デジタル指示調節計 形 C2A/C2B/C3A/C3B 機能拡充と汎用性向上
1.はじめに
2023年にリリースした高精度・高速の小型デジタル指示調節計 形 C1Aに続き,機能の拡充と汎用性を向上した形 C2A/C2B/C3A/C3B(以降,本器という)を開発した。本器は,SDC 形 C25/26/35/36(以降,従来器という)の後継製品である。
2.製品概要
形 C2A/C2Bは,絶えず進化するお客様装置のニーズに応えるため,従来器に比べ精度やサンプリング周期などの基本性能を向上させ,背面端子配線を外さずにケースから本体を引き抜き可能なドローアウト構造,周囲温度の影響を低減した設計,時間によりSP(Set Point)を変化させるパターン運転,プログラムレスでPLC(Programmable Logic Controller)とのデータ授受を実現するPLCリンク通信などの高い機能性を実現した。
形 C3A/C3Bは,形 C2A/C2Bの基本性能と機能性をさらに高めた上位モデルで,モータ駆動リレーモデルやRSP(Remote Set Point)入力モデルなどの豊富なラインナップを持ち,広いアプリケーションで利用可能である。
形 C2A/C3Aは横48mm×縦96mm,形 C2B/C3Bは横96mm×縦96mmの前面サイズとなっている(図1)。

図1 本器コンソール(上:形 C3A,下:形 C3B)
3.製品特長
3.1 外形
表示部は,限られた表示領域で可能な限り大きく,かつ誤認しにくいセグメント文字を設計し,離れた場所からの視認性を向上させた。
操作部は,表示部と明確に分けた上で,最大限の大きさの操作キーを設計し,操作性を向上させた。
本器は,制御状態を伝える情報インターフェースでもあり,視認性と操作性を向上させることで,製品の性能と信頼性を体現した。
また,ドローアウト構造を採用することで,保守作業における配線間違い防止と迅速な交換を可能とした。
3.2 性能
本器は,PV(Process Value)入力の回路設計,及び,測定手法を改良し,指示値の高安定性・高精度・高速サンプリングを実現した(表1)。
また,PVを含むアナログ入出力の温度ドリフトを低減させ,従来器の課題であった基準条件温度範囲を23±2℃から25±3℃へ,動作温度範囲を0~50℃から-10~+55℃へ拡張した。
表1 PV指示精度とサンプリング周期

3.3 機能
本器の機能の主な特長を列挙する。
- 形 C3A/C3Bのモータ駆動リレー出力モデルは,コントロールモータ駆動用のMFB(Motor Feedback)入力,推定位置制御,位置比例自動調整などを備えた「位置比例制御機能」を搭載した。
- 形 C3A/C3BのRSP入力モデルは,アナログ制御信号をSPとして取り込む「RSP機能」に加え,通信でRSPを取得する「仮想RSP機能」を搭載した。RSPの変化によるMV(Manipulated Variable)の急変を低減するPV微分型PID演算(PID-B)を選択可能。
- 補助出力モデルは,最大2点の制御出力に加え,電流,または,連続電圧のアナログ出力1点を追加可能。
- 16セグメントの「パターン運転機能」を搭載した。形 C3A/C3Bの拡張データメモリモデルは,16パターンまで拡張可能。停電前のパターン番号,セグメント番号,サイクル残り回数,経過時間からの復電動作可能。パターン番号,セグメント番号,SP,セグメント残り時間を1つの運転画面で認識可能。
- 形 C3A/C3Bは,任意のモニタ値を第1~3表示部に表示する運転画面を最大8画面作成できる「ユーザー運転画面機能」を搭載した。
- 形 C3A/C3Bは,内部接点機能による自動切り替え,または,通信/コンソールからの直接切り替えで最大8組のMVを生成する「固定値出力機能」を搭載した。組の切り替わり時のMVに傾斜を持たせるランプ動作可能。
3.4 スマートローダパッケージ
弊社Webサイトで無償提供しているエンジニアリングソフトウェア 形 SLP-C1Fには,パラメータ設定,数値・トレンドモニタなどの従来機能に加え,制御応答の机上シミュレーションによる省エネ効果の確認やPID調整工数の低減を目的としたPIDシミュレータを標準搭載した(図2)。
本器との接続には専用ローダケーブル(有償)を使用し,形 SLP-C1Fを実行するパソコンからのUSB給電によっても設定パラメータの読み出し/書き込みができる。
また,従来器用のSLP-C35の設定プロジェクトファイルを読み出し,本器用の設定プロジェクトファイルに変換して設定パラメータを書き込めるため,従来器からのリプレースが容易である。

図2 PIDシミュレータの操作例
4.おわりに
本器の概要と特長を紹介した。豊富な製品ラインナップ,高性能,優れた視認・操作性,従来器からのリプレース簡易性などの特長を持った本器は,計装における有効な解決手段となる。
今後も,お客様の課題解決へ向けた調節計を開発していく所存である。
<商標>
SDCは,アズビル株式会社の商標です。
<著者所属>
本橋 勇人 アズビル株式会社 アドバンスオートメーションカンパニーCP開発部
この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2025年04月に掲載されたものです。
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