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ウェルビーイング

個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念のこと。1946年に世界保健機関(WHO)憲章草案に明記されたことで知られ、近年は働き方改革関連法に盛り込まれて話題に。

戦後間もなく誕生したWHO憲章がルーツ

昨今、あらゆる側面から「健康」が論じられています。SDGs*1の目標3に「すべての人に健康と福祉を」が掲げられ、人生100年時代において健康寿命の延伸は重要なテーマです。雇用や教育などの政策でも健康は欠くことができないキーワードになっています。

そうした中で、よく耳にするようになった言葉が「ウェルビーイング(Well-being)」。wellもbeingも一般的な英単語ですが、その二つを組み合わせた言葉が使われるようになったのは、国際連合の専門機関として1948年に誕生した世界保健機関*2(WHO)の憲章がきっかけだとされています。

1946年にニューヨークで開かれた国際保健会議で採択された憲章には「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.(健康とは、単に病気や虚弱な状態でないことではなく、身体的、精神的、社会的にも満たされた状態であること)」という健康の定義が明記され、ここにウェルビーイングという言葉が使われています。1951年には日本で、条約第1号となるWHO憲章が公布されました。

これによると、ウェルビーイングは「満たされた状態」という意味になりますが、近年は「良好な状態」「幸福な状態」「健康な状態」などと訳されることもあります。


より良い状態を目指すために指標や評価制度が整備される

「良好」や「幸福」の感じ方は、歴史、文化、気候、風土、人種や国などによっても異なります。例えば、水資源に恵まれた地域と水不足に悩む地域、あるいは食料に乏しい国と肥満に悩む人々が多い国の間で、「良好」や「幸福」と聞いて思い浮かべることはそれぞれに異なるのです。感じ方や価値観は異なっても、できるだけ多くの人々が共有できる物差しで、社会全体がより良い状態を目指すことができるように考えられたのが指標や評価制度です。

経済協力開発機構*3(OECD)では国内総生産(GDP)の代わりに、国民の豊かさや幸福度を評価する新指標としてウェルビーイングの概念を取り入れ、暮らしの11分野からなる「より良い暮らし指標(Better Life Index:BLI)」を設定し、それぞれに関する調査や分析を進めています。

また、建築空間の評価では米国の公益法人International WELL Building Institute(IWBI)による「WELL Building Standard®(WELL認証)」がよく知られています。これは建物内の空間が人に及ぼす影響に関する研究などをベースに構築された国際評価システムのこと。空気や水、光などの項目が一定水準以上に達している空間に対しては、第三者機関による認証が与えられるという仕組みです。3年ごとの更新が必要で、建物の運用においても認証取得時の水準の維持を求められます。

1日の8割以上を過ごす建築空間の健康性・快適性を追求

WELL認証は2014年に初版バージョンのv1でスタートし、2020年にv2に改訂されました。最新版であるv2の評価は「空気」「水」「食物」「光」「運動」「温熱快適性」「音」「材料」「こころ」「コミュニティ」という10の基本コンセプトからなります。

昨今は感染症流行の影響もあって、換気や空気の清浄度に対する関心が高まっていますが、このような取組みは主に「空気」のコンセプトで評価されます。建物内の清潔な空気を促進し、建物利用者の有害な汚染物質への曝露を最小限に抑え、健康面でのリスクを低減することが期待されています。

また、温度や湿度、気流など、居住者の温冷感(暑さ/寒さ)にかかわる取組みは「温熱快適性」のコンセプトで評価されます。温度制御などの基本的な空調制御の性能だけでなく、同じ温熱環境で暑いと感じる人もいれば、寒いと感じる人もいるというような、一人ひとりの感じ方の違いにも配慮した空調空間の設計や空調技術も求められます。さらには、環境計測や居住者へのアンケートで実態を確認しながら建物利用者の温熱環境への満足度を高め、人々の健康性や快適性・生産性を促進することが期待されています。

そのほかの例を挙げると、「水」コンセプトでは、居住者への十分な水分補給、健康面や衛生面でリスクの少ない水質などが求められ、「食物」コンセプトでは、果物や野菜の摂取の促進、より健康的な居住者の食品選択を促すカロリーなどの食品情報表示の推奨、「コミュニティ」コンセプトでは、緊急避難の対応やAEDの設置、ユニバーサルデザインや授乳スペース確保の推進など、様々な角度で建築空間を評価します。

WELL認証の例を簡単にご紹介しましたが、建築空間に関して、日本にはオフィスワーカーの環境に着目したCASBEE®ウェルネスオフィス(CASBEE-WO)という認証制度もあります。

人々は1日の8割以上を建物の中で過ごすとされるデータもあり、ウェルビーイング実現にはこのような建築空間の評価制度も重要な役割を果たすと考えられます。

※ WELL Building Standardは、Delos Living LLCの登録商標です。
※「CASBEE®」は、一般財団法人建築環境・省エネルギー機構の登録商標です。

*1: SDGs(Sustainable Development Goals)
2015年の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標のこと。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17のゴールと169のターゲットが示されている。

*2: 世界保健機関(World Health Organization)
人間の健康を基本的人権と捉え、「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(憲章第1条)を目的として設立された機関。

*3: 経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development)
世界の経済、開発途上国の援助、多角的な自由貿易の拡大を目的として協議し、各国政府とともに活動を行う国際機関。


この記事は2021年10月に掲載されたものです。