第三者意見
環境開示に対する第三者意見

シェルパ・アンド・カンパニー株式会社 取締役 Chief Sustainability Officer
大阪公立大学経営学研究科 客員准教授
中久保 菜穂 氏
アズビル株式会社の環境領域に関する開示内容を拝見し、独立した第三者の視点に基づき所見を述べます。
高く評価するべき点
貴社の主力事業であるオートメーションは、その事業成長そのものが環境改善に寄与し得る点に大きな特徴があります。こうした特徴は、持続可能な社会へ「直列」につながる貢献を実践するという、貴社独自のメッセージにも表れています。
また、この考え方は、経営レベルでのコミットメントとしても具体的に示されています。例えば役員報酬(株式報酬)のKPIにおいて、非財務指標である「CO2削減効果」に20%という高いウェイトを配分している点は、環境課題の解決を企業の成長と結び付けた経営課題として位置付けていることを示すものであり、目標達成に向けた経営の強い意思の表れとして評価できます。
さらに、こうしたコミットメントが実際の成果として示されている点も重要です。自社の事業活動に伴うGHG排出量(スコープ1・2)について2030年度削減目標を前倒しで達成したほか、スコープ1・2・3すべてで第三者検証を取得し、SBTiのネットゼロ目標認定を獲得しています。これらの成果は、科学的根拠に基づいた着実な取組みの実行とデータの信頼性を示すものといえます。さらに、オートメーション事業を通じた「顧客現場におけるCO2削減効果」の重要KPIとしての定量化は、環境課題の解決を事業機会として捉え、企業価値の創出につなげている点において評価できます。
加えて、情報開示の透明性も高い水準にあります。各拠点における水使用量や排水水質、PRTR法対象物質の排出量などについて詳細なデータを開示しており、地域社会への説明責任という観点からも十分な情報提供が行われているといえます。このような開示姿勢は、外部評価機関からの評価にも反映されているものと考えられます。
高度化に向けた課題
今後の高度化に向けた論点の一つとして、環境課題が財務に与える影響の可視化が挙げられます。これを示していくことは、投資家を含む多様なステークホルダーに対して、企業がどのように持続的な成長を実現しようとしているのかを理解してもらう上でも重要です。この点、貴社では気候変動対応について、物理的リスクおよび移行リスクに関するシナリオ分析を通じて一定の財務的影響の整理が行われています。一方でSSBJ基準*では、移行計画の実効性を示す観点から、施策の実行に必要な資源や投資の考え方を明確に示すことが求められています。貴社の移行計画では「再生可能エネルギーの利活用」や「社用車のハイブリッド車・電気自動車への段階的切替え」などの施策が示されていますが、これらについて、具体的な投資額や資金計画の考え方を示していくことで、計画の実効性をより明確にすることが期待されます。
また、気候変動以外の環境領域についても、財務との関係をより明確に示していくことが重要と考えられます。例えば自然資本の観点では、水ストレス地域に所在する海外拠点の操業リスクが、将来的に売上やコストにどの程度の影響を与える可能性があるのかについて示していくことが期待されます。
新たな技術潮流を踏まえた期待
貴社はAI最適生産計画立案システム「VIRTUAL PLANNER™」やAI品質ナビゲーションシステム「Deep Anchor™」、オンライン異常予兆検知システム「BiG EYES™」などの商品DXを通じ、生産性向上・エネルギーの効率化を図っている点が特徴的です。これらは貴社のオートメーション事業の強みを活かした環境推進の好事例として注目されます。
一方で、社会全体でAI利用が急速に拡大する中、データ処理の増加に伴う電力消費や水使用などが新たな環境課題として指摘されています。貴社には、自社システムにおけるAIの環境負荷への配慮にとどまらず、オートメーション事業を通じたデータセンターの省エネ化などの技術を展開することで、社会全体の環境負荷低減を牽引していくことを期待します。
*SSBJ基準:サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が公表したサステナビリティ開示基準。
VIRTUAL PLANNER、Deep Anchor、BiG EYESは、アズビル株式会社の商標です。
