特集に寄せて
アズビル株式会社
執行役常務
azbilグループ研究開発担当
石井 秀昭
私たちazbilグループは,創業以来120年にわたって,「計測と制御」の技術力を主幹とし,高いオートメーション技術による製品・サービスを提供することで,社会・顧客の課題解決や価値創造に貢献するために存在していると考えています。新たな技術や社会・顧客課題が生まれる中,強みである「計測と制御」の技術力の強化により成長を続ける必要があり,その結果として持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献,企業価値の持続的な向上を図り,2030年に売上高4,000億円規模への成長を目指しています。
1906年の創業時の精神「人間の苦役からの解放」を原点とする「人を中心としたオートメーション」をグループ理念に掲げ,事業領域としては,主に大型建物の空調制御等を行う「ビルディングオートメーション事業」,製造業の生産に必要なシステム・機器等を提供する「アドバンスオートメーション事業」,ガスや水道等のライフラインに関連する「ライフオートメーション事業」と,社会・産業・生活の多分野に及んでいます。
この「ビルディングオートメーション事業」,「アドバンスオートメーション事業」,「ライフオートメーション事業」の領域では,様々な事業環境や技術動向の急激な変化が起きてきています。例えば,地政学的リスクをはじめ,エネルギー価格の高騰,グローバルサプライチェーンにおける部品調達難といった外部環境変化により,事業の見通しが不透明になっています。一方で,クラウドやIoT,生成AI,DXの進化による技術動向の進展や,カーボンニュートラル,サーキュラーエコノミー,ネイチャーポジティブといった新たな社会課題が生まれていくなかで,今後,「計測と制御」の重要性はますます高まると考えています。azbilグループが貢献できる機会を着実に捉え,成長の糧とするため,保有する技術力の強化に一層磨きをかけてまいります。
azbilグループが貢献できる機会としての社会・顧客の課題解決や新たな価値創造のためには,まず計測により問題の可視化をすることが重要です。次に,その計測結果に基づいて課題を認識し要因を特定するか,新たな価値を創造し,それを基に最適な状態へ制御するという総合的なソリューションの提供が必要となります。このソリューション提供は,先進技術を単に製品化するのではなく,“顧客のニーズを取り込んだ課題解決型の製品として開発する”,あるいは“顧客現場における価値創造・発掘,製品試用による新たな需要を創出し続け開発する”という考え方です。これまでの技術開発および商品開発において大事にしてきた基軸となります。
このプロセスはこれまでもこれからも変わらずに「計測と制御」の基盤であると考えています。そのために,azbilグループでは,フィールド機器とシステムソリューションにおける計測・制御技術のさらなる強化に取り組み,フィールド機器で得たセンシング情報を管理・監視現場の制御計画や監視を行うシステムソリューションで集約,処理することで,最適運用可能なシステムの構築を目指してきています。また,この計測・制御技術の強化を支える基盤として重要な要素の一つが,現場でのエンジニアリングとサービスです。この基盤があるからこそazbilグループは長年にわたり,エンジニアリングとサービスの社員が顧客の現場で集めた声や収集・蓄積してきた各種機器の稼働データなどに基づいて開発することができています。その結果,実際の現場での計測情報を用いた分析,制御アルゴリズムの検証などにつなげることができ,商品や技術としての競争優位性につなげていると捉えています。
今後は,昨今急速に進歩するAI技術がさらに進化する中で,計測・制御技術においてもどう使いこなすかが肝となってくると考えています。一方で,どれだけAI技術が進化しても,そのインプットには計測,アウトプットには制御が重要な役割を果たします。AI技術との共創も視野に入れて,「計測と制御」の技術力に,より一層磨きをかけ,ソリューション型の商品・技術を提供し,社会・顧客の課題解決や価値創造に貢献してまいります。
このようなazbilグループにおける「計測と制御」の技術力を主幹とした事業成長,昨今の環境変化,商品開発・技術開発の基盤となる考え方やそれを支える現場情報の大切さを捉えていただき,今回のTechnical Reviewでの“拡大する市場に向けたアズビルの多様な計測・制御技術,建物や工場・プラントにおける情報処理技術”に関する論文をご覧いただければと思います。
“これまで”の計測・制御技術を新たな視点で着眼し直し,“これから”の計測・制御技術へと発展した様々な技術が紹介されています。これらの技術はすべて,最初に述べたazbilグループの2030年に向けた長期目標を支える「商品力強化」施策となり,持続可能な社会へ「直列」に貢献するものとなります。今号をお読みいただいている皆様に,それぞれの計測・制御技術の特徴そしてazbilグループらしさが伝わることを期待して,私の特集への寄稿とさせていただきます。
この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2025年04月に掲載されたものです。
- 2025
- 巻頭言:シン・オートメーションの時代
- 特集に寄せて
- スマートフォンを用いた現場エンジニアリングの最適化
- ビルシステムにおけるネットワーク構成と物理配置を統合した自動可視化技術の開発
- 熱画像カメラでの移動体鮮明化技術の開発
- 機械学習による製品品質影響因子の特定
- パラメーター確率分布を用いたプラントモデル自動更新技術
- マルチセンサに最適化したインターリーブ型ΔΣA/D変換回路の開発
- 大規模言語モデルを基盤とした法務契約文書リスク評価手法
- 個別エリア対応ユーザターミナル:ネオパネル2(QJ-1301)
- デジタル指示調節計 形 C2A/C2B/C3A/C3B 機能拡充と汎用性向上
- サファイア隔膜真空計(形V8)の開発
- 電力スマートメーター対応水道用無線端末(型式:ENCUW-H8A0)の開発
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