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計測と計量

計測とは、特定の物質や物体をある決められた基準に基づいて測定すること。計量とは、ある目的のために、対象の量を総合的に把握すること。

マンガ:湯鳥ひよ/ad-manga.com

製品/サービスの品質や安全を担保し、公正な取引きを実現するために

「計測」と「計量」。よく耳にする言葉ですが、意味の違いをご存じでしょうか?

計測とは、特定の物質や物体をある決められた基準に基づいて測るための技術や方法。計量は、計測の機能に加えて、ある目的のために対象の量を総合的に把握する技術や方法を意味します。

分かりにくいので、都市ガスを例に説明しましょう。欧米での都市ガスの取引は、熱量に基づいてカロリー単位で行われています。しかし、一口に都市ガスの熱量といっても、実はそう単純に量れるものではありません。というのも都市ガスは、メタンやエタン、プロパンなど熱量の異なる複数の成分で構成されているからです。そこで行っているのが、まず各成分の量を量り、それに個々の成分固有の熱量を合算することで都市ガス全体の熱量を算出する方法です。この場合、個々の成分の量を量るのが計測、それらを合算して都市ガスの熱量を出すのが計量といえます。

このような計測と計量は、産業界のあらゆる場面で行われています。そしてそこでは、正しい計測・計量が、製品やサービスの品質を一定に保つために不可欠となります。ばらつきがあっては、ユーザーに常に安全・安心を提供することができなくなるからです。そのために、精度の高 い計測・計量が必要となるのです。

今、特にニーズが高まっているのが、工場やビルなど施設全体のエネルギー消費量を総合的に把握・評価するための計測・計量です。工場やビルには、数多くの設備や装置が稼働しており、中で働くスタッフの活動環境も一様ではありません。このように変動要素が多い環境下で、正確にエネルギー消費量を計測・計量する手法と技術が法規制遵守や事業の継続(Business Continuity)の観点から求められているのです。

グローバルな連携と適用範囲の拡大に向けさらなる進化を

正確な計測と計量を継続的に行うために必要なのは、基になる「基準」。具体的には、原器と呼ばれる標準器になります。例えば長さを測るメートル原器、質量を量るキログラム原器などです。これらがわずかでも狂っていたら、出される数値が正しい値になるはずがありません。そのため いずれの原器も、正確を期すために性質が変化しにくい材料を使用することになります。ところが、時間の経過とともに、どうしても微妙な誤差は生じてしまいます。そのため最近は、原器のような“人工物”によって基準を決めるのではなく、より普遍的な物理定数を利用して「定義」するよう になってきています。例えば、長さの1mは、1秒の299,792,458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さと定義し、質量についても、アボガドロ定数※1などを用いた定義が検討されています。

国際的な取引や連携を実現するため、国際単位系(SI)※2を採用する動きも進みつつあります。国際単位系の基本単位には長さのメートル(m)、質量のキログラム(kg)、時間の秒(s)、電流のアンペア(A)、熱力学的温度のケルビン(K)などがあります。天気予報の気圧の単位 が、ミリバール(mbar)からヘクトパスカル(hPa)へと変更されたのも、国際単位系採用によるものです。といって、すべてが変更されたわけではありません。例えば熱量は、国際単位系だとジュール(J)で示しますが、急に単位が変わると消費者を混乱させてしまうなどの配慮から、食品では現在でも使い慣れたカロリー(cal)が使用されています。

グローバル化が進みFTA※3など自由貿易が拡大する中で、計測と計量はますます重要な役割を果たすことになります。基準が正しくなっていないと取引量に差が出てしまうなどの困った問題が起こるからです。そこで、国際標準や国際単位系の採用だけでなく、業界などで取り決めた様々な基準について、対象国間で相互認証を実現する必要も出てきています。これを実現できなければ、製品やサービスの自由な流通、連携は生まれないで しょう。グローバル化が進むことで、計測・計量もさらなる進化が求められるようになっているのです。


※1 アボガドロ定数(Avogadro constant)
物質量1mol中に含まれるその物質を構成する粒子の総数。

※2 国際単位系
1960年の国際度量衡総会で採択された、国や分野ごとに違っていた単位を、国際的に統一した単位系。SIはフランス語で、système international d'unitésの略。

※3 FTA(Free Trade Agreement)
自由貿易協定。物品の関税、その他の制限的な通商規則、サービス貿易等の障壁など、通商上の障壁を取り除き、自由貿易を行うための取り決め。

この記事は2013年10月に掲載されたものです。