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スマート保安

画像や温度、圧力、流量などの収集されたデータによる科学的根拠に基づき、プラントの操業やインフラの稼働にかかわる設備・サービスの状態を正確に把握し、異常発生の予兆の検知や非常事態への素早い対応を可能にすることで、安全性、安定性を担保する保安アプローチ。

マンガ:湯鳥ひよ/ad-manga.com

プラント操業を巡る課題をデジタル技術の活用により解消

近年、IoTやAI(人工知能)といったデジタル技術が急速に進展し、人々の生活や働き方も大きく変わってきています。モノづくりの世界では、「Industry 4.0*1(第4次産業革命)」の潮流の中で、製造工程にかかわる情報をネットワーク経由で収集し、AIなどで学習・判断。生産活動の自動化や最適化、自律化を図るといった、スマートファクトリー、スマートプラントの実現に向けた取組みも加速しています。

こうした現場のスマート化は、単に生産効率の向上に寄与するだけでなく、製造業が直面している課題の解決に役立つものとしても注目されています。特に日本の石油・化学プラントでは高経年化した設備問題によりベテランでも経験したことのないような予想外のトラブルへの懸念も高まっています。熟練層が退職していく中、今後、現場では就労人口の減少により人材確保が難しくなるため、プラント操業にかかわるスキルやノウハウの伝承も切実な課題となっています。

これに対し、IoTやAIなどのデジタル技術を活用し、設備の状態を常に把握・監視することや、労働生産性の高い操業スタイルを実現し、プラント操業の安全・安定性を高める取組みが「スマート保安」です。

高機能センサで稼働状態を細かくセンシング

スマート保安について今日では、様々な取組みが考案、実践されています。例えば、プラント操業を支える調節弁などの重要機器の健康状態を可視化するシステムもその一つ。重要な設備や機器にはそれぞれ高機能なセンサを搭載し、稼働状態を詳細にデータ化。その分析・解析を通じて、通常の監視や点検では捉えられない不具合やその予兆をいち早く捉えます。また個々の機器ではなく、プラント操業全体の視点から不調・変調をあぶり出し、操作の安全、安定に寄与するといったシステムなども注目を集めています。これは、DCS*2などの監視・制御システムから収集される各プロセスや設備にかかわるデータを活用し、予兆を捉えて未来に起こる異常に備えるというものです。

そのほか、近年幅広い分野で利用が進んでいるドローンにも、スマート保安を支える重要なツールとして期待が寄せられています。例えば普段、人や固定カメラでは監視が難しい高所箇所の様子をドローンで撮影し、広範囲にわたる設備監視を行うなど、取組みが推進されています。

保安規制の緩和や支援施策など行政も推進のための取組みを加速

こうしたスマート保安の推進に向け、行政においては、経済産業省を中心に各産業分野での保安規制の見直しをはじめ、様々な施策が進められています。ドローンの活用についてもプラントでは爆発性雰囲気を生成する可能性のあるエリアや火気の制限のあるエリアが存在するため、バッテリーを搭載したドローンの飛行は落下時の設備破損や火災、爆発の危険性から難しい状況でした。しかしドローンの有用性の高さから国がリードして安全対策や飛行計画の立案など、具体的な運用方法をガイドラインとしてまとめることにより、ドローンの活用が可能になってきています。また国はAIやセンシング、ロボットなどといった新技術を保安領域で活用することを念頭に、関連する保安規制についての総点検を実施。その結果を踏まえた規制の緩和策を継続的に進めています。

その一つが、経済産業省が2017年4月に運用を開始した「スーパー認定事業者制度」です。もともと高圧ガス保安法では、民間事業者の自主保安を促進するため、保安組織の整備等を自主的に進める事業者に対し、自主検査・連続運転といったインセンティブを与える「認定事業者制度」を設けています。これに対し、同制度はスマート保安を推進するため、IoTやAIなどを活用しさらにレベルの高い自主保 安を実施している高圧ガス取扱事業者を「スーパー認定事業所」として認定し、当該事業者に対して8年を上限に自ら設定した期間での連続運転を認めるなど、規制を合理化するものです。

そのほか、経済産業省では2020年6月にスマート保安の基本的な考え方を明確化。その重要性と取組みの方向性を、政府ならびに民間事業者の間で共有することを念頭に「スマート保安官民協議会」を開催しました。そこでは、スマート保安関連技術の開発・実証・導入のための仕組みづくりや人材育成、保安規制の見直しなどにかかわる議論が交わされています。

カーボンニュートラルな社会が目指される中、再生可能エネルギーを活用した設備の導入が進むなど、今後、産業界においては新たな生産のあり方が求められていきます。そういった中では、これまで想定し得なかった新たな課題が生じる可能性があります。そうした事態に対応していくためにも、データを活用し、科学的根拠に基づく適正な対応を行っていくスマート保安はますます重要なものになるでしょう。

*1:Industry 4.0
第4次産業革命といわれ、製造業のオートメーション化、デジタル化、コンピュータ化を目指す技術的なコンセプト。IoT、クラウドコンピューティングなどが含まれる。

*2:DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。


この記事は2022年04月に掲載されたものです。