ガバナ

都市ガスを需要家に供給する際、家庭や工場のガス機器で安全に使えるように圧力を下げる装置、またはその設置場所のこと。地震発生時に導管から漏れたガスが火災の原因にならないよう、ガス供給を停止する役割も持つ。

マンガ:湯鳥ひよ/ad-manga.com

天然ガスから製造した都市ガスが家庭や工場に届くまで

食事を作ったりお風呂の湯を沸かしたりと、毎日の生活に欠かせないガス。工場やビルでは空調設備の動力源としてガスを用いるところが増えているほか、ガスから生成した水素で発電する家庭向け燃料電池システムの注目度も高まっています。

一般に燃料として使われるガスには、主に天然ガスと石油ガスの2種類があります。前者はいわゆる都市ガスの主原料で、国内使用量の大半を諸外国から輸入しています。大手都市ガス事業者はタンカーで輸送したマイナス162℃以下の液化天然ガス(LNG)を気化し、熱量調整と付臭※1を行って需要家に供給しています。

ただし製造所(LNG基地)で作られた都市ガスは遠方に届くように高い圧力で送出されるため、そのままでは利用できません。需要家のガス機器で使うには、安全に使えるように圧力を下げる必要があります。そこで用いられるのが「ガバナ」です(「ガバナユニット」「整圧器」とも呼ばれます)。

家庭向けのガスは、ガバナを設置した拠点を経由して高圧から中圧、低圧※2へと段階的に減圧して供給されます。製造所からパイプラインで送られる高圧のガスを「ガバナステーション」という施設で中圧に下げ、さらに「地区ガバナ」で低圧に下げてから地中のガス導管を通じて各家庭に届ける仕組みです。なお中圧ガスの一部は、需要が増える夕方から夜に備えてガスホルダー※3に貯蔵されるほか、大規模な工場や施設にも供給されています。

ガバナは導管内の圧力変化を利用して自動で動きます。標準的な直動式と呼ばれるガバナの場合、内部に上流(供給側)と下流(需要家側)を仕切る弁があります。需要家がガスを使用したことで下流導管内の圧力が下がると弁を開いてガスを下流側に流し、ガスの使用が止まると弁を閉めて、ガス導管の圧力を一定に保つ仕組みです。導管内の圧力をうまく使った構造のため、弁を動かすための電気は必要なく、ガスを需要家へ送る仕掛けとしては安全なのです

大地震に伴うガス火災の防止に向け地区ガバナに地震計や通信機器を設置し、迅速にガスを止める体制を整備

都市ガスは毎日使うものです。だからこそ安定供給が求められると同時に、ガス漏れなどの事故を防ぐ安全対策も重要です。特に地震発生時には、設備や導管の破損で漏れたガスが火災の原因にならないよう、迅速にガス供給を停止しなければなりません。

その対策として、都市ガス事業者の多くは地区ガバナなどに地震(SI )センサを設置し、強い地震を感知したときに自動で弁を閉める仕組みを構築しています。SIセンサは地震計の一種で、実被害との相関性が高いSI値※4という指標を基準にしているので、より的確にガス供給の継続・停止を判断できます。

併せて地区ガバナには、SI センサや圧力計などの計測値を本部(供給指令センター)に送信する通信機器も設置されています。本部では集めたデータを基に被害状況を分析し、導管などに異常があると推定される場合は、遠隔操作で地区ガバナ内の弁を閉めます。こうして地域単位でガス供給を停止して火災の発生や拡大を防ぎ、ほかの地域の生活や事業への影響を最小限に抑えています。

ある都市ガス事業者はこの仕組みを発展させて、ガス供給の再開作業も本部から遠隔で行える体制を整え始めています。一般的にガス供給を再開するには、地区ガバナの弁を手動で開く必要がありますが、地震発生後は交通網の混乱などで作業員が速やかに現地に向かえないおそれがあります。作業員の出動が不要になる遠隔作業によって、ガス漏れなどの異常がない場合の復旧時間が大きく短縮すると見込まれています。

各地に点在する地区ガバナは物置のような姿で動作音もしないため、今まで存在に気づかずにいた人も多いかもしれません。もし発見したら、24時間365日、ガスの安定供給と安全対策を担っていることに思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


※1 付臭
漏えいが分かるようにガスに人工的に匂いを付けること。

※2 高圧、中圧、低圧
ガス事業法施行規則で定められたガスの圧力区分。1MPa(メガパスカル)以上が高圧、0.1~1MPa未満が中圧、0.1MPa未満が低圧と規定されている。なお中圧は0.3MPa以上の中圧Aと、0.3MPa未満の中圧Bの2種類がある。

※3 ガスホルダー
俗にガスタンクと呼ばれる、ガスの一時的な貯蔵設備。都市ガス用のものはガス圧力が均等にかかるよう球状のものが多い。

※4 SI値
地震によって、住宅などの一般的な建物がどれだけ揺れるかを数値化した指標。建物被害の程度や、気象庁が各地で観測している計測震度との相関性が高いとされている。米国の地震学者ハウスナー氏が1961年に提唱した。


この記事は2015年08月に掲載されたものです。