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新たな環境で「正しく測る」技術をさらなる高みへ

― azbilグループの「計測」品質を追求し標準室を新実験棟に移転。自社技術を導入し、世界水準の校正環境を実現 ―

工場における生産性の維持・向上や品質担保、ビル空調における快適性を実現する上で不可欠な「計測」。アズビルでは、各種計測機器の精度維持を担う標準室を藤沢テクノセンター内に新設された新実験棟に移転し、アズビルの高度な空調技術を駆使して、理想的な校正環境を構築しました。これにより、国内をリードする校正技術レベルのなお一層の向上が期待されています。

各種計測機器の正確性を担保する卓越した「校正」技術を保持

1906年の創業以来、アズビル株式会社では、計測と制御の技術を中核にお客さまへの価値提供に取り組んできました。工業分野における製品の品質維持、建物分野における快適な空調などを実現する上で、制御のベースとなるのが計測です。そのため各種計測機器は、当然正確な計測値を示すものでなくてはなりません。しかし、これら計測機器は経年などによる精度低下が避けられません。そこで、厳格に管理された「基準となる計測機器(標準器)」と現場で使われている計測機器の示す値を比較し、どの程度ずれているのかを定期的に確認する「校正」という作業を行う必要があります。

こうした各種計測機器の校正を実施する専門部署として、アズビルでは1996年10月に藤沢テクノセンター(当時、山武ハネウエル株式会社 藤沢工場)に計測標準グループ(当時、計測標準センター)を設置。以来、社内および関連企業、お客さまが使用する計測機器の精度維持を支援してきました。また並行して、アズビルの校正の技術力を示し、アズビルの校正作業や技術を利用する方に安心をお届けするため、計量法に基づく日本の校正事業者登録制度であるJCSS(Japan Calibration Service System)の認定取得にも積極的に取り組んできています。これまでに「圧力」や「温度」「湿度」「電気(直流・低周波)」「流量・流速」「時間・周波数及び回転速度」の各区分において、国際規格ISO/IEC 17025に準拠した適切な校正能力を有していることが評価され、登録事業者として認定されています。

新設の実験棟への移転を機に旧来の環境が抱える課題を克服

設置から20年以上にわたり、アズビルでは“正しく測る”ための仕組みづくりと環境整備に取り組み、国内有数の校正事業者として広く認知されるようになってきました。一方で、作業場所となる標準室は、業務拡大によって次第にスペースが手狭になってきたことに加え、より高い水準の適切な校正環境を実現、維持する上で、建物上、また立地上の課題も抱えていました。

まず、“正しく測る”には、校正作業を行う環境を一定条件に維持し、どんなときも正確な計測値が出せるようにする必要があります。しかし、標準室が設置されていた建物は専用に設計されたものではなかったため、測定環境を精密に制御するには限界がありました。高度な精密さが要求される校正作業では、微細な振動でも測定値に影響を及ぼします。そのため、通常、標準室は建物の上階に比べて振動が少ない建物の1階に設置されますが、藤沢テクノセンターはJR東海道線の線路からも近いという立地のため、列車通過時に振動の影響を受けやすいといった課題がありました。また、同センターは川に隣接しており、万が一の河川の氾濫による浸水のリスク対策も考える必要がありました。そこで2022年9月、藤沢テクノセンター内に竣工(しゅんこう)した新実験棟へと標準室を移転。新たな標準室は新実験棟の1階に設置され、旧標準室に比べて1.4 mほど海抜が高い場所になり、水害のリスクを低減することができました。振動については、標準室の土台部分を新実験棟自体の土台と構造的に分離することで振動が標準室の作業環境に直接伝わりにくくするという工夫も行っています。

標準室の土台部分を新実験棟の躯体(くたい)と構造的に分離する「縁切り」を施し、周囲の振動が標準室の中に直接伝わりにくくしている。隙間にはシリコンゴムを埋め込んで、安全性を確保している。

標準室の土台部分を新実験棟の躯体(くたい)と構造的に分離する「縁切り」を施し、周囲の振動が標準室の中に直接伝わりにくくしている。隙間にはシリコンゴムを埋め込んで、安全性を確保している。

持ち前の空調制御技術を駆使し、理想的な校正環境の実現を目指す

校正環境においては、温湿度を一定に保つことも必須の要件です。これに関しては、アズビルが事業展開するビル空調の領域で培った高度なノウハウが活かされています。まず温度については、セントラル空調の仕組みをベースに、一般のビル空調では用いられない高感度の温度センサを標準室に配して、精度の高い温度制御を実現しており、1日あたりの室温の振れ幅を0.3 ℃以内にとどめています。

湿度については、標準室内で相対湿度50 %になるように、冷水コイルを通過する空気を適切に加湿することで、無駄なく高精度に制御しています。

高い精度が求められる校正作業では、吹出口からの気流や、ドアの開け閉めによる室圧の変化も測定値に影響を及ぼします。そのため、空調の吹出口を覆うように、全面に細かな穴が開いたカバーを設置し、風量を維持しながら標準室内の広範囲に均質な空気の吹出しを行っています。室圧については、部屋に入ってくる空気量と出ていく空気量とのバランスがとれるよう、アズビルの風量制御コントローラ付きベンチュリーバルブ Infilex™VNを使用しています。さらに標準室と室外との間に前室を設けて、インターロック*1により二つの扉が同時開放しないようにすることで急な外気の流入を防いでいます。また標準室の出入口を圧力変化の発生が少ない引戸にしています。

以上のように計測標準グループでは、移転先となる実験棟の建設時から様々な工夫を施し、アズビルの持てるノウハウを最大限に駆使して、現状において理想的といえる校正環境の実現を目指しました。これにより、校正事業者としての能力や価値が、大きく向上するものと確信しています。“正しく測る”環境が整い、計測と制御における高度で安定した技術力を活かすことで、azbilグループだけでなく広く産業界の発展に貢献し、「安心」をお届けしてまいります。

全面に細かな穴が開いたカバー(パンチングメタル)を設置することで、空調の吹出空気が狭い範囲に集中しないようにしている。

全面に細かな穴が開いたカバー(パンチングメタル)を設置することで、空調の吹出空気が狭い範囲に集中しないようにしている。

真空発生装置(膨張法装置)。ボイルの法則を応用して1~1000 Pa(大気圧の1/100000~1/100)付近の高精度な真空を発生させる。アズビルが開発した標準器。

真空発生装置(膨張法装置)。ボイルの法則を応用して1~1000 Pa(大気圧の1/100000~1/100)付近の高精度な真空を発生させる。アズビルが開発した標準器。

微小液体流量標準器。重さと時間を高精度に計測し、ティースプーンをいっぱいにするのに5分かかるような微小な液体流量(g/分)を計測する。アズビルが開発した標準器。

微小液体流量標準器。重さと時間を高精度に計測し、ティースプーンをいっぱいにするのに5分かかるような微小な液体流量(g/分)を計測する。アズビルが開発した標準器。

※Infilexはアズビル株式会社の商標です。

*1:インターロック
複数の条件がそろわないと機能が有効にならないように制御すること。

この記事は2023年09月に掲載されたものです。