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電力システム改革への積極的な参画で社会に貢献

― デマンドレスポンスを活用し、実用に向けてVPPの取組みを推進 ―

再生可能エネルギーや分散型エネルギーリソースの広がりなどを受け、経済産業省の主導で、VPPの実現による電力システム改革に向けた取組みが進んでいます。アズビルは、長年ビルディングオートメーション事業で培った技術やノウハウを活かし、VPPを支えるデマンドレスポンスの仕組みを構築。実証事業に参加するなど、積極的にVPPの取組みを実施しています。「電力のあり方」の変化に応じて、社会や需要家への新しい価値の提供を目指しています。

再生可能エネルギーが浸透、エネルギーリソースも多様化

私たちの日々の生活や産業活動に不可欠な電力。日本では、東日本大震災に伴う電力需給のひっ迫を契機に、電力システム改革が経済産業省主導でさらに推進されています。太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーの導入が進むとともに、工場やビル、家庭といった電気の使用者である需要家側でも、太陽光発電や家庭用燃料電池、蓄電池、さらにはバッテリーとしても利用可能な電気自動車などの分散型エネルギーリソースの利用が浸透してきています。

電気は、常に需要と供給のバランスを取り、一致させることが必要です。電力需給のバランスが崩れると、場合によってはそれが大規模停電を引き起こし、発電所自体を壊してしまう事態につながりかねません。まだ記憶に新しい2018年9月に起こった北海道胆振東部地震の影響による北海道全域の停電は、このような事態が実際に起こってしまった実例です。

このような災害に起因した事態への対応や、再生可能エネルギーの普及など、私たちを取り巻く環境が加速度的に変化していく状況を受け、国を挙げて「電力のあり方」が再考されています。電力システム改革の取組みの中で推進されているのが「VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)」です。VPPとは、再生可能エネルギーや需要家側が所有するエネルギーリソースといった新しいエネルギー源を、あたかも一つの発電所のように機能させ、社会の需要を満たす電力システムとして機能させようという考え方です。

VPPを実現させるための重要な手法の一つが、「デマンドレスポンス(DR)」です。DRでは、需要家側のエネルギーリソースを制御し、電力の需要を増減させることで、需給バランスを取ります。電力の使用量が増加して、電力需給がひっ迫した状態になった際、使用量を抑えるアクション(下げDR)が必要になります。また逆に電力の供給量が過剰になった場合は、使用量を適切に増やすこと(上げDR)が必要です。

VPPの仕組み

VPPの仕組み

ビル分野の知見・技術を活かし、VPPの仕組みを構築

DRを実施するためには、一般の大規模ビルを運用する需要家の協力が必要となります。アズビル株式会社は、電気事業者と需要家の間に入り、そのシステムの橋渡し役になることができると考えています。それは30年以上にわたってこれらの需要家にBEMS*1を提供し、建物内の空調設備・機器などを中心に管理・制御しており、また、総合ビル管理サービス BOSS-24™*2により、アズビルのBOSSセンターからお客さまの数々の建物の遠隔監視・制御を行ってきた実績があるからです。このような取組みを通して蓄積してきた技術やノウハウを活かすことで大規模ビルにおけるDRという仕組みを構築し、アズビルが最も得意とする省エネルギーのメニューの一つとして提供していきます。

こうした経緯から、アズビルはVPPの有用性にも早くから着目。DRの技術を活用した新たな独自のVPPの仕組みとして、AutoDR™を構築しました。これはアズビルが設置するアグリゲーションサーバー*3からネットワークを介し、遠隔から各ビルのBEMSを通じて自動制御するものです。電力会社からDRの要請を受けた際には、AutoDR契約を結んでいる需要家のBEMSに対して、アグリゲーションサーバーからDR制御の指令を実施。これを受けて各ビルのBEMSが、あらかじめ登録された機器リストに従って、人を介することなく設備の起動/停止を行い、統合的に制御するということを実現しています。

国の実証事業にも参画、VPPの事業展開を検討

こうしたVPPやDRの取組みに関して、アズビルは、経済産業省が実施した平成30年度「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」の交付先企業に採択されました。この実証事業の中でアズビルは、複数の需要家側のエネルギーリソースを制御し、電力需給を調整しています(リソースアグリゲーター)。加えて、そうした調整役であるリソースアグリゲーターをまとめる役割も担っています(アグリゲーションコーディネーター)。アズビルが両方の役割で実証事業に参画しているのは、現状のVPP市場が立ち上がってきた状況を踏まえ、アズビルと契約いただいた需要家にとってより大きなメリットを提供できる施策を検討するためです。

近年、再生可能エネルギーの活用が進んできたことから、電力の使用ピークが従来の午後2時ごろから夕方にシフトしてきています。今までピークを記録していた昼間は太陽光エネルギーが豊富にあるため、電力の供給過剰な状態となっています。従来、使用を抑制していた昼間の時間帯に電力が余ることになり、多くの電力を使用することが望まれるという形に変化してきています。日本が今までに経験してきた需給のひっ迫状態とは逆に、電力の供給量が多過ぎても需給バランスが取れないという新しい局面を経験しています。アズビルでは、電力需給のバランスを保ち、過剰な電力を活用する方法として、大規模ビルに多く設置されている蓄熱槽について、従来の運用方法とは違う新たな活用方法を提案しています。余剰電力を熱の形でため、必要なときにこの熱を利用して冷暖房を行おうというものです。蓄電池の価格が高い現状、既存設備である蓄熱槽がその代わりになります。これは新たな投資を抑制できる、コスト面も考慮した施策です。

また、アズビルではVPPには社会貢献の意味もあると捉えています。再生可能エネルギーには、発電量が天候に左右される、瞬時の発電量調整が難しいという特徴があることから、電力の需給バランスを補完するための仕組みが必要となります。従来は発電量を調整するために火力発電を待機させて利用していましたが、VPPを活用することで、再生可能エネルギーの安定的な利用が可能になるとともに、調整用の火力発電を減らすことができるため、省エネルギーとCO2削減にもつながります。こうしたことから、アズビルでは社会貢献の目的からもVPPの取組みを推進しています。

今後、電力を中心としたエネルギーを取り巻く状況や社会情勢は大きく変わっていくことが予想されます。アズビルでは、VPPおよびDRに関する技術面、サービス面での積極的な活動により、電力システムの変化に合わせ、需要家や電気事業者などのニーズに対応した商品やサービスを提供し、社会に貢献してまいります。

*1:BEMS(Building Energy Management System)
ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネルギー監視・制御を自動化し、建物全体の使用エネルギーを最小化するためのシステム。

*2:BOSS-24
建物の総合管理・保全を行うサービス。現場に設置されたBEMS(savic-net™)とアズビルのBOSSセンターを通信回線で結び、建物設備に精通した技術者が24時間・365日の遠隔監視・制御を実施。また、技術者を現場に常駐させるという拡張サービスも提供されている。

*3:アグリゲーションサーバー
IoT(Internet of Things)技術を活用して、各ビルのBEMSを遠隔でDR制御するサーバー。


※BOSS、BOSS-24、AutoDR、savic-netは、アズビル株式会社の商標です。

この記事は2019年02月に掲載されたものです。