから流量を計測する超音波流量計も

工場設備においては、耳や肉眼では分からない機器の異常や配管などの損傷部分を検出するのに超音波が使われています。例えば、エア漏れがあった場合、配管の微細な亀裂やつなぎ目から気体が噴き出す際に、人間の耳では聞き取れない音を発しています。このときに離れたところから超音波検出器で捉えることで、漏洩(ろうえい)箇所を検出し、修繕を行うことができるのです。

また、液体を計測する「流量計」においても超音波を利用することがあります。一般に使われているのは、配管に超音波センサを取り付けたクランプオン式超音波流量計です。

超音波以外にも電磁場を使った電磁流量計がありますが、超音波流量計は導電性のない液体や気体でも計測でき、クランプオン式の場合は金属配管や樹脂配管など、様々な配管に後付けが可能です。このように用途が広く計測精度もそれなりに高いといったメリットがあり、世界では今改めて超音波を使った技術が注目されています。

将来的には、非接触で位置計測などができる超音波の特性を活かし、無線技術の代替として使うことなども考えられます。超音波というシンプルな物理現象ではありますが、応用範囲はまだまだ広く、多くの可能性が秘められています。



この記事は2021年04月に掲載されたものです。