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特集に寄せて:ビルに新たな付加価値をもたらす空調制御を考える

アズビル株式会社
取締役執行役員常務
ビルシステムカンパニー社長
濱田 和康

最新のオフィス用ビルに対して,テナント企業または自社ビルオーナーの要求として,環境負荷低減はもとより,働き方改革や少子化に伴う労働力不足軽減のために,室内居住者のウエルネスや生産性向上に寄与する性能が求められはじめた。

欧米企業の一部では,すでに環境性能の高いビルがテナント入居の必須条件となりつつある。さらに,魅力ある企業の条件の1つとして快適な執務空間への要求が顕在化しつつある。

一方,こうした社会課題を解決するSociety5.0の実現のために,ビッグデータ・IoT・AIという文字が目に留まらない日がないほどに新技術の実装化が進んでいる。

執務空間の現状に目を向けてみよう。

「暑い」「寒い」といった温冷感は居住者の生産性向上に大きな影響を与えると推測される。しかし,従来の一般的空調制御方式では,概ね100~400㎡ごとの制御単位に1つの温度センサが還気口近傍に設置され,その計測値が室内環境を代表しているものとみなされている。10㎡弱ごとに居住者が1名いると想定した場合,1つの温度センサが40人以上が在席している空間の環境を代表していることになる。温冷感が個人で異なるうえに,OA機器の有無,居住者が置かれている状況も異なる中で全員が満足する環境を提供することは明らかに困難である。

また,室内天井面に設置される吹き出し口には,本来,冷風と温風の到達域の変化への対応が必要となる。冷風は横方向に拡散させないと冷風が直接執務者にあたり,肌寒さを誘発する一方,温風は比重の関係で,より縦方向に噴出させないと床まで届かず,底冷え感が発生する。このため冷風時と温風時で鉛直方向での吹き出し角度を,吹き出し口ごとに手動で切り替えることが求められる。実態としてはそのような適切な管理が行われている例は少数であると思われる。

そもそも冬期は1日の間で温風運転と冷風運転が混在する。朝方は温風が必要となり,昼前後からは冷風(外気による冷房)に切り替わるような制御が行われるわけだが,このような場合に,吹き出し方向を環境に合わせて切り替えるというのは非現実的である。

さらには,バブル期に建築された建物の多くに設置されていたOA機器の室内発熱量は非常に大きく,また照明は蛍光管方式が主流であったために,高級仕様のオフィス用ビルは60W/㎡程度の室内冷房負荷を見込まざるを得なかった。

しかし,現在はオフィスのディスプレーのほとんどが液晶化され,CPUの消費電力は激減し,照明はLED管となっている。そのため室内の冷房負荷は大きく削減されている。

一方,従来より室内で暖房が要求される時間帯や期間が伸長している。こうした状況の変化に合わせた設備設計・計装設計が行われてきているかと考えると若干の疑念が残る。

空気質(清浄度・空気組成)も居住者の生産性に加え,居住者の健康にも大きな影響を与えると考えられる。

昨今,分散型空調システムが小規模に限らず中規模(延べ床面積20,000㎡程度)の事務所ビルにも設置されるケースが増えてきているが,特に天井カセット型のいわゆる「ビルマル」の場合は,従来のセントラル型空調システムと比較し,新鮮外気の供給量が不足しがちであり,吹出し口の設置密度が低いために空間均一での換気効率を得ることは難しいと考えられる。

さて,今回の特集テーマである「〝人を中心とした″の発想に基づく快適性の追求」は経済的な実現性も考慮し,最新の技術を取り入れながら,空調技術者が長期にわたり抱えてきたこれらの課題を解決していくための対策そのものであったり,またはきっかけとなる技術の一端を提示するものである。

温度を立体的に可視化することは制御単位ごとに均一な温熱環境を提供するためのスタートとなり,この温熱環境可視化技術は,人や発熱機器の偏在化に対応し,快適性と省エネルギーを両立する空調制御のスタートとなる。

温冷感申告技術との組み合わせにより,居住空間内での計測値に紐づいた正しい〝温冷感の可視化(″温度が高くかつ暑い,温度が低いのに暑い等)が可能となる。また空気質の改善へも応用していけるであろうことが容易に想像される。さらに各々の温度制御のエリアを狭くし,細かい単位で風量と風向を変えていくことで居住者の温冷感に合わせたストレスのない環境が実現されると考えている。

新たにリリースされたビルディングオートメーションシステムであるsavic-net G5シリーズの構成機器の拡張は,これらの技術を容易に実現するための強力な武器・インフラになっていくであろう。

本特集は,アズビルの技術が,ビル居住者・テナント企業・ビルオーナーの視点で,よりよい環境と環境負荷低減を実現していく着実な道筋が見える特集となっています。

読者の皆さまには,1つ1つの技術の未来像を想像しながら,詳細部分まで拝読いただき,さらにはフィードバックをいただくことで,さらなる快適なビル空間の実現に寄与してくださることを期待しています。

この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2019年04月に掲載されたものです。