電力スマートメーター対応水道用無線端末(型式:ENCUW-H8A0)の開発
1.はじめに
アズビル金門株式会社では,今までに各種の通信方式を採用した水道検針用の無線端末を製品化してきた。
今回,アズビル金門として初めて,電力スマートメーターネットワークに対応した,電力スマートメーター対応水道用無線端末(型式:ENCUW-H8A0)について,説明する。
2.製品概要
この度製品化した無線端末の主な特徴について以下に記す。
- 共同検針用の無線端末として,上位装置である電力スマートメーターと通信する。
- 電力スマートメーターとの無線通信規格には,「920MHz帯テレメータ用,テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備」(ARI B((社)電波産業会)STD- T108)を採用している。また,共通規格化が進められている「IoTルートApplicationインタフェース仕様書」に準拠した通信方式を採用している。
- 電子式水道メーターとの通信には,東京都水道局電文仕様Ver2.6a仕様に準拠した8ビット電文方式を採用し,水道メーターから1時間ごとに指針値を読み出し,1日に1回,1日分の指針値を電力スマートメーターに通知する。指針値は無線端末内部に7日分を記憶して,後から読み出すことが可能である。
- 水道メーターが検知したアラーム情報は即時に上位に伝達される。
- 豪雨などによる水没にも耐えうる,IP68仕様の防水性能を備えている。
- 製品外部からの磁石操作により起動/停止が可能で,動作状態を示すLED表示も備えている。
- アズビル金門製の水道メーターとの接続に関しては,メーターのケーブルを製品内部に引き込むことで,外部に防水用具を用いることなく接続が可能である。
製品外観

図1 ENCUW-H8A0外観
製品仕様
表1 主な製品仕様

3.電力ネットワークへの対応について
今回の無線端末は,東北電力ネットワーク株式会社様の電力スマートメーターネットワークに対応している。
同社では,水道・ガス事業者様が抱える人材不足や難検針への対応をはじめとした様々な課題の解決に向け,電力スマートメーターネットワークを活用した共同検針の取組み「自動検針サービス」を2023年よりスタートしている。
電力スマートメーターネットワークを活用するメリットとして,安定・安心・安価(3つの「安」)を掲げており,宮城県名取市様へのサービス開始を皮切りに,同社のサービスエリアである東北6県および新潟県で導入が進みつつある。
安定: 電力スマートメーターは水道メーターの近傍に設置される可能性が高く,最適な電波経路を自動選択するため,安定した通信環境が期待できる。
安心: スマートメーター専用の通信でセキュリティは万全,24時間365日の体制で監視している。
安価: 既存のインフラ資産を活用し,安価な料金でサービスを提供する。

図2 電力スマートメーターネットワークを利用したシステム例
4.共同検針インタフェース標準化について
本製品が準拠している「IoTルートApplicationインタフェース仕様書」は,NPO法人テレメータリング推進協議会において,標準化が進められている。
現在,認証の開始に向けて,規格類の整備や試験手順の整備,さらにはプレ認証試験などが実施されている。電力スマートメーターの認証試験に続き,2025年春には無線端末の認証試験も開始される見込みである。
今後は,無線端末と電力スマートメーターの両方が標準化された認証を取得することにより,複数の企業の端末間での相互接続性が確保され,利便性の向上が期待される。
5.おわりに
今回,新たに開発した「電力スマートメーター対応水道用無線端末」は,共同検針用の水道用検針端末として,2023年より市場に導入されている。
アズビル金門株式会社では,つなぐ×ひろがるをキーワードに,今後も,
- 共同検針向けの都市ガス/LPガス向け通信端末の開発
- 共同検針向けのクラウドサービスの開発
を予定している。
共同検針向け都市ガス用通信端末は2025年春に商用リリースの予定である。
<著者所属>
田中 裕三 アズビル金門株式会社 開発本部製品開発部デバイスグループ
この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2025年04月に掲載されたものです。
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