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ディープラーニング(深層学習)

AI(人工知能)を実現する技術として最近注目を集めている機械学習の手法。膨大な量のデータを多層ニューラルネットワークに学習させることで、人間のような汎用(はんよう)性の高い知能を実現することが期待されている。

マンガ:湯鳥ひよ/ad-manga.com

赤ちゃんが言葉を学ぶようにAI自ら学習して判断する

ここ数年、AI(人工知能)が急速に賢くなっているように感じませんか? スマートフォンに搭載された音声アシスタントや自動翻訳サービスなどの各種サービスで、AIは私たちの生活を便利にする手助けをしています。

このようなAIの進歩を促したといわれているのが「ディープラーニング(深層学習)」です。最近耳にすることの多いディープラーニングは、ニューラルネットワークを利用した機械学習の一つ。機械学習とは、大量のデータから繰り返し学習させることで最適解を導けるようにしていく手法のことです。その手法の中でも、ニューラルネットワークは、脳のニューロン(神経細胞)の情報伝達の仕組みを模して作られたものです。膨大な数の“問題データ”とその問題に対する“正解データ”を与えると、そこから問題と正解の関係を学習し、まだ正解を与えられていない新しい問題に直面したとしても、正解を予測することができるというものです。

例えば、赤ちゃんはお母さんが繰り返し語りかけることで言葉を覚えます。イヌを見て「ワンワン」だと分かるようになるまで、お母さんは何度も「ほら、ワンワンよ」と語りかけます。最初のうちはネコを見ても「ワンワン」と言いますが、たくさんのイヌやネコを見て、自然に「ワンワン」「ニャンニャン」を区別できるようになるのです。

イヌといっても、色や大きさ、体形、毛の長さなど見た目にはかなり違いがあります。それでも、目の前の動物を見てイヌだと認識できるのは、たくさんのイヌを見て、その特徴を感覚的に認識したからだと考えられます。このようにディープラーニングで学習していく仕組みは、赤ちゃんがものの名前を覚えていく様子にとても似ています。

大量のタグ付きデータから多層構造により特徴を抽出

ディープラーニングでは、できるだけたくさんの「問題と正解のセット(データセット)」を持っていることが重要になります。何の答え(タグ)もなく、ただの画像データを大量に与えられても意味がありません。「イヌ」というタグが付いた大量のイヌの画像があって初めて学習することができます。

従来のAIでは、例えばトマトなら「赤い」「丸い」「緑色のヘタが付いている」といったデータの特徴を、一つひとつ細かく教え込む必要がありました。ただし中には黄色のものや形がいびつなトマトもあり、すべての特徴を教えるのは現実的に不可能でした。

その点ディープラーニングには、自ら特徴を抽出することができるという画期的な能力があります。今まで画像や音声など情報量が多く、特徴の抽出が難しかったデータでも、学習に基づいてこれらを抽出し、問題を解くことができるようになりました。

与えられたデータセットから学習し、特徴を抽出できるディープラーニングは、多層構造のニューラルネットワークであり、複雑な情報を認識することができます。

入力された画像データはピクセル(画素)単位まで分けて解析し、色、形、より複雑な形と、層ごとに区分され、次の層のデータとつながり合っていきます。こうしていくつもの層を経て色や形の組み合わせによる複雑な特徴を抽出します。つまり、ディープラーニングの「ディープ」とは、この層の深さを指しているのです。

こうした多層での解析が可能になった最大の要因は、コンピュータの計算能力が飛躍的に向上したことにあります。かつてのスーパーコンピュータ並みの計算をパソコンレベルでできるようになり、大量のデータ処理を必要とするディープラーニングの精度も一気に向上しました。

たくさんのデータを入手しやすい消費者向けを中心に発展

ディープラーニングの代表的な活用例として、カメラやGPSの情報から周囲の環境を認識する自動運転技術や、音声を理解するスマートスピーカーがあります。そのほかにもウェブの検索技術やSNS上で写真に自動でタグ付けする機能など、様々な分野で利用されています。こうした機能やサービスは、インターネットを介して大量のタグ付けデータを入手しやすい消費者向けサービスが中心です。

ディープラーニングを産業応用しようという取組みもありますが、各業界、各企業で用途が異なり、必要なデータも多種多様。消費者向けと異なり、収集できるデータ量も限られているため、運用するために必要な大量のタグ付けデータの収集が困難です。そのようなデータ量の問題を解決するために、少ないデータ量でもうまく特徴を抽出するアルゴリズムの研究も進められています。

今後さらにコンピュータの処理能力が向上すれば、より複雑な問題も解けるようになるかもしれません。もしくは、全く違う仕組みによるAIが登場する可能性もあります。私たちにとってますます身近な存在になりつつあるAIは、今後どのような発展を遂げるのでしょうか。

この記事は2018年08月に掲載されたものです。