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熱式微小液体流量計 形 F7M

微小な液体流量を高精度に測定しプロセスの品質改善・向上に貢献

1.はじめに

流量計測においては多様な計測方式が提案され実用化されているものの(1)、それぞれに長所・短所があり、計測対象流体・流体の性状・流量レンジ等のすべてにおいて万能な方式は存在しない。特に50mL/min以下の微小液体流量の領域では、用途を限定すれば複数の実用化例はあるものの一般産業市場・半導体製造プロセス・製薬・化学分析の分野にて、実際の使用条件に合致し、かつ使用者の要望(精度、サイズ、設置条件等)を満たす流量計の選択肢は限られている(2)。また、液体流量を扱うプロセスには様々な流体種類が存在し、流量計の測定原理によっては液体種類ごとに使用者が補正値を入力する必要がある。

これらの状況に対して、微小な液体流量を高精度に計測できる熱式微小液体流量計、形 F7Mを開発・販売した。

図1 形 F7Mの外観図

2.熱式微小液体流量計 形 F7M

2.1 測定原理

形 F7Mは熱式流量計に区分され、消費電力方式と呼ばれる方式で流量計測を行っている。図2に測定原理図を示す。流路を構成するガラス管の上流側に液温センサ、下流側にヒーターセンサが配置されている。液温センサで測定した流体温度に対してヒーターセンサを一定温度高くなるように温度制御する。この時、流量が大きいほど流体がヒーターから奪う熱量は大きくなるため、ヒーターで消費される電力は流量に相関を持つ。ヒーターセンサの消費電力から流量を算出する測定原理である。

図2 形 F7Mの測定原理図

2.2 特長

形 F7Mの主な仕様を表1に示す。

表1 形 F7M主な仕様

製品形番F7M9010F7M9030F7M9050
計測流量範囲0.1〜10mL/min0.3〜30mL/min0.5〜50mL/min
計測精度(流体が水の場合)±5%RD(20%FS以上)
±1%FS(20%FS未満)
繰り返し性(流体が水の場合)±1%RD (20%FS以上)
±0.2%FS( 20%FS未満)
製品サイズ幅22mm×高さ60mm×面間122mm
重量約85g
流体圧力範囲0〜500kPa
流路耐圧700kPa
保護構造IP65

形 F7Mは以下のような特長がある。

(1)高精度な微小流量計測が可能
形 F7Mは流量レンジの20%FS以上の流量に対して±5%RDの高い精度、かつ±1%RDの高い繰り返し性を実現している。これにより従来計測が困難であった微小流量の安定した計測が可能となり、ユーザーの製造工程管理、品質改善、歩留まり改善に貢献できる。

(2)ストレート流路で圧力損失が小さい
流体の流路は石英ガラス管と、流体の入出接続部であるフッ素樹脂製の継手で構成されており、流路は完全なストレート形状かつ流路内に障害物は存在しない。そのため最大流量時でも圧力損失は1kPa未満と小さい。これにより流体の送水圧力を小さくでき、設備の簡素化、省エネルギーに貢献できる。

(3)設置場所、流体を選ばない
熱式MEMSセンサはガラス管外面に配置され接液しない。接液材料は石英ガラスとフッ素樹脂だけであり、様々な流体に対して高い耐食性を持つ。保護等級はIP65に準拠し、さらに製品外面に一切の金属材料を使用していないため、腐食性の高い液体飛沫を受ける環境でも高い耐久性をもつ。これにより幅広いアプリケーションで安心して使用可能となっている。

(4)小型・軽量、取付け簡単
流量計本体は幅22mm×高さ60mm×面間122mmのコンパクトなサイズで重量は約85gと軽量、また水平配管、垂直配管のどちらにも取付け可能である。設置場所の自由度が高く、ユーザーの設備や装置の小型化に貢献できる。

2.3 液体変更時の補正係数自動設定機能

流量計の測定原理によっては、流体の種類(物理的パラメータ)に影響を受け流量計測に影響(測定誤差)を与える場合がある。形 F7Mは熱式の消費電力方式であるため液体の熱伝導率が流量出力に影響を与える。そのため正確な計測を行うためには液体種類ごとに補正係数を設定する必要がある。液体の熱伝導率が分かっていれば補正係数を推測することは可能だが、使用する液体の熱伝導率が不明である場合が多く、液体に合わせた補正係数の設定が難しいという課題があった。

形 F7Mでは、液体に合わせた補正係数を自動設定する機能を有する。停水している状態でのセンサ信号は液体の熱伝導率と相関がある(図3)。これを利用し、停水時にボタン操作することでその液体の補正係数を自動設定する。これにより、液体種類の変更に対する合わせ込み作業を簡便にすることができる。

図3 停水時のセンサ信号と熱伝導率の関係

2.4 JCSS校正事業者

形 F7Mの校正は、生産工程において実際に液体(水)を通水して行っており、社内の流量標準は当社技術標準部計測標準グループにて構築している。同グループは2019年10月に微小用流量計のJCSS(Japan Calibration Service System:計量法に基づく校正事業者登録制度)登録事業者として登録認定(登録番号0155)された。流体を水とした微小流量範囲でのJCSS登録認定は国内初である。

これにより形 F7Mの品質に高い信頼性を付与し、国際的にも通用する計測トレーサビリティの体制を構築している。

3.おわりに

微小液体流量計測においては複数の計測方式が実用化されているものの、実際に流量計が使用されているアプリケーションは限られていた。

形 F7Mはその特長から、これまでは流量計を使用できなかったアプリケーションにも採用されている。形 F7Mの推奨するアプリケーション事例を図4に示す。

図4 推奨アプリケーション事例

今後、測定可能流量範囲の拡大、応答性の向上、流量制御バルブを付加した流量コントローラ化など製品仕様を拡張し、適用可能なアプリケーションを拡大することでさらなるお客さまのプロセス品質改善・向上に貢献する所存である。

<参考文献>

(1) 日本計量機器工業連合会編:流量計の実用ナビ-改訂版(日本計量機器工業連合会、2012)

(2) チョン・カー・ウィー:微小液体流量計測の現状と将来展望、産総研計量標準報告 Vol.8、No.1(2010)pp.15-43

<著者所属>
山崎 吉夫 アズビル株式会社 アドバンスオートメーションカンパニー CP開発部
千崎 昌彦 アズビル株式会社 アドバンスオートメーションカンパニー CPマーケティング部

この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2020年04月に掲載されたものです。