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気体の質量流量を高速・高精度にワイドレンジで計測するセンサ

マイクロフローセンサ(µFセンサ)

近年、CO2排出量削減などを目的とした省エネルギーの必要性が一段と高まり、その1つの手段として、燃料、動力、熱交換の媒体などに使われている様々な流体の流量管理が重要になっています。しかし、その計測方法の多くが堆積流量を計測するもので、エネルギー効率に関係する質量流量はほとんど計測されていません。特に気体の場合は温度・圧力により体積が大きく変化するため、質量流量を計測して制御する必要があります。 アズビルでは、MEMS(Microelectromechanical system)技術を駆使して、高感度、高速応答、ワイドレンジの熱式質量流量計測ができるマイクロフローセンサを開発。アズビル独自の計測制御技術との融合により、高性能の質量流量計やマスフローコントローラとして製品化しています。

開発のポイント

小さなシリコンチップにヒータ、センサ機能をつけるMEMS技術

マイクロフローセンサは、MEMS技術を用いて開発した、1辺が1.7㎜、厚さ0.5㎜の気体用熱式質量流量センサで、高感度(流速1㎜/s~)、高速応答(2ms)、ワイドレンジ(300:1)、小型、低消費電力などの特長をもっています。

その構造は、シリコンチップに形成した厚さ約1µm のダイヤフラムの中央にヒータを、ヒータの上流側、下流側に温度センサを白金薄膜で形成したものです(図1)。

このセンサを用いて、ヒータを流体温度より高く制御し、上流側と下流側センサの抵抗偏差を電圧差として取り出します。

流れがないときは、図2(左)のようにヒータの上流側・下流側に均一な温度分布ができますが、流れがあると図2(右)のように下流側に偏った温度分布になります。この時の上流側・下流側の温度差が、センサ上面を流れる気体の質量流速(流速×密度)の関数となります。

マイクロフローセンサを用途にあった口径の流路(フローチャネル)に設置して流量校正を行うことにより、質量流量計が完成します。

アズビルは、マイクロフローセンサの性能を十分に引き出して流量を計測するために、流れの整流機構をもつ独自のフローチャネル構造を開発しました。

これによりの微小な流量から大流量までの広い範囲で、高速・高精度な質量流量計測を実現しています。

さらに、流量計設置の際に必須であった前後の直管部が、ほとんど不要となり省スペースに貢献しています。

図1. マイクロフローセンサの構造

図2. 流れない状態(左)流れを受けた状態(右)

ソリューション

ガラスワーク加工の緻密な燃焼制御や工業ガス供給の省エネルギーに貢献

1.従来の熱式質量流量センサは応答速度が遅く、高速な制御に適していませんでしたが、マイクロフローセンサは2msと応答速度が速く、しかも高感度でワイドレンジの質量流量計測が可能になりました。

2.マイクロフローセンサを搭載したマスフローコントローラの再現性の良い高速制御により、従来は難しかったガラスワーク加工(液晶用バックライト、ハロゲンランプ、蛍光灯、薬瓶)におけるバーナーの緻密な燃焼制御が可能となり、品質のばらつき低減、ガス消費量の削減、熟練技の数値化などを実現しました(図3 左)。

3.マイクロフローセンサの広い計測範囲と精度の良さを利用して、工業ガス供給における漏れ検出、使用料管理、課別課金等を行い、大きな省エネ効果が得られています(図3 右)。

図3.(左)ガラス加工バーナー空燃比制御 (右)工業ガスの課別流量管理、費用配賦

図3.(左)ガラス加工バーナー空燃比制御 (右)工業ガスの課別流量管理、費用配賦

関連リンク

マスフローメータ/マスフローコントローラ