蓄熱

熱エネルギーを蓄えること。熱には冷房や冷蔵庫に代表される冷熱と、暖房や給湯に代表される温熱があり、蓄えておくことで必要な量を必要なときに取り出して使うことができる。

熱を蓄えておくことの三つのメリット

蓄熱とは文字どおり、熱を蓄えることをいいます。熱というと、温度が高いイメージがあるかもしれませんが、熱には「温熱」と「冷熱」の両方があります。

総菜やケーキなど要冷蔵の食品に同梱する保冷剤は冷熱の活用事例の一つです。常温下では品質劣化のリスクが高まりますが、保冷剤を添えれば温度上昇を防いでくれます。このように様々な効果が期待できるのが蓄熱です。そのメリットは三つあります。

第一に、熱を必要なときに活用できること。保冷剤をストックしておけばいつでも使えて便利ですし、冷凍庫内の氷でも同様に冷熱として活用できます。

第二のメリットは、たくさんの熱を一度に活用できること。製氷皿で一度に作れる氷の数は限られていますが、冷凍庫のストッカーにできた氷を蓄えておけば、まとめて使うことができます。

逆の見方をすれば、氷を蓄えるストッカーがあるから、製氷皿はたくさん必要ないともいえます。これが第三のメリット。蓄熱すれば、熱をつくる設備は少なくて済むということです。

三つのメリットは温熱でも共通です。ビュッフェなどでは保温性の高いコーヒーポットが使われています。ポットがあれば、コーヒーメーカーの台数が少なくても、一度に多量のコーヒーを用意できますし、利用者はいつでも温かいコーヒーを飲むことができます。

夜間電力で水を冷やし翌日の冷房に活かす

蓄熱の仕組みはもっと規模の大きなところにも活用されています。その代表格が蓄熱式空調設備です。

大規模なビルでは空調機で使用する熱(夏は冷熱、冬は温熱)を熱源機でまとめてつくっています。蓄熱式空調では、熱をつくる熱源機、熱を使う空調機のほか、熱をためる蓄熱槽があります。この蓄熱槽が冷凍庫の氷用ストッカーやコーヒーポットのように蓄熱の役割を果たし、エネルギーの効率的利用に貢献しています。

蓄熱槽の代表的なものは水を張った蓄熱槽です。夜間電力を使って蓄熱槽の水を冷却し、翌日、熱源機での冷熱生成に加えて、蓄熱槽の冷水も活用できるため、少ない設備で大きな冷熱を空調機に届けることができます。蓄熱槽の水は災害時の防火用水や生活用水としても活用できるメリットがあります。

なお、このメカニズムを暖房に活かすこともできますが、最近の建築物は断熱性が高いため室内の温度が下がりにくく、より少ないエネルギーで温度を上げるという効率化の効果は冷房ほど大きくありません。

熱エネルギーをもっと効率的に活用するために

蓄熱槽以外にも、建物の躯体が蓄熱の役割を果たすこともできます。冷房を使う夏場を例にご紹介しましょう。冷房で壁や床が冷やされて、スイッチを切った後もしばらくひんやりと感じられることがあります。これが躯体蓄熱です。蓄熱槽と同じく、電力需要が少ない夜間に躯体を冷やし、昼間のエネルギー使用量を抑えることを目的としています。

夜間に蓄熱する理由は、昼間よりも電気代が安いプランがあること、社会全体の電力需要が大きい昼間のエネルギー使用量を減らせること(エネルギー利用の平準化に貢献できること)、そして、装置を効率的に稼働できることが挙げられます。

昼間、熱源機は空調の使われ方に応じて能力調整をしているので、その過程で効率が落ちてしまうこともありますが、夜間、蓄熱槽を冷やすときは、熱を利用する空調負荷が少ないため、機械を最も効率の良い状態で安定して動かせます。しかも夜間は昼間より外気温が低いので、同じ温度まで下げる場合でもより少ないエネルギーで済みますから、総合的にエネルギーの利用効率が高いのです。

このように、蓄熱を利用するには前日までのセッティングが重要です。翌日暑くなったからといって、急に蓄熱の量を増やすことはできません。また、必要以上の冷熱を蓄えれば、冷熱を蓄えるために使ったエネルギーが無駄になってしまいます。

そこで研究が進められているのが、蓄熱の需要予測シミュレーションです。過去の気象情報、建物の利用状況、空調の使用状況などのデータを組み合わせて、気象と蓄熱需要の関係性をモデル化し、翌日の天気予報と照らし合わせて必要な蓄熱量を計算して活用するのです。このようにエネルギーや設備の効率利用のために、様々な取組みが進められています。


この記事は2020年02月に掲載されたものです。