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環境への取組みに対する第三者意見

第三者意見交換会様子

伊原 学教授とazbilグループ環境責任者

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 伊原 学教授から、azbilグループの環境への取組みに対して第三者意見をいただきました。

2050年までに脱炭素化する日本政府の方針が発表され、世界は脱炭素社会に向けて加速している。一方で、脱炭素化と経済的優位性をどのように確保していくのかが問われている。太陽電池などの再生可能エネルギーによる電源は、これまでコスト高とみられていたが、太陽電池システム価格は、特に2008〜2013年の5年間で約半分へと低下した。また、2016年には、日照時間の長いアブダビにおいて、メガソーラー発電所からの電力を2.42セント(US$)/kWh(Levelized Cost of Electricity : LCoE )もの低価格にて供給する契約の締結が報道されている。これらの現状と技術開発の可能性を考慮すると、CO2排出量の削減と経済性の観点から、今後も太陽電池を中心とする再生可能エネルギー由来の電源が増えていくと予想される。しかし、気象条件の急激な変化などによって変動型電源の発電量が大きく変動した場合、消費と供給のバランスが崩れ、大規模な停電が生じる危険性がある。現在は、火力発電の出力調整やエリア外への送受電、余剰電力で水をくみ上げる揚水発電などを使って調整しているが、調整力総量や手法はエリアによって様々である。今後は、より弾力的な経済負荷配分制御による調整力確保の議論が必要だが、同時に調整力として水素をエネルギー媒体として利用する発電技術や蓄電池技術が重要になる。つまり、地球温暖化抑制と経済性とを両立させるためには、再生可能エネルギーの利用拡大が最も有力な手段の一つであり、さらに電力系統の安定化のためは、すべての電源の弾力的な運用と、カーボンフリー水素(製造時にCO2排出がほとんどない水素)を含めた広義な蓄エネルギー技術の推進が求められる。

水素エネルギーはその役割、位置づけによって二つの水素に分類できる。CO2排出削減という制約条件下で、エネルギー資源をグローバルに有効活用するための重要なオプションと位置づける「グローバル水素」と、変動型再生可能エネルギーを大量導入する際の電力平準化という制約下で、ローカルな蓄エネルギーとしての重要なオプションと位置づける「ローカル(蓄エネ)水素」に分類できる。グローバル水素では、水素を地球規模で輸送するため、液化水素、アンモニア、メチルシクロヘキサンなどのエネルギーキャリアを利用する。この場合、安価な太陽電池電力の利用や、CCSと組み合わせた安価な石炭(褐炭)の利用などのメリットがある。一方で、ローカル水素は、グローバル水素で必要な「エネルギーキャリア製造、脱水素」に関わるCO2排出量およびコストが不要となるメリットを持つ。また、マイクログリッド内で、蓄電池とともに系統の安定化に貢献する蓄エネルギーシステムにもなりうる。蓄電池は、比較的短い時間スケールでの速い充放電に適したデバイスであり、水の電気分解によって水素を製造し、電力を水素として蓄える水素PtoG(Power to Gas)システムは長期間のエネルギー貯蔵に適していることがわかっている。

これら二種類のカーボンフリー水素エネルギーは、CO2排出量低減の価値、蓄エネルギーの価値、エネルギー安全保障上の価値、新たな産業の創出や経済波及の価値など多様な価値を持つ。また、発電部門ではカーボンフリー水素のCO2削減効果が高く、一方、自動車部門では、燃料電池自動車の輸出など、大きな経済波及効果を持つと試算されている。

一方で、これらの要素技術研究開発によって、蓄エネルギー技術などの性能が革新的に向上しても、電力系統を安定的に制御供給するシステム技術がなければ、再生可能エネルギー由来の電源比率を増加させ、CO2排出量-80%削減し、地球温暖化抑制に貢献することができない。つまり、エネルギー要素技術とシステム技術の融合による技術開発と社会実装がこれからの社会に求められている。

このような背景のもと、 “私たちは、「人を中心としたオートメーション」で人々の「安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境に貢献します。” とするazbilグループ理念は非常に意義深い。近年、地球環境問題への対応が社会貢献的位置付けだけでなく、ESG投資、時価総額などの観点から、実質的な企業経営に影響を与え始めていることから、今後もこれらの理念に基づくさらなる事業展開、脱炭素社会への貢献に期待したい。

azbilグループでは、以下の3つの重点事業を柱にしている。

1. アドバンスオートメーション事業 (工場など)
2. ビルディングオートメーション事業(ビルなど)
3. ライフオートメーション事業(ガス、水道、住宅など)

特に、アドバンスオートメーション事業では、ビッグデータ、人工知能活用技術開発の推進が期待される。ビルディングオートメーション事業では、azbilグループの技術的強みであるシステムの省エネルギー化技術に加え、小規模の電源を情報システム技術で統合して系統と連携するVPP(Virtual Power Plant)技術の開発、ビジネス展開に期待したい。また、ライフオートメーション事業においては、部屋の給気/排気風量制御や住宅の全館空調など総合的な感染症対策のベース技術としての展開が重要になると考えられる。今後、大学や関連企業とのグローバルな連携も視野に入れ、以下の二つの観点も考慮した技術開発、事業展開によって、

・ローカルH2の活用への貢献
・一次エネルギーである再生可能エネルギー導入拡大への貢献

脱炭素、持続可能なエネルギー社会構築に向けたリーディング企業としての貢献に大いに期待したい。

中央監視室

中央監視室

太陽光発電設備

太陽光発電設備


東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 伊原 学教授

東京工業大学伊原教授

プロフィール

  • 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授
  • エネルギー・情報卓越教育院 院長
  • 東工大 InfoSyEnergy 研究/教育コンソーシアム 代表

略歴

1994年 東京大学工学系研究科化学工学専攻 博士課程修了
1994-1997年 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻(化学工学専攻より改組) 助手
1997-2002年 東北大学 反応化学研究所 助手
2002-2004年 東北大学 多元物質科学研究所(改組) 助手
2002-2006年 科学技術振興機構 さきがけ研究員(プロジェクト代表)兼任
2004-2010年 東京工業大学 炭素循環エネルギー研究センター(理工学研究科化学専攻、物質科学専攻 併任) 助教授
2010-2015年 東京工業大学 大学院理工学研究科 化学専攻 准教授
2009-2012年 東京工業大学 環境エネルギーイノベーション棟(EEI 棟)建設プロジェクトリーダー(エネルギーシステム設計担当)
2012年 フランス国立応用科学院リヨン校(INSA de Lyon,リヨン大学) 客員教授(兼任)
2013-2014年 公益社団法人 化学工学会 エネルギー部会 部会長
2015-2016年 東京工業大学 大学院理工学研究科 化学工学専攻 教授
2015年 東京工業大学 環境エネルギー機構 副機構長
2015-2018年3月 東京工業大学 学長補佐
2015年 中国 四川大学 客員教授(称号付与)
2016年-現在 東京工業大学 物質理工学院応用化学系 教授(改組)
2016年4月-2018年3月 東京工業大学 エネルギーコース 教育委員長
2016年-現在 東京工業大学 科学技術創成研究院 グローバル水素エネルギー研究ユニット 主幹事
2019年11月-現在 東京工業大学 InfoSyEnergy 研究/教育コンソーシアム 代表
2020年12月-現在 東京工業大学 エネルギー・情報卓越教育院 院長