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アクチュエータ

電気や空気圧、水圧、油圧、磁力、熱などのエネルギーを、直線運動や回転運動といった、任意の機械的動作に変えるための仕組み。産業機器をはじめ、家電や自動車、電車、スマートフォン、さらには医療機器やゲーム機など、様々な製品に組み込まれている。

マンガ制作:株式会社シンフィールド

社会生活のあらゆる場面で様々なアクチュエータが活躍

私たちは、歩く、しゃがむ、物をつかむといった生活をする上で必要な動作をするときに、体にあるいくつもの関節を機能させています。これは人間や動物に限ったことではありません。工作機械や車をはじめ、私たちの日常生活や社会活動を支える様々な物にも人間の関節のような機構が組み込まれ、それが機能することで回転したり、直線運動をしたりしているのです。この人間でいう関節のような役割を担う機械要素が「アクチュエータ」です。アクチュエータは元々「動作させるもの」という意味。電気や空気圧、水圧、油圧などのエネルギーを、モータをはじめとする動力源を介して、直線運動や回転運動、らせん運動といった機械的な動作を引き起こす装置全般を指します。アクチュエータを組み込んだ機器は、日常生活の中にあふれており、言い換えればアクチュエータなしには社会生活は成り立たないといえます。

例として、会社に出社するというシーンを想定してみましょう。駅の自動改札機にICカードをかざすとゲートが開く、電車の乗降ドアが自動的に開閉する、立ち寄ったコンビニでは入り口の自動ドアが開き、レシートには買ったものが印字される、会社が入っているビルに到着するとエレベータが目的の階へと連れていってくれる、といったすべてがアクチュエータの働きによって実現されています。

また、水道の蛇口もアクチュエータですが、建物や工場において各種流体の流れをコントロールするバルブにもアクチュエータが使われています。


時代とともにさらに高精度化し、複雑な動作を行うことが可能に

アクチュエータの歴史は古く、古代ギリシャにおいては、蒸気を利用した自動ドアに類する仕組みが発明されていたともいわれます。また、中世からは、風車や水車が生産活動に広く用いられ、さらに産業革命以降の機械化が進んだ近代においては、蒸気機関や内燃機関などを皮切りに、各種産業や運輸などを担う多種多様なアクチュエータが時代の進展とともに次々に生み出されてきました。今日では工場設備や自動車、航空機、医療機器、オフィス機器、家電やスマートフォンなど様々な製品に組み込まれています。

近年のデジタル技術の発展に伴い、アクチュエータは、現在も進化を続けています。各種センサや信号処理、制御回路と一体化させたスマートアクチュエータもその一つです。IoTやAIなどのデジタル技術を応用することで、高度な制御や複雑な動作がかなうとして、ロボットをはじめとする精密機器などにおいて期待が寄せられています。

また、電気や空気圧、水圧、油圧を利用した動力源とは異なり、材料そのものが変形する性質を利用して物を動かす技術も大きな注目を集めています。これはソフトアクチュエータと呼ばれ、小型軽量で柔軟性があるのが特徴です。生体の筋肉や関節同様のしなやかな動きができるため人工筋肉に応用され、製造や建設、輸送などの現場におけるパワーアシストスーツやウェアラブルロボットのほか、医療や介護分野で患者のリハビリや高齢者の自立支援、心臓や肛門などの人工臓器といった分野での応用も進んでいます。

リアルな疑似体験が可能に注目される触覚技術の領域

昨今、スマートフォンのディスプレイ上のアイコンを押したときに、物理的なボタンを押しているかのように感じさせたり、あるいはゲーム機のコントローラに、シーンに応じた振動を与えて利用者の臨場感を高めたりするような仕組みにみられるハプティクス(触覚技術)が活用の場を広げています。これまでこうした技術は、携帯電話のマナーモードに用いられるバイブレータのように、ユーザーに気付きを与えるという用途に限られたものでしたが、アクチュエータが進化し、細かな制御や精密な機械的動作が可能になったことにより、気付きだけでなく、リアルな動きや材料の質感を疑似体験する技術が実現しました。このハプティクスは、近年利用が進むメタバース*1での活用も期待され、今後のアクチュエータの進化の方向性を示すものとして大いに注目されます。

私たちの生活の利便性を向上させ、ありとあらゆる場所に存在するアクチュエータ。意識して目を向けてみると、たくさんの物にアクチュエータが使われていることに気が付くことと思います。労働力人口の減少やデジタルトランスフォーメーション(DX)*2 推進といった社会的課題の対応策として、今後アクチュエータの役割がますます大きくなることが予想されます。


*1:メタバース
アバター(自分の分身となるキャラクター)により現実世界と連動しながら活動できる、インターネット上に構築された仮想空間のこと。

*2:DX(Digital Transformation)
進化したデジタル技術を浸透させることにより、人々の生活をよりよいものへと変革すること。

この記事は2023年10月に掲載されたものです。