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環境への取組みに対する第三者意見

東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 梅田 靖 教授から、azbilグループの環境への取組みに対して第三者意見をいただきました。

第三者意見交換会様子

梅田 靖 教授 と azbilグループ環境責任者

筆者は、2022年10月25日にアズビル株式会社藤沢テクノセンターを訪問し、太陽熱ソリューション、温熱環境実験室、BOSSセンターなどを見学させて頂くとともに、アズビル株式会社の企業概要、サステナビリティ経営の方針、湘南工場生産ラインなどの紹介を受け、意見交換を行った。さらに、2022年12月13日に講演会を開催させて頂き、意見交換を行った。これら一連の活動に基づき、第三者意見を述べさせて頂く。

まず、アズビル株式会社の技術には確かなものがあり、真摯にものづくりに取り組んでいる。これを、アドバンスオートメーション事業、ビルディングオートメーション事業、ライフオートメーション事業に展開している。いずれも安全性と信頼性が強く求められる社会のインフラストラクチャを支える重要な事業であり、技術を磨くこと、真摯にものづくりに取り組む点は今後とも是非継続していただきたい。こういった企業の強みを新しい時代のサステナビリティ経営といかに切れ目なく結合、統合化、一体化して行くかという課題はアズビルに限らず、サステナビリティ経営の先進企業がどこも答えを持たず、日々試行錯誤しながらチャレンジしているところであろう。アズビルはこの面でも真摯に取り組んでいると見受けられた。筆者のアズビルに対する印象は、この「真摯」という言葉が似合う企業ということである。

言うまでもなく、今やサステナビリティを企業活動の「中心に」置くことが必須のこととなっている。この意味として筆者は3つの点を挙げている。ESG金融などがこれらを強力にプッシュしている。(1) 旧来の意味でのCSR (Corporate Social Responsibility)でよく見られたように、環境部門など担当部門だけが頑張って、企業内の多数派は無関心という状況は許されず、企業の構成員全てがサステナビリティに関する自社のビジョン、目標を認識し、自らの業務がサステナビリティ実現にどのように貢献しているかを常に考えるようにすべく、経営陣がリードすることが必要となる。(2)筆者の分野ではAbsolute Sustainability (いわば、絶対量で測るサステナビリティ)という用語が使われるが、ゴミを減らそう、できるだけリサイクルしようという相対的アプローチではダメで、2050年に温暖化ガス排出量をゼロにするといった定量目標を設定し、それに向けてPDCAサイクルを回し続ける必要がある。(3)市場を戦略的に分析し、売れる製品、サービスを供給するだけではなく、企業理念、ビジョンを語り、パーパスを共有し、その発露としての製品やサービスの提供が必要となる。

これらの点について、アズビル株式会社は真摯に取り組み、やるべきことはしっかりやっており、充分に及第点を与えられる。特に、azbilレポート2022に記載されている企業理念から始まり行動指針、行動基準、経営戦略を経て持続可能な社会へ「直列」に繋がる全体像が大変素晴らしい。これを実践し続けること、特に、前の段落でも述べたように、製品やサービスの開発、ビジネスの現場とこの絵がいかに一体化して行くかという点が非常に重要である。さらに、(3)に関連して、外部への発信はもっともっと必要であろう。この分野の一応の専門家である筆者にもアズビルのことは余り聞こえてきていなかったというのが正直な所である。B2Bメインのビジネス形態なので一般への浸透は難しい点もあるが、今後は、B2B間でもカーボンフットプリント情報、有害物質情報などサプライチェーンに跨がる具体的な情報交換の必要が高まるにつれて、サステナビリティ経営へのスタンスも相互に評価されるようになる可能性がある。

筆者の専門である資源循環関連で言えば、最近急速に注目が集まっている「サーキュラー・エコノミー」には2つの柱があると考えている。1つは、もちろん、資源循環を社会的に定着させようという流れであり、もう1つは、大量生産・大量販売ビジネスから脱却し、価値を提供するビジネス形態への転換である。近年の議論は後者のウエイトの方が大きくなっている。10月25日にリモートビル管理も見学させて頂いたが、この点でもアズビル株式会社は実際にビジネスを展開しているし、価値提供ビジネスがやりやすいポジションにあると思う。質の良い製品を供給した上で、オペレーション&メンテナンスによりサービスで長く稼げるビジネスを展開すること、および、IoT、データ処理、知識処理などアズビルが得意とする技術を活用しながら付加価値をより高めて行くことが望ましい姿であると考える。その意味で、インダストリアルオートメーションプロダクト事業の今後が期待される。

筆者のもう一つの専門であるエコデザインに関して言えば、「全ての新製品をazbilグループ独自のサステナブルな設計とする」、「全ての新製品を100%リサイクル可能な設計へ」という2つの目標は適切であると考える。前者のサステナブルな設計をどう指標化するかは各社悩んでいるところであり、正解はない。それぞれの製品ライフサイクル全体を見据え、サステナビリティ・経済性両面で適切な目標設定を模索するしかない。後者に関しては、サーキュラー・エコノミーの最後の砦としてリサイクルは重要であるので(第1選択ではなく)、適切である。「全ての」というところが重要であり、アズビルの製品はどれでもリサイクルできるという評判が得られるとその意義は大きい。

最後に、今後のアズビルへは、azbilレポート2022に記載されている「直列」に繋がる全体像を日々の企業活動、特に、製品やサービスの開発、ビジネスの現場で具現化することを模索し続け、徐々に高度化する体制を構築し、実践することを期待する。


温熱環境実験室

温熱環境実験室

太陽光発電設備

太陽熱ソリューション(集熱器)

東京大学 大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 梅田 靖 教授

東京大学梅田 靖 教授

プロフィール

  • 東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 教授

略歴

東京大学工学部助手、講師を経て、平成 11 年 4 月より東京都立大学大学院工学研究科機械工学専攻 助教授、平成 17 月 2 月より大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻 教授。平成 26 年 1 月より現職。

主な著書

インバース・マニュファクチャリング ハンドブック(丸善)、エコデザイン革命(丸善)、逆工場(日刊工業新聞)、サステイナビリティ・サイエンスを拓く -環境イノベーションへ向けて-(大阪大学出版会)、サーキュラーエコノミー~循環経済がビジネスを変える(勁草書房)がある。

主な受賞歴

平成 10 年精密工学会賞, 1998、10 周年記念 IMS 論文賞, 1999、平成 13 年度設計工学会論文賞, 2002、日本機械学会設計工学・システム部門 平成 18 年度業績賞, 2006、EcoDesign2007 Best Paper Award,2007、ASME DFMLC 国際シンポジウム Best Paper Award, 2010、日本機械学会設計工学・システム部門 平成 28 年度功績賞, 2016、EcoDesign2017 Best Paper Award, 2017、東京大学工学部 2018 年 Best Teaching Award、日本機械学会生産システム部門 令和4年度功績賞, 2022。