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TCFD ~ 気候変動の影響の把握と開示の取組み

azbilグループでは2019年11月、気候変動が事業活動に与える影響について正しく把握し、適切に開示するという気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言内容に賛同いたしました。賛同表明後、気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しています。気候変動に関わる、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について、以下のとおり開示します。

TCFD

ガバナンス

気候変動は、グループ理念を実践するうえでの最重要課題の一つと認識し、担当役員を統括責任者としたグループ横断的なタスクフォースを組成、事業影響と財務影響開示の視点から経営会議で審議し、その内容は取締役会で適切に監督しています。

戦略

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)や各種機関からの情報をもとに、1.5/2℃シナリオ※1と4℃シナリオ※2の2つのシナリオで、2030年までの長期的なazbilグループの事業上の機会やリスクを特定しています。なお、1.5℃シナリオについては、2℃シナリオと機会とリスクの傾向は同じで影響の度合いが大きくなると認識しています。

※1 脱炭素社会に向けた規制強化や技術革新が促され、気温上昇が持続可能な範囲で収まるシナリオ

※2 温室効果ガス排出を削減する有効な対策が打ち出されず、気温上昇が継続し、異常気象や自然災害が増大するシナリオ

機会とリスクの開示

種類 シナリオ ビルディングオートメーション(BA)事業 アドバンスオートメーション(AA)事業 ライフオートメーション(LA)事業
機会 1.5/2℃ 世の中のニーズに合わせた省エネルギー・省CO2ソリューションやサービスの需要拡大等 環境影響を低減する新しい産業・プロセスに向けた、センサー・各種計測器、ソリューションなどへの需要が増加 IoT 技術を活用したガスメーターといったSMaaS事業の拡大等
機会 4℃ 気象災害に適応した建物に向けた製品・サービス・ソリューションの需要の増加等 異常予知機能を具備した製品・サービス・ソリューションへの需要の増加等 気象災害に適応した製品・サービス・ソリューション需要の増加等
移行リスク 1.5/2℃ (共通)
  • 新たな規制や新しい市場に合わせた新製品・サービスに関わる研究開発費の増加
  • エネルギー価格上昇による製造・調達コストの増加
  • 炭素価格の上昇による自らのCO2排出コスト増やお客様の化石燃料集約型設備投資の減退
物理リスク 4℃ (共通)
  • 異常気象による操業停止、製品・サービス・ソリューション提供の休止
  • 異常気象による事業不安定化に伴う、お客様の投資の大幅な減少

機会とリスクが、azbil グループの財務計画等に及ぼす影響と対策

CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクより大きいと認識しています。

TCFD説明

リスク面については、物理リスクと移行リスクに分けて財務に与える影響を分析しています。物理リスクについては、様々な想定をもとに試算していますが、生産拠点の分散やBCPなどの対応策を講じていることなどから、事業に与える影響は限定的と判断しています。また、移行リスクについても、自らの温室効果ガス排出量の逓減に関し、SBTに基づく「2030年温室効果ガス排出削減目標」を定め、計画的なリスク軽減策を講じています。azbilグループの自らの事業活動に伴う排出量(スコープ1+2)は約1万7千トンで、これはお客様の現場におけるCO2削減効果の276万トン※1の約170分の1と相対的に低位な水準となっています。このため、仮に今後炭素価格が上昇し、1トンあたり5千円~ 1万円と負荷が大きくなったとしても、その財務影響額は総額1億~ 2億円程度に留まることになります。その一方で、1.5/2℃シナリオを前提に、2030年におけるazbilグループの主要な事業分野に限定した影響を算出すると、お客様の現場におけるCO2削減効果や新しいエネルギー市場の拡大等につながると見込まれるため、少なくとも年間約120億円規模の売上高増加への寄与があると推定しています。

ビルディングオートメーション(BA)事業:約70億円

電力料金上昇や再生可能エネルギーの普及等により、関連設備や高効率設備の導入増加等から、TEMS※2などの省エネルギーに関わる既存事業が拡大すると想定しました。また、CO2排出量の見える化からカーボンオフセットまでを一括管理するエネルギー管理システム(EMS※3)、再生可能エネルギーなど、エネルギー調達や排出権取引等を組み合わせたワンストップサービスのビジネス機会が拡大すると想定しました。対象として、エネルギー使用量の多い病院・ホテル市場における過去の導入実績や、顧客ニーズなどを踏まえ、一定の前提を置いたシナリオに基づき試算しています。

アドバンスオートメーション(AA)事業:約50億円

カーボンニュートラルに貢献する市場(水素、CO2フリー・アンモニア、カーボンリサイクル・CCUS※4など)に関連するビジネス機会が拡大すると想定しました。対象市場に関連する導入実績やその推移と、第三者調査機関による対象市場の成長率等、一定の前提を置いたシナリオに基づき試算しています。

※1 お客様の現場でazbilグループの製品・サービス・ソリューションが採用されなかったと仮定した場合との差を、削減効果として推計しています。

※2 TEMS:Total Energy Management Service

※3 EMS:Energy Management System

※4 CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage

リスクを抑制し、機会を拡大するため、azbilグループでは、「自らの事業活動における環境負荷低減」を進めるとともに、それらの取組みを通じて得られる技術・ノウハウを活かすことも含め、計測と制御の技術を駆使してお客様の環境に関わる課題解決を支援することで「本業を通じた地球環境への貢献」を推進し、持続可能な社会の実現へと繋げていきます。

リスクを抑制するための2022年度の主な取組み

  • 湘南工場、秦野配送センターでの使用電力について100%再生可能エネルギーでの調達を開始しました。
  • アズビル金門エナジープロダクツ(株)の和歌山工場、アズビル太信(株)での太陽光発電設備の導入をしました。
太陽光発電

和歌山工場の太陽光発電設備

機会を拡大するための2022年度の主な取組み

  • グリーントランスフォーメーション(GX)を全社的にリードする新たな組織として、「GX推進部」を設置しました。
  • 官民ファンドの株式会社脱炭素化支援機構の設立趣旨に賛同し、出資しました。
  • アズビルが株式会社クリーンエナジーコネクトの第三者割当増資を引き受け、出資ならびに業務提携契約を締結しました。
  • お客様のカーボンニュートラルへの取組みに貢献する、Energy Service Provider事業の展開を開始しました。

リスク管理

azbilグループは、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクについて、気候変動を含めて網羅的に洗い出しています。「総合リスク委員会」にて経営層によるワークショップ形式の審議を行い、「azbilグループ重要リスク」およびそれ以外の「部門管理リスク」を選定します。選定結果については取締役会に提出され、審議の上最終決定されます。特定されたリスクに関しては、年度初めに年間のリスク対応計画を策定し、期中と期末に行われる「総合リスク委員会」ほかにて計画の進捗報告を行い、計画の遅延や推進上の課題を都度認識・改善することでPDCAサイクルを回しています。

指標と目標

持続可能な社会へ「直列」に繋がる事業活動により、azbilグループのお客様、およびazbilグループとサプライチェーン全体を視野に入れた指標と目標を掲げて、気候変動への取組みを推進しています。

  • お客様の現場におけるCO2削減効果を2030年度に340万トンまで拡大することを目標としています。
  • azbilグループの事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)の排出量(スコープ1+2)を2050年に実質ゼロにすることを目指す「2050年 温室効果ガス排出削減長期ビジョン」を策定し、カーボンニュートラルの実現を目指しています。この達成に向けた中間目標として、「2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標」を定め、サプライチェーン全体での排出量削減に取り組んでいます。

<2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標>
事業活動に伴うGHG排出量(スコープ1+2)55%削減(2017年基準)
サプライチェーン全体のGHG排出量(スコープ3)を20%削減(2017年基準)