赤外線

波長の長さにより分類される電磁波の一種で可視光線の赤色の外側にある波長が約0.7μm~1000μmの電磁波のこと。熱伝導率が高いという特徴を持つ。波長が短いものから順に近赤外線、中赤外線、遠赤外線に分類され、特に近赤外線はリモコンや監視カメラなどに、中赤外線は温度計測、遠赤外線はヒーターなどに使われている。

あらゆる物体から放出される多様な性質を持つ電磁波

赤外線は日常生活の中でもよく目にする単語ではないでしょうか。少し前の携帯電話では端末同士の通信に赤外線が使われていましたし、暖房器具や調理家電に「遠赤外線」と書いてあるのを見たことがある方も多いと思います。赤外線とは波長約0.7μm(マイクロメートル)~1000μmの電磁波のことを指します。人間が見ることのできる可視光線の波長は約0.3μm(紫色)〜0.7μm(赤色)ですから、それより波長の長い赤外線は目に見えません。波長領域が赤色の外側なので“赤外”線と呼ばれています。

実は人間も、動物も、機械も、部屋の壁や天井も、あらゆる物体は赤外線を放っています。赤外線とは、物体を構成する分子が振動する分子運動によって発生する熱エネルギーの一部が放射エネルギーに変換されたもので、物体の温度が高いほどその放出量は多くなります。この特徴を利用し、赤外線の放出量から対象物の温度を計測しているのがサーモグラフィです。

また、赤外線を物体に当てると一部は反射したり透過したりしますが、一部は物体に吸収され、内部の分子運動を増幅させて熱を生み出します。暖房器具や調理家電などに赤外線が使われるのは、赤外線そのものが熱を持っているのではなく、赤外線を当てることで熱が発生するからなのです。

意外に身近な製品も!赤外線だからできること

赤外線は波長によってさらに近赤外線、短波長、中波長、長波長と、遠赤外線に分類することができ、それぞれに異なる性質を持っています。

波長域が最も可視光線に近く、性質も似ているのが近赤外線です。近赤外線は可視光線の赤色に近い光で、カメラならば捉えられますが、人間の目には見えません。この特性を利用しているのがナイトビジョンカメラです。

夜間の監視カメラや光に弱い物質がある場所など、周囲を明るく照らすことができない撮影で、ストロボの強い光の代わりに近赤外線を照射すれば、人間が気付かないくらいの光で撮影することができるのです。

一方、光を照射するのではなく、赤外線カメラで電磁波を検出するのが中波長や長波長の赤外線です。赤外線カメラは、物体表面から自然に放出されている赤外線を検出するため、夜間や煙の中など視界が悪い場所でも物体の存在を確認したり、温度を計測したりすることができます。

赤外線の中で最も空気減衰が少ない領域を含む中波長を検出するカメラは、何km先からでも物体を認識することができることから、豪華客船や軍隊などで遠くにある障害物などの存在を把握するのに使用されています。また、ガラスを透過する性質を活かし、工場などでは窓で隔てた隣室の温度計測に使われています。それに対して、長波長はガラスを透過しないので、中波長のように窓を隔てた隣室のモニタリングはできませんが、その反対に、ガラス表面の温度を計測することは可能です。

そして、赤外線の中で波長が最も長い遠赤外線は対象物を温める熱線として使われています。カーボンヒーターやハロゲンヒーターなどは遠赤外線の熱線作用を利用しています。

アレイセンサを活用すれば、エコにもコロナ対策にも有効

昨今は、長波長を使った赤外線カメラの中でも、赤外線センサ素子を配列して一つのセンサで視野内を同時に計測できるアレイ(配列)センサに注目が集まっています。アレイセンサは、物体の表面温度を遠隔から非接触で瞬時に計測できるのが特徴です。

現状はキャリブレーション*1が難しく、用途が限定されますが、消費電力が抑えられ、寿命が長いという特長を持っています。しかも、近年はアレイセンサの価格が飛躍的に下がり、一つの空間に複数のセンサをちりばめて設置できるようになってきました。センサが一つの場合はセンサを取り付けた壁面など局所的な温度しか計測できませんが、複数のセンサを使うと室内の平均温度を算出することができますし、表面温度の分布から人の存在や人数を数値化することができます。

オフィスや商業ビルなどでは感染症対策の一環として、二酸化炭素(CO2)を検出し、適切な換気を促す運用が広がっていますが、一般に、CO2センサを使った状況検出には、10分から20分ほどかかります。それに対して、アレイセンサを使えば状況検出は数秒で済むため、一定以上の人数になったら換気を行うというルールを決めれば、CO2センサよりも早く適切に換気することができます。また、アレイセンサは人の表面温度や大きさ、動きなどから人員の所在を可視化できるので、密の回避を促すことも可能です。エコとコロナ対策、両面に効果があるといえそうです。


*1:キャリブレーション
指定された条件下にて測定値と正しい値(真値)との間にどのくらいの誤差があるかを調べる作業のこと。調整(アジャストメント)を含めてキャリブレーションと言うこともある。

この記事は2022年10月に掲載されたものです。